いつか見た空の色・4
回想です。小さな幸せの光景。
「あのさ、杏香」
珍しく自分から声をかけてきた葵を、杏香は面白がるように見た。
「男物のアクセサリーとか置いてる店って知ってる?」
「どしたの、また藪から棒に」
「空が、欲しがるから」
ためらいがちに答えると、杏香がおののいたように体を引いた。
葵が自分の失言に気づいた時にはもう遅い。
そのまま振り向いて後ろの席の敬司に話をふる。
「ちょっと奥さん聞きました? この子まさかの名前呼びですよ!」
「あー、はいはい」
葵の言葉にか杏香のノリにか敬司は呆れた顔であしらった。
「いいねぇいいねぇ春ですねぇ」
「今、真冬だけど」
「うっさい」
敬司のツッコミは速攻で切り捨てて、杏香は葵に向き直った。
「で、どんなのにすんの」
「シルバーのクロスがいいって」
「んー、ネックレスか何か?」
ふと気づいたように杏香は首をかしげた。
「でも、あいつアクセとかすんだね。ちょっと意外」
「普段はあんまりつけないみたいだけど」
クラスでもピアスをあけたりしている男子は少なくはない。
だが、空がこれまでアクセサリーを身につけているのは見たことがなかった。
葵も不思議に思って聞いてみると、空はおどけたように笑って言った。
(なんかさ、葵がくれた十字架なら願い事のひとつくらい叶いそうじゃない?)
杏香は大げさにため息をついた。
「あーあ、まったく色気づいちゃってもう。いっそペアリングでもしたらいいのに」
「それは私が嫌」
「うわひっど」
葵の即答に笑いながらも、杏香はいくつかの店の名前をあげた。




