真の勇者
投稿遅れたぁぁ!!
「あんた…今すぐ死にたいならもっとわかりやすく言いなさいよ」
アーモンの言葉に反対したのはアミラだった。
『俺は至って大マジだ、エクスカリバーは『斬る』剣じゃない。真の勇者を選ぶ剣だ、俺はアンが1番真の勇者に相応しいと思っただけだ』
「じゃあなんで斬るのよ!アンが剣を握ればいいだけじゃないの?」
アーモンはアミラの言葉にうなづく。
『確かに、本来ならそうだ』
「じゃあどうして!」
アミラの強い言葉にアーモンは動じず言い返す。
『アンが人なら、それでよかった』
「…なっ!?」
『先代の死の魔王もこの事実には気づいていた、魔王がエクスカリバーを握っても真の勇者の力を発揮することはない。だから彼は真の勇者を人族から探すことにした…夢半ばに死んだがな』
「…なぜ、あなたがそんなことを?」
『俺は何千年もの月日をかけて世界中のあらゆる剣を収集しているだぜ?エクスカリバーなんて有名どころの剣を調べないわけがないだろ?』
アミラはそう言われると何も言い返せなかった。
『そして、魔族がこの剣に選ばれるためには一度死ななければならない』
「一度…死ぬ?」
黙って聞いていたフェルサが突拍子もない事実に黙っていられず聞き返した。
『ああ、そしてエクスカリバーに選ばれれば勇者として…いや、真の勇者として蘇る』
「そんな、御伽噺でもないのに」
『事実さ、現にそれを知っていたバートリーは試したじゃねぇか』
「…まさかっ!」
初代勇者は驚いた声を上げる。
『そうだよ、あんたがこの剣で胸を刺したあの時…死ぬとわかっていたアイツは最後の可能性に賭けた。それで選ばれなかったと知ったあいつは笑ってお前に託したんだよ』
お前がこの剣であいつを刺したって聞いてピンと来たよ、とアーモンは笑った。
「だから、出てきた時になるほどねって言ったのかしら?」
『おっと、聞かれてたのかい?』
「隠す気もないくせによく言うわよ」
エリザベートがため息をつく、その顔はどこか晴れやかだった。
「あの人らしいと言えば、あの人らしい最期ね…どんな時も諦めずに少ない可能性に賭けていく。本当にバカだわ」
『でも、嫌いじゃなかったんだろ?』
「むしろ好きよ、そんなバカが大好きだったのよ」
『じゃあ、俺たちもそんなバカになっちまおうぜ?』
アーモンは初代勇者を見る。
初代勇者は俯いてエクスカリバーを見つめる。
「なぜ、グリースなの?」
『俺はグリースにも賭けてんだよ、もしグリースが選ばれればそれでよし…選ばれなければアンに刺す。それでアンが選ばれればそれで良しだ。それに、グリースとは契約をしていてな…俺たちも悪魔が魔国に帰る手助けをしてもらうって契約だ』
「つまり、俺がアンを勇者にすることで結果的に俺たちの契約も成立すると?」
『お前が勇者に選ばれても契約は成立するぜ?』
グリースの答えにアーモンが捕捉してニヤリと笑う。
『どうする?やるかい?』
「アンの気持ち次第だ。刺すのは俺だが、刺されるのはアンだからな」
『…お優しいことで』
皆がアンを見る、アンはさっきからずっと俯いていた。しかし、意を決したように顔を上げて言った。
「私…やるよ」
「…アン」
「あんた…本当に」
姉2人はその姿に目を背けた。
アンはそんな二人に笑顔で言う。
「大丈夫!お姉様たちは笑って見ててよ」
『それじゃあ初代勇者、グリースに剣を持たせてやれ』
初代勇者は黙ってグリースに剣を渡す。
「あなた…契約する悪魔を間違えたわね」
「悪魔なんて、皆自分勝手なやつさ」
『聞こえてるぞ?』
アーモンを無視してグリースは手渡されたエクスカリバーを握る。
