第四章 火の特訓
夏季休暇に、使っていない有給休暇の追加をお願いした。
「一か月、いただけませんか」
ぐちぐち文句言われたが、有給休暇を取っていなかったので、なんとか許可を貰った。
休み明けは、仕事が山だろう。
憂鬱だ。
***
小沢家の山へ、車を走らせる。
先祖代々、所有している小さな山だ。
アパートから、三時間。
助手席に、メレオスがいる。
料金所の手前で消えて、トンネルの出口で戻ってくる。
「お主、アパートでは焚き火をするからのぉ」
言い返せない。
山は、うっそうとしている。
昼なのに、暗い。
地元の人も、めったに近づかない。
スマホの電波も来てない。
会社から連絡はつかない。好都合だ。
麓の小さな町で、買い出しをした。
水は、山の清水でこと足りる。
テントを張る。
体が、勝手に動く。
縄の結び方は、じいちゃんに仕込まれていた。
清水が、岩の根元から出ている。
冷たい。うまい。
夜、仕入れた食材で料理を作る。
料理は、ごく普通だ。
メレオスは、普通でも食べる。
「伊左衛門の山よ。わしも、何度か来た」
「知ってたのか」
箸を止めずに、メレオスは続けた。
「知っておる。暗くて、飯は狩りと釣りで、あまり旨くなかったのぉ」
それだ。
じいちゃんに修行を受けていたころ、たまにサバイバルをさせられた。
食材は、山でとれた魚と小動物。たまにイノシシ。
きつかった。
友達と遊びたかった。
「今夜は、イノシシは出ないかのぉ」
「来てたまるか!」
「来たら、お主が倒すんじゃろ?」
「倒さんわ!逃げるわ!」
「なんじゃ、つまらんのぉ」
***
特訓が、始まった。
「もっと気を練らんかい!」
スパーン!
「痛っ!」
「火炎はできた。次は、小さくするんじゃ」
アパートの宿題だ。リビングの時より小さく。指より大きく。
ガスコンロの火、ガスコンロの火。
「むん!」
ポワッ。
周りの落ち葉の先が、燃えて無くなる。
「ほう。学習したか」
気をよくして、もう一度やってみる。
「むん!」
落ち葉が、広範囲に燃えた。
「消火!消火!」
鍋で水をかけて火を消す。メレオスは、消さない。
「火はお主が出した」
そうだ。俺が出した。相変わらずブレない守護神だ。使えない。
それでも、三日目には、ロウソク大で止められるようになった。
火魔法は、加減が難しい。
先は、まだ長い。次は、風の特訓だ。




