アリア
キャラ設定集でも書こうかと考えた結果、気が向いたら書こうかな程度に収まりました。
教会を出たアリアは戦場になっている崩された聖国の入国審査門で戦っている聖国軍を眺めていた。
「…殺し合い、殺され合い。その果てにあるのは国の潰し合い。なんともおぞましい」
アリアの独り言に反論する者はおらず、彼女の言葉を肯定しているかのような軍と魔族たちの怒声があちこちから上がっていた。
そして、一人たたずむ彼女に襲い掛かろうとする魔族が1人、彼女に向かって剣を振る…
「…ごはっ!?」
その前に魔族の胸に握り拳大の穴が開き、血を吐いてその場に倒れ伏す。
「人殺しには人殺しなりの正義がある…と言うのなら見せて欲しいものです。無闇矢鱈に襲いかかるその姿はまるで知性の無い獣のようで汚らわしい」
そう言って死んだ魔族を冷たい視線で見下ろすアリアは武器も何も持たずに戦場の真っ只中にゆっくりと歩いて向かって行く。
歩く先にいた聖国軍は皆、彼女を見ると道をゆずっていく。戦闘中だった魔族たちは彼女に近づいた時点で胸に、もしくは腹に、あるいは頭になんらかの形で傷を負って死んでいく。
ある者は道をゆずり、ある者は倒れ伏して出来上がる彼女だけの通り道には争いが消え、生み出されるのは静かな暴力による静寂だった。
「…これが、勇者なのか」
聖国軍の誰かがそう言った。
彼女の圧倒的なその力、見ることも感じることもできないその圧倒的なナニカに畏怖せざるを得なかった。
まるで神の裁き、そう喩えたのは誰であっただろうか。彼女の力の片鱗を見た誰もがそう思ったであろうその力は今、魔族の大群をたった1人で蹂躙しているのだ。
「…【罪は罰】。なんとも私に相応しくない力でしょうか、自分でも恐ろしいと感じてしまうこの能力…今日この時は振るいましょう」
目に見えぬ能力を振りかざすアリアを恐れた魔族たちは真っ先にアリアを襲おうと向かっていく。
そして向かっていった者は彼女にら攻撃を当てる前になんらかの攻撃を受けて死んでいく。
しかし、彼らは気づいていた。
「あの勇者の能力には処理できる限界があるぞ!」
「あの女を取り囲め! 背後から襲うやつに対する反応が鈍い!」
野蛮な魔族とて無能ではない。
むしろ自身に対する脅威には敏感なのだ。
「…はあ、意外と早かったですね」
アリアの表情に焦りはない、しかし魔族たちが倒れる場所はどんどんアリアに近づいていた。
「…鬱陶しい数です」
「うおおおお!!」
そしてついに魔族の1人がアリアに向かって剣を突き出した。
しかし剣先がアリアの鼻先を掠めた時、その魔族は脇腹がえぐられて力尽きた。
「まずいな…俺たちも加勢に行くぞ!」
「おお! 勇者様がピンチだ!」
だんだんとアリアが押され始めていると感じた聖国軍が加勢に行こうと魔族たちに向かって走り出す。
…しかし。
「ぐああっ!?」
「どうした!!」
先頭を走る聖国軍の1人が右足の太腿から突然出血し倒れた。
「…あっ!」
そして、アリアの表情に初めて焦りが見えた。
「まさか…全員退避だ!! 勇者様の能力は無差別だ! 俺たちも死ぬぞ!」
その表情を見て軍の隊長は迅速に指示を出す。
しかし、その時アリアの動きは僅かとはいえ止まってしまったのだ。
魔族の大群を1人で相手取るその強力な能力、その力が一瞬とはいえ止まった時。雪崩のような大群は一気に彼女との距離を詰めた。
4本、5本、6本と数多の剣や棍棒などと言った武器がアリアに殺到する。
…間に合わない、アリアはすぐに察した。
そう、『彼女の能力では』間に合わないと。
しかし、彼女の体に傷がつくよりも早く…
「…すまねえ、ちと遅れちまったよ」
勇者が戦地に降り立った。
アリアの元に上空から跳んで来たのは以前よりも赤みがかった肌、額には黄色い角が生えた厳つい風貌。
怪力の勇者シテンである。
「あなた…少し変わりましたね」
「おう、前よりもハンサムになったろ?」
「血色が良くなりましたね」
シテンはアリアの前に立ち、目の前の武器を両腕で全て受け止めた。
剣はシテンの腕に刺さることなく根本から折れ、棍棒は腕を折ることなく砕け散る。
力自慢の魔族はシテンを殴り飛ばすどころか逆に殴り飛ばされ、魔術を使おうにもしてんの暴れっぷりでは使う間もなく殴り殺される。
「1人で無茶すんじゃねえよ」
「あなたに言われたくないですね」
シテンが大雑把に数を減らし、アリアが的確に処理をする。1人でも無双の力を持つ勇者が2人になった瞬間、魔王のいない魔族の大群の勝ち目は潰えたのだ。
魔族の大群は10分もせずに全滅した。
激しい戦いは終わり、民衆が後片付けに追われている時シテンとアリアは孤児院の修復に追われていた。
「しっかし、どうしてあの時俺は攻撃を受けなかったんだ? たしか軍のやつはお前の攻撃を受けたんだよな?」
「…あなたが勇者だからですよ、あの人は魔族ではなかったので死んではいませんし。そう言うものだと思ってください」
アリアははぐらかすように笑って言った。
そんなアリアの態度にシテンは呆れたと言わんばかりに作業へ戻った。
アリアは笑って作業に励むシテンと子供たちを笑顔で見守る。
アリアの能力の本質を知る者は彼女しかいない。しかしそれで良いのだ。本質を知れば彼女を見る目は明らかに変わるだろうし、そもそも彼女の能力は彼女に向いた能力ではないのだから。
神聖の勇者、能力【罪は罰】
それはあまりにも傲慢な能力である。




