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ぶいなろっ!!~デビュー3分で前世バレする伝説を作ったVTuber。そんな推しライバーの俺に対する距離感がバグっている件。俺はいちリスナーであって配信者ではない!~  作者: 河原 机宏
第3章 GTRぶいなろっ!!鯖編

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第194配信 ガールズ・ミート・厨二少年

『時間や社会に囚われず、快楽に身を委ねる時、束の間、彼女は自分勝手になり解放される。誰にも邪魔されず、気を遣わず自◯行為にふけるという孤高の行為。この行為こそが現代人に平等に与えられた最高のエクスタシーと言えるのである』


                      独りエッチ オーシャンドッグ著




「トキシック、お前が持っているのは……独りエッチじゃないか! しかも三十巻て最新巻だよな? なぜそんな物を持っている!?」


「愚問だな、ゼウス。書店で購入したからに決まっているだろう」


「本屋で買った……だと? そんなあからさまにエッチな表紙の漫画をレジに持って行ったっていうのか、中学生のお前が! 羞恥心は……恥ずかしくは無かったのか!?」


「ゼウスよ、己が欲している物が目の前にあるのに羞恥心に負けて諦めるなど愚の骨頂!! 己の好きなものは何が何でも手に入れ追求する。それが俺の流儀だ。ちなみにレジ対応してくれたのは女子高生のアルバイトだったが、購入に際しては商品名を復唱するのがルールらしく顔を赤くして「独りエッチ三十巻になります」と言っていた時は自分の中で何かが目覚めそうな気がしたよ」


「ぱねぇ……ドSか、おめぇ」


「ていうかぁ、別に本で買う必要なくね? 電子書籍で買えば恥ずかしい思いしなくても手に入れられるっしょ」


「ヘラよ、貴様は何も分かっていないな。電子書籍は確かに便利ではあるがデジタルの絵では味気が無さ過ぎる。だからこそ俺は本での購入にこだわるのだ。ページをめくった時の紙の手触りがいいんだよ。そう、こういうのでいいんだよこういうので」


「ウケる」


「笑っていられるのも今のうちだぞ。独りエッチで語られる様々なグッズを使用したセルフプレイとヒロインの幾時いくとき衣懸瑠いけるの素晴らしい肉感と感極まった表情の数々と比べたら……さっきのお前等のキスなど小鳥のついばみ程度の価値しかない!!」


 トキシックの迫力ある口舌を前にたじろぐゼウスとヘラ。一方、少し離れた所で一部始終を見聞きしていた香澄たちは妙な共感を覚えていた。


「好きなものを追求するのには覚悟が必要って言いたいのかな?」


「多分そうでしょうな。自分たちの趣味を周囲には言えない自分たちに刺さる言葉ですなぁ」


「ところで私、独りエッチという作品は初耳なのですけれど、話を聞いていてとても興味を持ちましたわ」


「かなり大人気の漫画だよ。OLの女性主人公が会社でのストレスをセルフプレイで発散するストーリーで割と女性人気があるみたい。わたしも持ってるから今度貸してあげる」


 こうして亜姫はますますエロ道を極めていく。独りエッチによって彼女の性癖が更に歪むまであと一日。

 一方、トキシックに論破されたゼウスはムキになって言い返そうとするがヘラには別の思惑があった。


「何とかしてあの野郎の鼻を明かさねえと!」


「え~、もうよくない? それよりも今日、あーしのパパとママ帰ってくるの遅いんだぁ。だから……これからあーしんち寄ってかない?」


「「――え?」」


 思わず同時に素っ頓狂な声が出るトキシックとゼウス。するとヘラはゼウスの腕に自分の腕を絡めて家へ向けて歩き出した。


「え、あ、ちょ、待って! まだ心の準備が……」


「クスクス、何きょどってんの? ちょーウケるんですけど。ただ、あーしんちでお茶を飲むだけだよぉ。そう、あっつーいお茶をね。それじゃあねトキシック、バイバ~イ。いこ、ゼウス」


「ヘラ、腕力つよ……! トキシック俺どうしよ!?」


「お前もおとこならば覚悟を決めろ。さあ、おイキなさい」


「やっぱり俺これからそうなるの!? ――よし、覚悟決めたぜ。先にイッテくる」


 ゼウスは敬礼しトキシックもまた敬礼で送り出す。こうして若いカップルは馬並市の市街地へと消えていった。


「真に恐ろしきはヘラの行動力か。ああいうのをアマゾネスと言うのだろうな」


 ゼウスとヘラが居なくなって静かになるとトキシックは少し寂しそうな顔をして河川敷を独り歩き始める。すると何処からともなく拍手が聞こえてきた。驚いて音源の方へと顔を向けるとそこには四人の少女が立っていた。


「見事なお手並みだったわ。あのカップルを挑発したように見せかけて仲の進展を取り計らうなんて中々できることじゃないわ」


「だ、誰だっ、貴様等! 何時いつからそこにいた!? 俺の気配察知スキルをかいくぐってここまで接近するとは高レベルの隠形スキルの持ち主……それも四人だと……只者ではないな!」