「…なにも、起きないわね」
「…ああ、そうだな」
『まぁ、そう上手くはいかないか』
主人公はアンを見る。
「すまない、俺が勇者であれば…お前が傷つくことはなかったんだが」
「…ううん、大丈夫。大丈夫だよ」
アンは笑顔で主人公を励ました。
グリースの手が、エクスカリバーが震える。
今まで何人もの人や魔族を斬ってきたグリースの手が…傷つけたくないと震えているのだ。
アンは彼の震える手を見て微笑み、そのままグリースの前まで近づくと、彼女は笑って言った。
「グリースが謝ることも、傷つくこともないよ」
彼女はグリースの手からエクスカリバーをひったくった。
「大丈夫だよ。グリースが刺す必要なんてない、私が自分で刺せばいい!」
「おい!やめろっ!」
アンは目を閉じて、剣先を胸元に向けて一気に押し込んだ。
グサッと肉を裂く音が響き、ピチャッと地面に血液が落ちる音が聞こえて来る。
しかし、アンが痛みを感じることはなかった。
「…本当に、あの人らしい娘ね」
「…え?どうして?」
エリザベートが、エクスカリバーの刀身を右手で掴んで止めていたのだ。
アンは混乱した声を上げてエリザベートを見た。
「あんた…どうしてアンを」
「アミラ、あなたは彼女がバートリーの何を受け継いだのか、知ってるかしら?」
突然の問いかけにアミラは閉口する。
どうして今そんなことを聞くのかアミラにはわからなかった。
「フェルサはわかるかしら?」
「…えっと、その…狂気だと思ってたけど」
その答えにエリザベートは笑った。
「…本当に、1番近くにいたはずの2人が1番彼女のことを理解していないのね」
エリザベートは傷のない左手でアンの頭を撫でる。その表情は魔王らしからぬ慈愛に満ち溢れていた。
「初めて会った時からあなたには興味があった。グリースから無理やり遠ざけて一緒に行動して興味は疑問に変わった」
「…疑問?」
アミラが聞き返すとエリザベートは微笑んだ。
「どうして、あの娘はあんなにバートリーと似てるのかしらってね」
アミラとフェルサを似てないと言っていたエリザベートがそうアンを評した。
「バートリーはこのエクスカリバーに胸を刺された、彼はそれで死んだのよね」
『…ああ、そうだ』
エリザベートは右手で掴んでいるエクスカリバーをもう一度アンに握らせる。
「…ほら、ちゃんと握ってみなさい。一度死んだバートリーの生まれ変わりなら、あなたは一度魔族として死んでいるのよ」
「…でも、私は死の魔王の力なんて受け継いでない」
アンの言葉にエリザベートは微笑んだ。
「確かに、あなたにバートリーの力なんて無いわね。でも、あなたは彼の…バートリーの『優しさと愛』を受け継いでる。彼の彼たらしめる1番大切なものを受け継いでいるのよ」
「…優しさと愛?」
その時だった、アンの握っているエクスカリバーの刀身が黄金に輝いた。
「……この輝き、本当にアンが真の勇者なの!」
「…本当に、勇者になるなんて。」
アミラとフェルサが光り輝くエクスカリバーを握っているアンを驚きの表情で見つめる。
『マジかよ…魔族の身で勇者になりやがったぞ』
「バートリー…あなたはどこまで考えていたの?…これは偶然なの?」
初代勇者の言葉にエリザベートは微笑んだ。
「彼がどこまで考えていたなんて、私たちにはわからないわよ…ただ、彼が望んだ世界はこれから実現する」
アンはおもむろにエクスカリバーを天に掲げる。…王が国民に力の象徴を、権威を示すときのように。
エクスカリバーの光がこれまでになく強い輝きを放つ。
太陽のような眩しさに包まれて皆の…全世界の生物の視界が真っ白で埋め尽くされた。




