実力
展開が早い?
飛ばしてるところは後で閑話等で補填するつもりです。
主人公たちが魔王城についたとき、すでにアミラ達の城は半壊していた。
あちこちが崩れ、周囲には霧が立ち込めていたり焼けていたりとひどい有様だった。
『こりゃあ派手にやりあったな、霧の魔王サマよ』
アーモンがそう呟くいたその時、霧から二つの影が飛び出した。
血の魔王アミラと霧の魔王エリザベートだ。
2人は無傷でお互いを睨み合っている。
「体を霧化して物理攻撃を無効化する…私の天敵みたいな魔王様ね」
「そっちこそ…霧化した私を魔力の呪文で縛ろうとするなんて、どれだけ私が好きなのかしら?」
エリザベートの挑発を無視してアミラがアンリとの戦いで見せた呪文を体に纏わせ、爪による攻撃でエリザベートを切り裂こうとするが、その前にエリザベートは体を霧化して周囲の霧と溶け込む。
「…チッ、イライラするわね」
目標を見失って動きを止めたアミラに四方八方から霧の刃が飛んでくる。
アミラは眉一つ動かさず指を鳴らす。
パチンッ
音が響いた瞬間にアミラの体を覆っていた呪文が体から離れてアミラの周囲を高速で回転し、霧の刃を全て弾き飛ばした。
「…身体強化以外に相手の拘束、もしもの時には盾にもなる。便利な呪文じゃない」
姿を見せないエリザベートはそう言うともう一度霧の刃を生み出し、再び四方八方からアミラを襲った。
「何度やっても同じよ!」
霧と呪文の攻防は続く。
「…入っていけないな」
「姉様がこんなに強かったなんて」
「言ったでしょ?あの人は別格。私以上の身体の能力、アンと同じくらいの攻撃力、私たち以上の防御力。そして、魔族一の知力。あの人は死の魔王バートリーに1番近い人なのよ」
もしあの人を倒せるとしたら…とフェルサは主人公たちよりも早くこの戦いを眺めていた初代勇者の少女を見た。
少女はその視線に気付いてフェルサを見つめる。
「…どうしたの?」
「…いや、何でもないわよ」
素っ気なく返すフェルサを見て少女は言う。
「似てないね」
「……え?」
「あなたも…あそこで戦ってるお姉さんも、ぜんぜん似てないよ」
似てない…それが誰に似ていないのか、フェルサにはわからなかった。
「魔王三姉妹、死の魔王バートリーの生まれ変わりって聞いた時は驚いたけど、結局は上っ面だけのわがまま魔族でしかない」
少女はそう言うと、空中にふわりと浮いて戦っている2人の元へ向かう。
「なっお前何を!」
驚いて声を上げるフェルサとアンを放って少女は戦闘中のエリザベートとアミラのところへ飛んだ。
「…あいつ、空も飛べたのね」
「アンリ、俺たちも行くぞ。戦闘を眺めに来たわけじゃないからな」
「…わかった」
主人公とアンリも2人を追って屋上に行くために城内に入る。
「いや、ちょっと待ちなさいよ!!」
置いていかれたフェルサは慌てて城内に入っていった。
戦闘中だったアミラとエリザベートは2人の間に現れた黒い闇が2人の霧の刃と呪文を飲み込んだことによって戦闘を中断した。
「…私の呪文を消した?」
「やっと来たのね…『宵闇の勇者』」
「久しぶり…その呼び名」
アミラは信じられない現状に戦慄し、エリザベートは懐かしい存在に微笑んだ。
「血の魔王の暴虐を止めに来た、殺すなとは言われているが…確約はできない」
「……そう、なら私は遠くで見守ることにするわ」
エリザベートはそう言うと、霧になって消えた。
「ナメたマネしてくれるじゃない、初代勇者。一度殺した死の魔王の生まれ変わりだからって甘くみてるのかしら?」
その言葉に初代勇者は首を振る。
そして、一言だけ呟いた。
「…あなたは、何もわかってない」
その瞬間、アミラが動こうとして…止まった。
「……何よ…これ」
アミラを中心とした半径5メートル全てが闇に包まれていた。
闇はどんどんアミラに迫っていく。
「あなたの行動は全て無意味、攻撃も防御も全て虚無に消える。闇の中では光すら消える」
アミラは呪文を闇に飛ばす…が、呪文は闇に包まれ消えた。
炎の魔術、水の魔術、土の魔術、あらゆる魔術で闇を払おうと奮起しても効果は無い。
「闇に呑まれよ、魔王もどき」
アミラの視界が黒で染まった。
主人公たちが屋上についた時にはすでに戦闘は終わっていた。
「…凄まじいな」
主人公は初代勇者の能力に舌を巻いた。
「…アミラ姉様」
「あの人がこんなにもあっけなく…これが初代勇者の力なのね」
『初めからあいつだけでよかったんじゃねえか?』
各々が初代勇者の強さに驚嘆する中、初代勇者は闇に包まれ気絶したアミラを抱えて戻ってきた。
「終わった、これでいいの?」
『上出来だぜ勇者様、さすがは死の魔王を圧倒しただけはあるな』
その言葉に初代勇者は何も言わなかった。
