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ぶいなろっ!!~デビュー3分で前世バレする伝説を作ったVTuber。そんな推しライバーの俺に対する距離感がバグっている件。俺はいちリスナーであって配信者ではない!~  作者: 河原 机宏
第3章 GTRぶいなろっ!!鯖編

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第195配信 マザードラゴンとハー◯ンが結ばれた世界線があったらこんな感じ?

 香澄たちの失礼な態度に激怒したトキシックはベンチから立ちあがると彼女たちに背中を向け歩き出した。


「何処に行くの?」


「呂布子氏、花を摘みに行く相手にそんなこと訊いてはなりませんぞ。トキシック氏は自分たちと同じ思春期。デリケートな時期ですからなぁ」


「そんなデリケートな相手によくも悪質な行為を働いてくれたもんだな。俺は忙しいんだ。これで失礼する。そして二度と貴様等に会う事はないだろう。さらばだ」


 呂布子たちに玩具扱いされ怒ったトキシックはなるべく平静を装って告げた。


「ちょっとお待ちください、トキシックさん!」


 亜姫が血相を変えて呼び止めると怪訝な表情で彼は振り返る。


「何だ? 今さら謝っても許す気は――」


「私、独りエッチという作品がさっきから気になって仕方がなかったんです! 差し出がましい事は重々承知しています。今あなたが持っている最新刊を読ませては頂けませんか? 一生に一度のお願いですからどうか!!」


「嘘だろ? この状況でよくそんな事が言えるな! ちょっと待て、貴様どんな思考回路してんの? もしかして独りエッチが気になりすぎて、ここまで来た目的を失念していたとかじゃあるまいな!?」


「……申し訳ありません」


「ははは、凄いわー。逆に凄いわー。本来の成すべき事を見失い、ここまでなりふり構わずにエロ漫画を読みたがる人なんて見た事ないよ。本物だな、貴様」


 トキシックは再び胸元から単行本を取り出すと亜姫に手渡してきびすを返す。


餞別せんべつだ。貴様のエロに対する愚直な探究心に免じてくれてやる」


「いただいてもいいのですか? 初対面の男性からプレゼントを貰うなんて生まれて初めてで……いきなりこんなアプローチをされても困りますわ。交際については考えさせてください」


「好意じゃねーから!! これ以上貴様等と関わると碌な事にならない、そんな気がするんでさっさと帰りたいだけだから! それにマザードラゴンからの指令を済ませてそろそろ帰還しなければクエストが失敗するからな」


「マザードラゴン!?」


 四人の少女が「そいつは何者だ」と言わんばかりに困惑している事に気が付き説明する事にした。


「古代竜王の生まれ変わりである俺を現世に産み落とした雌の竜だ」


「それって母親の事でしょ? キミ、お母さんをマザードラゴンって呼んでるの?」


「如何にも。竜王の転生者であると言っても、俺はまだレベルが十四しかない。レベル三十以上のマザードラゴンの前では手も足も出ない。まずはその庇護のもとでレベルを上げ、マザードラゴンからのクエストをこなし資金を貯めて装備を揃える必要がある。今まさにそのクエスト中で帰還が遅くなれば失敗になるんだ」


「ちなみにそのクエストとはどのような内容なのですかな?」


「牛乳と卵を購入して十八時までにドラゴン城へ帰還する。それがルールだ。タイムリミットまであと一時間程度しかない。だからさっきから忙しいと言っているんだ。それでは――」


「ところでトキシック君に訊きたい事があるんだけど」


 この場から去ろうとした瞬間に香澄に呼び止められるとトキシックは明らかに信じられないという顔で振り返った。


「相手が先を急いでいると分かったのに呼び止めるか普通!? 俺に面白半分で会いに来たとか言ってるし、四人のうち一人は話そっちのけでエロ漫画に夢中になってこの会話も聞いてないしで非常識にも程がある!」


