第191配信 ぶいなろっ!!の◯の人全員集合
「こちらです」
相良さんに案内されスタジオ内の会議室に到着した。
「このドアの向こうにぶいなろっ!!の全メンバーが居るのか……」
「とって食ったりしませんから緊張しなくても大丈夫ですよ。ちょっと待っていてください」
相良さんがインターホンを押すと間もなく声が聞こえてきた。
『……竿』
「……玉」
『「……ゴールド!」』
『入ってよし』
ドアのロックが外れる音が聞こえた。どうやらこれで会議室に入れるようになったらしい。それは一旦置いておいて確認したい事がある。
「相良さん、さっきのやり取りはいったい何だったんですか?」
「合言葉に決まっているじゃないですか。子供の頃に戻ったみたいでワクワクしたでしょう」
「俺が訊いたのはその合言葉の内容! 竿に玉と金の組み合わせはハラハラはすれどワクワクはしないから!!」
「今さら何がハラハラですか。犬飼さんにも立派なのが付いているでしょう? それでは入りましょう」
俺の嘆きは軽くスルーされ逆セク発言を受けながら中に入ると机がコの字に並べられており、そこに二十三名の女性の姿があった。
向かって左側には周防さん、中央には戦部さんに依流芽さん、右側には一角さんや陽菜と月が座っている。どうやらデビュー順に並んでいるようだ。
「犬飼さん、お忙しい中お越しいただきありがとうございます。そちらの椅子にお座りください」
「分かりました」
そうそうたるメンバーの圧にたじろいでいると周防さんが声を掛けてくれる。指定された椅子に座ると思ったより彼女たちとの距離が近く緊張してしまう。
相良さんは六期生の近くに用意してあった椅子に座り、この場が一旦静かになった。
「今日初めて会うメンバーもいるので改めて全員の紹介をさせていただきます。それでは一期生から順番に名乗りますね。まずは私から――ご機嫌麗しゅう。ぶいなろっ!!一期生キングダムの姫、メルア・ティオ・アルビオンこと周防亜姫ですわ」
「くっころ~! 同じく一期生の騎士、サリッサ・アーガマこと【杉野 小町】だ。以前から直接訊きたかった事がある。――あなたがわたしのご主人様か?」
「いいえ、違います。俺はドMと契約を結んだつもりはありません」
「くぅん! この一刀両断される感じが……イイ!!」
ドMが悶える中、自己紹介は次に進んだ。
「ごめんあそばせー! 一期生の悪役令嬢、ルイーナ・シル・レウルーラこと【榊原 奈々衣】です。よろしくお願いしま……はっ! もっと悪役令嬢っぽい尊大な話し方が良かったですか?」
「いらっしゃいませ。一期生の聖女、アンナマリー・ホワイトこと【東洋 乃愛】よ。罵倒されたかったら言ってねぇ。サービスするわよ」
以上一期生の四名が終了。挨拶だけで色々とツッコミを入れたい部分があるのは、さすがぶいなろっ!!クオリティ。そして二期生にバトンが渡る。
「こんでびー! ぶいなろっ!!二期生魔王軍の魔王、サターナ・バアルこと【虻川 桜】だよ。普段から語尾を「にゃあ」にしてる訳じゃないからね。ところで以前陽菜に配信で伝授した四十八手は全部やってみた? 今日は犬飼君にそこを訊きたかったんだよねー」
「はぁーい、こんさきゅ~! 二期生のサキュバス、セリーヌ・グレモリーこと【伊集院 舞】でーす。犬飼君って思ったよりも可愛い顔してるね。陽菜と月の話だと結構パワフルなイメージだから意外かも~」
「こんばとすー! 二期生の暗黒騎士、クロウ・バルバトスこと【三日月 黒南】よ。とにかく今日は君が真のドSなのかを知りたいのよね~。それ次第でワンユウ教の入信の有無を決めたいわ」