「さて、あとは霧の魔王に魔族を纏めさせて停戦協定を国同士で結んでもらえれば戦争は終わるな」
「私たちは魔王の席を降りて城の中で悠々自適な生活ってことね」
「…魔王じゃなくなるだけであんまりいつもの生活とは変わらないよね」
主人公の言葉にフェルサとアンが笑いながらそう言った。
その姿は年相応の少女と何ら変わりない姿だった。
「俺が言うのもなんだが、お前たちはそれで良いのか?」
「別に?魔王じゃなくなるからって二度と魔王になれないってわけじゃ無いし、機会さえあれば成り上がってやるわよ」
「私は、こっちから頼んだことだし」
「…そうか」
主人公はそう言うと、霧となって戦闘を眺めていたはずの霧の魔王を探す。
……しかし、彼女が出てくる気配はない。
「…おかしいな、エリザベートがいない?」
「……まさかっ!?」
初代勇者が何かに気づき、闇に消えてどこかに消えた。
その時、アンリが慌てた様子で主人公の袖を掴んだ。
「どうした、アンリ」
「…霧の魔王が、十万以上の魔族を率いて帝国と聖国を襲っている!」
「なるほどね、してやられたわ」
エリザベートの行動にそう言って笑ったのは気絶していたはずのアミラだった。
「アミラ姉様!」
「…起きてたんだ」
アミラに抱きつくアンと少し驚いた様子のフェルサ、そんな二人に微笑んでアミラは主人公を見た。
「フェルサとアンを倒したあんた、そしてあの初代勇者を魔国に引き付けてから帝国と聖国を襲う。初めからそのつもりだったんでしょうね」
「俺たちはまんまとエリザベートの掌の上で踊らされていたってことか」
主人公の言葉にうなづくアミラ。
その表情は怒りにと悔しさに満ちていた。
「それで、姉さんはどうするの?」
「アンとあなたに裏切られたからこんなことになってるってのに…つくづく人に恵まれないわね、私は」
アミラはフェルサとアンを恨めしげに見つめ、フェルサとアンはすっと目を逸らす。
二人の様子にアミラはため息をついた。
「わかったわよ、あんた達の好きにしなさい。不満があることは初めから知ってたし…人族と同盟でもなんでも結びたかったら結びなさいよ」
「……いいの?」
アンの言葉にアミラはうなづいた。
「…初代勇者を味方につけたとはいえ、負けたのは私だし、文句は言わないわよ」
「ありがとう!アミラ姉様!」
「…勝った人がなんで負けた方にお礼を言うのよ」
アンが顔を輝かせてお礼を言う姿にアミラが苦笑いする。
「じゃあ姉様?アンが魔族の統括でいいよね?本当ならエリザベートに任せるつもりだったけど…私たちを裏切っちゃったし」
フェルサがニヤッと笑いながらそう言った。
「あーあ、残念だなぁ。せっかく魔王やめて悠々自適な生活ができると思ったんだけどなぁ!これじゃあしょうがないよねー」
「笑顔が隠せてないわよ、フェルサ」
そう言うアミラもフェルサと同様に野心が溢れていた。どうやらアンを表に出して個々人で色々と動き回る将来がかなり楽しみらしい。
「…じゃあ、お前達と悪魔の平和な将来のために、障害を取り除くとするか」
『忘れてないか心配だったぜ、グリース』
「悪魔ねぇ、役に立つならいいけど」
アミラの言葉にアーモンがムッとする。
『魔王二人を倒したのは俺の力だぜ?』
「宿主の力がないとダメなんじゃなかったかしら?」
『それを見極めるのも悪魔の力だ』
アミラとアーモンが睨み合うが、喧嘩というより意地の張り合いだった。
「姉様、早くいくわよ。初代勇者がもう行ってるから大事にはなってないと思うけど」
「グリースとアンリも!早く行こう!」
魔王二人が急ぎ足で聖国に向かう。
「二人は先に聖国に行ってくれ、俺たちは帝国に行く」
「わかった!」
アンが元気に答えて走っていく。
「…それじゃあ、行くか」
「しょうがないわね」
『負けた奴は黙ってついてこい』
「うるさいわよ!」
アミラにアーモンがちょっかいを出す。主人公は早くも人選を間違えたか心配になった。
そんな主人公の袖をアンリが引いた。
「…どうした?」
「帝国にエリザベートがいる。だからあの二人を聖国に行かせた?」
「当たり前だ、エリザベートと互角のアミラとフェルサとアンに一応勝った俺が行ったほうがいいだろ?」
「…うん」
うなづくアンリの表情は暗い。
主人公は笑ってアンリの頭を撫でた。
「……むぅ」
「安心しろ、帝国には初代勇者もいるんだろ?なんとかなるさ」
「……うん」
『それでもエリザベートは死の魔王ですら魔国統一の時に唯一手を出さなかった相手だ、アミラと互角だったのも実力を隠すためかもしれない。…油断するなよ?』
アーモンの言葉に主人公はうなづいた。
「油断も慢心もしない。行くぞ」
主人公たちは帝国へ向かった。