「あたし達が失礼な事をしたのは謝るわ。でもちょっと言い過ぎじゃない?」


「香澄ちゃん、どうしましょう。独りエッチを読み始めてまだ序盤だというのに、私かなりグッショリしてますわ。読み終える頃にはもっと凄い事になって帰りの電車では座れない状態になっていると思います。席が濡れてしまいますわ」


「……前言撤回、確かにあなたの言う通りバカでした」


「いや、俺も言い過ぎた。すまない」


 香澄の中学生とは思えない疲れた表情を目の当たりにしたトキシックは、普段からこの変態モンスターの面倒を見ている彼女の苦労を察し同情を感じずにはいられなかった。逡巡した後にトキシックは香澄の話を聞くことにした。


「あなたの趣味に邁進する行き方にはとても共感するしとても参考になったわ。そこで気になったのがあなたの状況はどうなのかなって事なんだけど」


「俺の……?」


「そうそう。あなたのその趣味全開の生き方に対して友達は何て言ってるの?」


「トモ……ダチ……?」


「ぶふっ! 急に片言になるの止めてくれる? 不意打ち過ぎて笑っちゃったじゃない!」


「トキシック氏……まさかとは思いますが……もしかして友達……居ないとかでありますか?」


「俺は俺の生きたいように生きているだけであって他者の理解など求めてはいない。故に俺に友など不要! 大人数で構成される群れなど弱者の集まりでしかない。古代竜王の生まれ変わりであり絶対的強者である俺は独りで十分という訳だ。……何だその人を哀れむような目は? 別に寂しくないし? 全然平気だしぃ? 人は生まれた時も死ぬ時も独りなんだから生きてる時にも独りで居るのは自然な流れじゃないですか? それに俺にはそんな事よりも大切な大義があるんで忙しいんだよ。そう多忙なんだよ。暇な奴が他の暇な奴等と徒党を組んでス◯バでコーヒー飲んだりマ◯クでハンバーガー頬ばったりポテトシェアしたりしているがそんなの……そんなの全っ然羨ましくも何ともないしぃ!! 友達? 何それ? おいしいの? ハァ……ハァ……ふぅ……異論は認める。何か言いたいことはあるか?」


「「「「……いえ、無いです」」」」


 エロ漫画に夢中になっていた亜姫でさえトキシックのまくし立てるような言動に気圧され黙ってしまう。彼から伝わってくる哀れさに桂は涙ぐんでいた。

 この重苦しい空気の中、ある事に気が付いた呂布子がトキシックに噛みつく。


「ちょっとぉ、それが事実ならわたし達に趣味全開暴露コースでやってみろなんてよく言えたわね! あんたそのやり方で自爆してるじゃないのよ」


「俺はこれでいいんだよ! それにこれから俺は世界征服して自分に居心地の良い世の中にするから今はこれでも構わない」


「世界征服というと戦争なのでしょうか? トキシックさんはそんな悲しい世の中をお望みなのですか?」


「バカか貴様!! そんな怖い事する訳ないだろう。戦争してインフラ壊滅させたら生きにくい世の中になるだろうが。そもそも一個人が全てを支配するなど不可能だ。過労で死ぬ! 俺の考える世界征服とはエンターテイメントの事だ」


「「「「エンターテイメント!?」」」」


「そうだ。エンターテイメント、略してエンタメは漫画やアニメ、ドラマなど人類の娯楽そのもの。娯楽こそ人々の生きる糧! 希望! 娯楽を楽しむため生きていると言ってもいい!! であれば、エンタメを制するものは世界を制すと言える。だから俺はいつかエンタメを征服してやるのだ!!」


 先程までの哀愁漂う話題から一変して生き生きとエンタメ征服宣言をするトキシックに唖然とする四人の少女であった。いまいち腑に落ちていない彼女たちに分かり易いように説明し直す。


「貴様等は魔法少女プルプルァシリーズが好きと言っていたが、それが俺に置き換わると考えればいい。つまり貴様等全員、俺に釘付けになるという訳だ」


「な、なるほどねぇ。具体的にはどうするの? 歌手とか俳優とか有名人にならないと世間の人に認知すらされないでしょ? あなた歌とか演技できるの?」

 