「こんまんさー。二期生のネクロマンサー、シャロン・ガミジンこと【木霊 絵馬里】です。とにかくこれだけは言わせて欲しい。――ここの事務所、巨乳多すぎるだろっ!! くそっ、それに比べて何であたしはAカップなんだよぉ」
二期生が終了した。一期生と同じく彼女たちに言いたい事は色々あるが、ドMは俺がSだったらどうする気なのだろうか? そしてぶいなろっ!!で今、最も勢いのある三期生の登場なのだが、四名のうち三名とは既に知り合いだったりする。ってかセシリーに関してはAIなので中の人はいない。
「こんふぁいとーーーーー!! ぶいなろっ!!三期生冒険者ギルドの戦士、フェネル・ホウテンガゲキこと戦部呂布子でっす! 犬飼君、昨日の借りは必ず返すから。カ◯首を洗って待ってなさいよ」
「こんまじ……。三期生の魔法使い、ナーシャ・ケリュケイオンこと妹尾依流芽やでー! ってか呂布子、それ言うんなら首を洗てやん。確かに◯リを洗うんは清潔でええかもな。んはははははっはは!!」
「こんほろー。三期生のアサシン、ホロウ・ティルヴィングこと【暗葉 芳乃】だ。仮にお前がドSであったとしても私を簡単に虐げられると思ったら大間違いだ」
この場に不在のセシリーを抜かした三期生が終了した。戦士と魔法使いは朝っぱらから酔ってんのかと思うくらい発言がアウトで頭が痛くなる。そして、ここまでの感想としてドMは配信でも現実でも、何処までいってもドMだという事実が分かった。次の四期生はぶいなろっ!!の芸人枠に相当する。もうどんな挨拶をされても驚かない自信が俺にはある。
「ぐぅーーーーーー」
「あれ? お姉ちゃん、起きて!」
「ん……ええっと……何だっけ? ああ、例の話終わった?」
「まだ始まってもいないよ。ほら挨拶しないと」
「んー、千年ぶり。ぶいなろっ!!四期生アナザーレイスのエルフ、エルル・アンバーだよ。じゃ、そゆことで。……すぅ……すぅ……」
「それじゃ配信の時と同じでしょ! でも、そんな自由なお姉ちゃんも素敵! ハァ……ハァ……寝顔可愛い……」
「永遠ちゃん、興奮してちゃダメだよ。早く自己紹介しよ」
「はぅあっ!? そうだった。――こんだーく! 四期生のダークエルフ、シャルル・アンバーこと【遙 永遠】です。隣で寝ているのは姉の【遙 久遠】です。よろしくお願いします。……久遠おねえひゃん、きゃわいい……一生見ていられるよぉ」
「えと、ちょっと待ってくださいね。すぅーはぁー……こんどわーーーーー!! 四期生のドワーフ、ノーム・ガーネットこと【土門 砂羽】だぜっ……ですぅ。ごめんなさい、生身の男性は苦手なのでこれが限界です……」
「はいはいはいはーーーーーーーい!! こんちゅぱっ! 四期生のマーメイド、ネプーチュ・アクアマリンこと鏡水奈萌でーーーーーっすぅ!! 昨日の野球拳では見事な脱がせっぷりでしたねぇ。よっ、この脱がせ名人!」
四期生はボケとツッコミとやかましさで騒々しかった。配信ではいつも元気いっぱいのノームがまさかこんなに大人しい人物だったのは意外だった。さっき驚かないと言ったがあれは嘘だ。驚くよ、こんなんもう。次の五期生はそれぞれ個性的なのが特徴の四人だが……不安だ。
「それでは自分からいきますぞ! こんゆにー! ぶいなろっ!!五期生レジェンドビーストのユニコーン、ユニ・ホーリーこと一角桂ですぞ。昨日の配信で登録者数が一気に増えました。ありがとうございます、ワンユウ氏」
「次は僕だね。こんどらー! 五期生のドラゴン、バハーム・ウインドこと【竜宮 風音】だよ。僕はお笑いが大好きでね。犬飼君のツッコミはいつも楽しませて貰っているよ。……ふふ……ふひひ……ごめん、思い出したら……ぶふっ!」
