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幕間 『ホラー』の目
組手が終わって、道場を出たあとも、視線が残っている気がした。
気のせいだ、と思う。
『ホラー』は、部屋の隅で、いつも床を見ている。
誰とも、目を合わせない。合わせないように、生きている。
だが、さっきは違った。
一瞬だけ、髪の隙間から、確かに目が合った。
何かを、探すような目だった。
値踏みでも、警戒でもない。
もっと別の、何かを見ている目。
すぐに、また床へ戻った。
何も言わない。
それが、逆に落ち着かない。
同期でも先輩でもない。
初日に会ったばかりの、暗い男。
なのに、なぜか、あの目だけは覚えている。
その理由は、まだ、俺には分からない。