「どっちも出来ない!! 俺の取り柄はデカい声を出しても壊れない頑丈な喉、目の前を高速で通り過ぎる高崎線の車両内を把握できる動体視力、あとは幼少から鍛錬している肉体だけだ。俺をこの丈夫な身体に受肉させてくれたマザードラゴンには感謝しているよ」


「それじゃノープランじゃん」


「プランならある! 動画共有プラットホーム『ヨウツベ』を利用するのだ。あれなら個人でも動画を投稿したり出来る。そこで何か面白いものを投稿して人気が出ればいずれエンタメを征服する事が可能なハズだ。エンタメ征服は一日にして成らず――この精神でやっていこうと思う」


 その地道な方法に感心しつつ、微妙にズレた世界征服にほっこりする少女たちであった。当時まだVTuberという概念は存在しておらず、生身で動画投稿をする者がちらほら出てきた程度であった。この方法で自分たちが人気者になるなど当時の亜姫たちは夢にも思っていなかったのである。


「さて、それでは俺は行く。マザードラゴンのクエストを達成しなければならないし、そろそろハー◯ンが姿を現わす頃だ」


「ハ◯ゴンって何っ!?」


「ハー◯ンはマザードラゴンに長年異常とも言える愛情と執着を持った怪物だ。あともう少しすれば奴が俺の城にやってくる。マザードラゴンを守り切るのに我が片翼だけでは荷が重い。早く戻って臨戦態勢を整えなければならない」


「ちょっと待って。我が片翼とかまた分からない単語が出てくるし、そのハーゴ◯ってお母さんのストーカーじゃないの? 警察に届け出た方がいいよ」


「問題ない、我が片翼は俺の次にマザードラゴンから受肉した者だ。俺ほどではないが奴も戦闘力はそれなりにある男だ。簡単にやられたりはしない。それにしても自分のこの身体に◯ーゴンの血が半分流れていると思うと世界を呪いたくなる気分だ」


「それって弟とお父さんじゃん!! お父さんのこと嫌いなの?」


「嫌いではないが……帰宅後まっすぐにマザードラゴンのもとへダッシュで駆け寄りハグとキスを仕掛けてくるんだぞ。その後夕飯から寝るまで何度も何度も何度も何度も……。親のそんな行為を見せられるのは地獄だ。だから俺はレベル十八を過ぎて階梯かいていが上がったら今の城を出て行き、新しい城で世界征服の準備を進めるんだ」


「訳すと親のラブラブな様子を日常的に見せつけられるのは堪ったもんじゃないから高校卒業後は進学して一人暮らししながらヨウツベに動画投稿するって事でいい?」


 トキシックの家庭は円満である事が判明し存外孤独ではなさそうなので安堵する香澄たち。そして別れの時がやって来た。

 河川敷に設置されている自販機に移動するとトキシックはサイフを用意し彼女たちに振り向く。


「貴様等、好きな飲み物を選べ。時間が無いから早くしろ」


「奢ってくれるの?」


「ああ。色々とあったが、それなりに有意義な時間だったからな。等価交換というやつだ。本来ならもっと良いものが妥当なのだが生憎持ち合わせが無くてな。理解したのならとっとと選べ」


 香澄たちはしばし迷いはしたが、トークに夢中で喉が渇いていたのとトキシックが本当に早くして欲しそうな顔をしていたので提案を受け入れる事にした。

 

「四人とも購入が済んだな。ならば早くこの場から去れ。この河川敷は街灯が少なくて夜になると真っ暗になる。ヒューマンの娘では夜に出現するモンスター相手には太刀打ちできないからな」


「心配してくれてるの? 優しいところあるじゃん」


「俺はバッドエンドな展開は好きじゃないんだ。いいか、すぐに家に帰れ。――さらばだ」


 そう言い残すとトキシックは最寄りのスーパーを目指し河川敷を走り去って行った。


「「「「足はやっ!!」」」」




 ――そして現在。ぶいなろっ!!スタジオの会議室。


「以上が私たちがトキシックさんと出会った時の話ですわ。彼と会えたのはその一度限りで、その後も何度か河川敷に行ったのですが彼には会えなかったんです。ただ、噂では地元のショッピングモールで迷子を迷子センターに連れて行ったり、道に迷っているご年配の方を目的地に連れて行ったりと善行を積んでいたそうですわ」