「は~い、こんふぇに~。五期生のフェニックス、フェニス・ブレイズこと【吾妻 美紅】で~す。眠れない時はあたしのASMRを聴いてみてくださいね~」
「こんわお~ん! 五期生のフェンリル、フェン・アイシクルこと【狼原 涼】だよ~。GTRで新しいメニューを作ったから後で食べに来てね。ワンユウ君も驚きの一品に仕上がってるよ」
さっき相良さんから聞いたのだがユニのチャンネル登録者数は一晩で十万人以上増え、現在も増え続けているらしい。ユニの本性がマジモンのオタクと知った世間のオタク達が彼女に共感している証拠だろう。俺も昨晩の緊急配信がこの様な結果に転じるとは予想していなかった。
それにしても他の五期生もやはり個性が強い。美紅さんと呼ばれていた女性はやはりフェニスであった事が確定した。今年の夏、月の部屋で行われた飲酒コラボ配信――通称おなマン事件で八尺様に化けた俺は彼女をビビらせ気絶させた事がある。後で謝罪に行かなければ。そしてぶいなろっ!!の六期生の出番となった。
「こんてらー! ぶいなろっ!!六期生ゴッド&デビルの女神、アマテラス・ソルこと【神蔵 詩緒】じゃよー。犬飼さんに関しては陽菜ちゃんと月ちゃんから色々聞いてるけえ、初めて会うた気がせんね」
「こんべるー! 六期生の悪魔、ベルフェ・ナハトこと【虻川 夜】だ。総帥はあたしたちのデビュー直後からの付き合いだから身近に感じるんだろうな。実質、六期生リスナーの代表みたいなもんだし」
そしてここで戦部さんが自己紹介終了の合図を出した。これに対し二名が挙手し異論を唱える。
「はいはいはいはいはい!! 呂布子先輩、ちょっと待ってください!」
「まだわたしとガブ、二人の自己紹介が済んでいませんよ」
「……お前等二人は今さら自己紹介する必要なんてないだろうが!! お前等あれだろ? どうせあの男とプライベートで「こんがぶー!」とか「こん堕ちー!」とか言って変態プレイしまくってるんだろ? このドスケベ天使共がよー!!」
「なっ……! し、しししししてませんよ、そんな事!! そうだよね、ルーちゃん」
「その通りよ。そんなプレイはたまにしかしてないわ。呂布子先輩の予想は間違っています」
「ルーちゃん……」
「頻度が違うだけでやっぱりしてんじゃねーか!!!」
……オウチニカエリタイ。
――数分後。事態収拾の為に相良さんが戦部さんにコブラツイストを決めて沈黙させる事で静かになった。そしてこの場を設けた理由を周防さんが語り始める。
「犬飼さんに我々ぶいなろっ!!メンバーの隠された使命について知っていただきたいと思い、この場に来ていただいた次第です」
「隠された使命……?」
「はい、そうです。これから語るのは私と相良香澄、戦部呂布子、一角桂の四名が中学生だった頃のお話です。当時の私たちが出会ったある人物――彼は私たちと同い年ながら圧倒的なエンターテイナーの資質を持つ方でした。今は何処で何をしているのか不明ですが、もしも彼が配信者になったとしたら大きな波紋を生み出すハズです。それが危険なものであった場合、彼を止められるのは彼の存在を知る私たちだけなのです」
「ちょっと待ってください。何かその雰囲気だとストーリーがバトルものになる感じなんですが、これってラブコメじゃなかったの!?」
「犬飼さん、元々はギャグ作品だったものやラブコメ作品がバトル物に路線変更するのはよくある事なのです。これから【トキシック・カインド・ドラグマニア】と名乗った超厨二少年とのお話を致しますので路線変更の件は後ほど」
「超厨二少年て……それにドラグマニア? 俺の勘が正しければコメディ過去話で終わる気がする」