「あのバカップル二人と会話始めた時からここに居たけど……そのスキル機能してないんじゃないの?」


「最初からっ!? そんなバカな、気が付かなかったぞ」


「それは多分、私たちはあなたの右側に居たからだと思いますわ。ほら、あなたは右目に眼帯をしているから右側が死角になっているんです」


「あ……」


「やはりスキルよりも目で確認する方がよいみたいですな」


「忠告感謝しよう。それで貴様等はいったい何者だ? このあたりでは見ない顔だが……」


 四人の少女は互いに目配せすると頷き合い自分たちの名前を名乗った。そして――。


「わたし達はキミに会いに来たの。あなたがこの馬並市で都市伝説になっているトキシック・カインド・ドラグマニア君なんでしょ」


「違う」


「そうでしょそうでしょ、やっぱりキミがトキシ……違う!? だってさっき絡んでた二人組からトキシックって言われてたじゃん!」


 困惑する呂布子たち。全ては振り出しに戻るかと思われた時、目の前の厨二少年は大きくため息を吐いた。


「俺はドラグマニア等という名前ではない。ドラグマギアだ! ドラグマ・ギ・ア!! ドラグマニアだったらドラゴン愛好家という意味になるだろうが。正しくはドラグマギア――ドラゴンの魔力をこの身に宿らせし古代竜王の生まれ変わりだ!! やがてこの世界を飲み込む神々の戦争――ラグナロクにおいて悪しき神共を滅するために俺は現世に転生したのだ。理解したか、ヒューマンの娘たちよ!!!」


「おおっとぉ」


「これはこれは」


「さすがですわ」


「名前を間違ってごめんなさい。ドラグマキアートね、覚えたわ」


「嘘吐け! マキアートってコーヒーの種類だろ。言ったそばから間違えるとか覚える気ないだろ!! さっきのマニアの方が一字違いだからまだマシだ。はぁ……もういい。俺は忙しいんだ。わざわざ会いに来たと言うのなら何か用事があるのだろう? 要件を済ませてとっとと帰れ、ヒューマン」


「失礼ね。わたし達はヒューマンじゃなくてウーマンよ!」


「呂布子ちゃん、ヒューマンで合っていますわ。ウーマンは成人した女性の事ですから中学生の私たちにはまだ早いかと。どちらかという私たちはガールですわね」


 亜姫に訂正されて顔を赤くする呂布子。そんな彼女に対しトキシックはせせら笑う。


「キミ、今笑ったでしょ? 笑ったわよね!? バカにしてくれてぇ……表に出ろ! 勝負よ!!」


「最初から表に居るんだが。貴様はどうやら知能が低いようだな。RPGならば戦士あたりが妥当だろう。良かったな、RPGの花形職業だぞ」


「そ、そう? 花形の職業かぁ。華やかなわたしだからさっきの暴言は許しちゃる」


「呂布子、あんたそんなんだからバカにされるのよ。とにかくこのままじゃ埒が明かないからあたしが説明するわ。あたし達があなたに会いに来た理由は――」


 香澄は自分たちのオタク趣味を内々でしか楽しめていない悩みをトキシックに相談した。そしてトキシック自身のオタク全開の生き様はどのようにして成り立っているのか訊ね彼は答える。


「これはあくまで俺の考えだが、貴様等が現状を息苦しく感じていてそれを変えたいと本気で思っているのなら周囲など気にせず趣味の話に興じればいい」


「ふむ、そうきましたか。ですが、そうする事で周囲から白い目で見られたら……」


 桂が言いよどんでいるとトキシックは大した問題ではないと言った。


「貴様等の趣味が全ての人類に認められるわけではない。それに興味が無ければ相手は気にも留めないだろう。その中にもしも貴様等を否定してくる者がいるとしたらそんな奴は構わなければいい。他人の趣味――好きな物を否定する連中など、どの道貴様等のこの先の人生で関わる事も無い輩だ。だから貴様等も他人の好きな物を否定するような生き方はするな。そして少数でもいいから貴様等を認めてくれた者を大事にすればいい。それだけの事だ」


 トキシックが言い切ると沈黙が流れた。最初は自信満々の彼だったが、香澄たちの反応が薄いため時間が経過するにつれて徐々に不安が表情に出てくる。


「ま、まあそのなんだ……始めに言ったがこれはあくまで俺の生き様であって、参考にならないのなら別の方法でも考えるか。えーと……」


「……いや、意外にもまともな意見だったから驚いてしまって。てっきり自分を認めない者は皆殺しにするとか存在を消すとか、そういう非人道的な事でも言うんじゃないかと思っていたから」


「私はオタク布教活動をして皆をオタクに洗脳しろとか言うのではないかと思っていましたわ」


「勝負をして敗者は勝者の趣味を無条件に受け入れろとか言うと思ってた」


「自分は亜姫氏と同じ考えですな。クラスメートの下駄箱にガ◯プラを入れたりして立派なガ◯タに育て上げろと言うと思っていましたぞ」


 四人の少女の言葉を聞いてトキシックは唖然としていた。


「繊細な悩みの相談をしてきたと思ったら全員物騒な思考の持ち主って何なの? それに最初から俺の助言なんて当てにしてないじゃん! マジで何しに来たの? え? バカなの? 死ぬの?」


「それはその……この街に都市伝説になるような、おもしろ厨二少年がいるから一目見てみたいなぁと。で実際見てみたら予想以上に面白かったから話してみたいと思っただけで……わたし達の悩みに対するアドバイスが貰えるなんて実は最初から期待していなかったなんて、ねぇ」


「貴様等帰れーーーーーーーーーーー!!!! 今すぐ浅谷市にカムバックしろっ!! おま、貴様等マジふざんけんなよ!! 腹立つわー。こんなに苛ついたのホント久しぶりだわーーーーー! 今まで笑われたり無視されたり色々あったけど、貴様等が一番たちが悪い! 悪意しかないじゃん。悪意百パーセントで俺に近づいてきたんじゃん!! ハニートラップ仕掛けてくる女性の方がまだ優しいまである。真剣に話を聞いて損した。あーもうさーーーーーーーーー、バカみたいじゃないか!!!」


 トキシックは激怒しながらベンチから立ちあがると彼女たちに背中を向け歩き出すのであった。

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