 亜姫の話を黙って聴いている優。その表情は固かった。


「現在、トキシックさんらしき人物がヨウツベで活動しているという情報はありません。ですがあれだけの厨二精神の持ち主が何もしないままとは思えません。彼が話していたエンタメ征服方法とVTuberの在り方は合致していますから、それを利用しないハズはありません。彼はVTuberもしくはそれに関連した立場になって活動している可能性が高いです。一般社会に溶け込めるとは思えませんし」


「そこまで言う!?」


「そう思わせるだけのインパクトが彼にはあったのです。そしてここからが本題になるのですが、彼は中学生でありながら独りエッチなる成人向けのエロ漫画を愛読していた人物です。恐らく相当性欲の強いスケベな人物のハズ。そんな彼が配信の世界で成功していたとしたら、この界隈でハーレムを築いていてもおかしくありません。――つまり、これから私たちぶいなろっ!!メンバーはトキシックさんと配信で競い、現実では彼のエッチなアプローチから身を守らなければならないという二つの戦いをする展開になると思うのです。その時は犬飼さんに協力していただきたいと思っています」


「そんな状況になりますかね?」


「その可能性は高いと思いますわ。ラブコメ作品において恋のライバル登場はお約束ですし、原作にそんな相手が居なかったとしてもアニメ化された場合、終盤にシリアス展開を持たせる為にアニメオリジナルのライバルキャラが登場したりしますもの! ですから今後はトキシックさん対犬飼さんのラブコメバトルが始まるに決まっています。どのような戦いになるのかワクテカですわ」


「周防さん、あんた楽しんでるだろ」


 果たして今後は亜姫の言うようなラブコメバトルになっていくのだろうか? そしてトキシックは今どこに? 何はともあれ物語は現代に戻ってきたので次回から語りは主人公である優のモノローグに戻ります。その前にフライングして彼の心情をちょっとだけ覗いてみましょう。




 ……イ……バイ……ヤバい!! ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっっっ!!!!!


 おい、嘘だろおいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっぃぃぃっぃぃぃいぃぃ!!! 何で俺の黒歴史を知ってる人物がこの場に四人も居るんだよ。しかもその四人が、あの時俺に絡んできた子たちなんてどういう偶然? ホワイ? 因果律が狂ってるんじゃないの? アカシックレコードにだってこんな展開刻まれてないでしょうよ! そんなに俺が憎いのか神様ァァァァァァァァァァ!! 

 あー、マズいこれはマジでマズいよー。マズすぎて卒業したハズの厨二の俺がちょっと表に出てきちゃったじゃんかよぉ。うぐっ、昔の話を聞いていたら右目が疼いてきた。眼帯で封印していたダークネスホーリーアルティメットドラゴンが暴れてやがるぅ! ハッ、何考えてんだ俺は。厨二は卒業したハズなのに……。落ち着けぇ、落ち着くんだ俺! ここでバレたら絶対面倒くさい状況になるに決まってる。只でさえ現時点で俺対俺の構図でラブコメバトルが始まるとか言われてるんだ。とにかく黙っていよう。黙ってこの場をやり過ごし、今後もボロを出さないように気をつければこれ以上大変な目に遭わずにすむハズだ。



 

 ――お分かりいただけただろうか? 


 犬飼優、ユーザーネームワンユウ――超厨二少年トキシックの現在の姿がこいつである。この事実によって亜姫が予想していたラブコメバトルは永久にお蔵入りとなった訳である。


 次回、優は自身がトキシックである事を隠し会議室から脱出できるのか? 本当に隠しきれるのかな? そしてGTR四日目はいつになったら始まるのか? ワンユウの受難の日々は続く。

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― 新着の感想 ―
予想通りだったꉂ(*ノ∀`)ʱªʱªʱª
ワンユウかーい
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