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あれから

アンが真の勇者となって2年の月日がたった。


崩壊した王国は帝国が自国の領土として統治し、国民は安定した生活を送ることができていた。

聖国は魔族の残党に襲われた街の修復がおわり、元の生活を取り戻した。


そして、魔国は現在。


「ねえ、アーモン」

『どうした?』

「お菓子が食べたい!!」

アンが魔王として君臨し、悠々自適な生活を謳歌していた。


『お菓子は一昨日のが余ってるだろ?』

「他のが食べたい!」

エクスカリバーの光は世界を埋め尽くし、『勇者アン』の存在を世界の人々に知らしめた。


言ってしまえば、それだけだった。

しかし、元から知られていた魔王アンと新しく世界に認知された勇者アンの存在は混ざり合い、魔国を支配するのは魔王であり勇者であるアンであると言う事実が人々に認知されたのだ。


魔国は魔王である勇者が支配している。

そんな彼女が帝国と聖国に停戦、もとい協力を求めてきたのだ。


魔王を倒すのは勇者の役目、しかしアンは勇者でもある。

勇者を勇者が倒す理由は存在しない。

そんな勇者が勇者に協力を求めてきたのだ。


停戦兼協力はあっという間に締結された。



現在、人族と魔族の争いは滅多にない。

あるとしたら酒場での喧嘩や冒険者同士の獲物の取り合いくらいだろうか。


どちらにせよ、もう魔族と人族が争い合う理由はなくなった。

人を脅かす魔王は勇者になったのだ。

人に寄生する悪魔を排斥する理由がなくなり、魔国は快く悪魔を受け入れた。


アーモンも今ではすっかりアンの遊び相手になっている。


「それにしても、グリースはいつになったら帰ってくるのやら」

「お姉さまがグリースに模擬戦の相手ばっかりさせるからでしょ?」

「…さあ、なんのことやら」

フェルサの不満にアンが突っ込むが、フェルサはどこ吹く風と聞き流す。


『まあ、あいつには自由がよく似合うよ』




とある廃村、その中心にある石碑に3人の男女が座って祈りを捧げていた。


1人は、元血の魔王であるアミラ。

もう1人は以前より髪を伸ばしたアンリ。

そして、グリースである。


この廃村はグリースが生まれ育ち、親族の勇者によって滅ぼされた故郷である。


彼は、平和になった世界をこの目で見て回ることを決意し、ついてきたアンリと共に旅に出た。


まずは、自分の故郷とアンリの故郷。

それからは、その時考えようと。


アミラは途中まで同じ道なのだとついてきたが、どこまでついてくるのか知らない。

なんでも2年前の戦争の時からアンリに興味があるらしいが、グリースにはよくわからなかった。


「…さて、行くかアンリ」

「…うん」

「私もいること忘れないでよね」


2人と1人の旅はこれから始まる。

何を見るのか、何を知るのか、そして何を得るのか。


それはその時、その瞬間でなければわからない。







場所は大きく変わり、滅んだ王国の某所。

そこには古代王族が残した財宝が隠されていた。


そこに1人たたずむ人間。

伝説ばかりが知られる称号だけが有名な謎多き人間。


架空の存在とすら言われることもある人間。

初代勇者がそこに立っていた。


「お久しぶりです、国王。あなたが私を化け物として暗殺しようとしてから随分経ちましたね」

初代勇者の視線の先には古びた王冠。

それに話しかける様はどこか哀愁を感じさせる。


「あなたの愛する王国は滅びましたよ、無様にも魔族に敗北し…今では魔王が勇者ですよ」

その言葉はどこか嘲っているようで、悲しんでいるようだった。


「あなたの選択は間違っていた」

初代勇者の言葉を否定する人間はどこにもいない。

ここにいるのは、初代勇者と物言わぬ王冠のみなのだ。



「…私なんかを、召喚するべきじゃなかった」


初代勇者…いや、俯いた1人の少女はただ王冠に話しかける。


「ただの一般人に…世界を救うなんて大それたことできるはずがないのよ」


少女は胸ポケットからメモ帳のようなものを取り出した。

古臭く黄ばんだ紙束、それは別の世界では『学生手帳』と呼ばれるものだった。


2年B組 神凪 翼


少女はそれを王冠の隣に置いて、闇となり消えた。

メインストーリーはこれで終了ですが、前にも書いたとおりサイドストーリーを少し投稿します。


名前しか出てこなかった勇者やメインストーリーでは飛ばされた聖国側の戦闘などを書きたいと思います。

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