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獣の勇者

キャラたちを活躍させられるほどの文才がない

主人公が同盟国に戻る道中、アンが主人公を追いかけて来た。エリザベートからの伝言らしい。


「魔王城にアミラ姉さんはいない。同盟軍の視線をフェルサ姉さんに引き付けさせているうちに王国を襲ってる!」

「何だと!?」


主人公は急いで王国へ向かおうとした。


その時だった。

「どこに行くんだ?」


突然目の前に降り立って来たのは獣の勇者フェルサだった。


「せっかくあの人の作戦が上手くいきそうなんだ、邪魔するのは許さないよ」

「フェルサ姉様!なんでこんなことをするの?」


アンの問いかけにフェルサは取り合わず、グリースに襲いかかる。

グリースは魔剣ダインスレイブで対応するが、フェルサの身体能力にどんどん押されていく。


「へぇ、すごいの持ってるね。ダインスレイブだっけ?あらゆる魔力を縛りつける伝説の魔剣だよね?」

『グリース、こいつにダインスレイブは通用しねぇ。奴の身体能力は魔力による強化じゃない。』


アーモンが念話で語りかけてくる。

グリースはフェルサの猛攻を捌き切れずに身体中に切り傷ができている。


「ならどうすれば良い!」

『…しょうがねぇな、とっておきを貸してやる。絶対折るんじゃねぇぞ?』


アーモンがそう言うと、右手のダインスレイブが闇に包まれて消え、新たな剣が右手に収まっていた。



それは、魔剣と呼ぶにはあまりにも神々しい輝きを放っていた。


「…これは、そんな!?なぜ貴様がそんなものを持っているんだ!!」

『傲慢な魔王サマにゃ一生わからねぇよ。』


主人公は魔剣を構え、フェルサは初めて主人公を警戒して一歩後ずさる。

敵でないアンですらその魔剣に恐怖していた。


「この輝き…本当に魔剣なの?」


主人公はジリジリと距離を詰め、フェルサは少しずつ後ずさり距離を保つ。


『どうした魔王サマよ!魔剣一本で戦意喪失か?情けない王もいたもんだなぁ!』

「うるさい!外野は黙ってろ!」


フェルサはアーモンにそう叫ぶと、主人公を睨みつける。


「…お前、それをどこで手に入れた?」

「…さあな」

「お前の能力は魔術を剣にする能力のはずだ、魔剣を召喚する能力じゃない!」


そう言ってフェルサは保っていた距離を詰める。


「つまりその魔剣はハッタリの偽物だ!」

『阿呆かお前は』


今まで主人公を圧倒していたフェルサの攻撃は全て魔剣で受け止め、受け流される。


その事実に主人公自身が困惑していた。

今までの動きとナニカが違う。

…まるで体が勝手に動いてるみたいだ。


「くそっ!なんで当たらないんだよ!」

『おいグリース、どうだ?俺のお気に入りは素晴らしいだろう?』


攻撃が当たらず苛ついた声を上げるフェルサを見て愉快そうに笑うアーモンはまるでお気に入りの玩具を自慢する子供のようにはしゃいでいた。


「…なんなんだ、この魔剣は」

『気になるか?そりゃあそうだろうな、まるで体が勝手に動いてる見たいだろう?』


話している間にもフェルサは攻撃を続けているのにも関わらず、体はいとも簡単に攻撃を受け流し、躱し続けている。


『この剣に名前は存在しない。ただ、この剣を知るものは皆【勝利の剣】と呼んでいる』

「…勝利の剣」


主人公は自分の剣を見つめる。

いつの間にか主人公はフェルサの攻撃を受け流すだけに留まらず攻撃に転じていた。


一撃一撃がフェルサの姿勢を、防御を崩していく。そしてフェルサはどんどん防戦一方となっていく。

そして、主人公の動きが止まった時、フェルサは地に膝をつけた。


「これが……勝利の剣の力なの!?」

『…そりゃあ少し違うな、魔王サマよ』


フェルサの言葉をアーモンが否定する。

『この勝利の剣は持つ人間に勝利を与える訳じゃねえ。持ち主に【相応しい勝利】を与える剣だ。勝利の剣を俺が使っても俺に相応しい勝利しか手に入れられない』

「…つまり、どういうこと?」


アーモンはニヤリと笑ってフェルサに言った。

『持ち主が強ければ強いほど勝利の剣は強さを発揮するってことだ』


フェルサは力なく笑って仰向けに倒れた。


「くそっ、黄金の勇者みたいな意味不明な能力に負けたなら言い訳が効くってのになぁ」

「いや…俺は魔剣の力に頼らないと負けていた。アンタは十分強い」

「勝ったやつに言われても嬉しくないよ。それにあの人の方が私より強い」

「…アミラか」


主人公が聞き返すと、フェルサは笑った。

「そうだよ、あの人は3人の中で一番魔王をしてる」

「俺はそいつを止めないといけない。無理を承知で聞くが、協力してくれないか?」


主人公の言葉にフェルサは首を振った。


「無理だね、あの人は私の言葉なんて聞き入れちゃくれないよ。アンタも前に見たでしょ?」


主人公はうなづく。

「私だって嬉々として戦ってるわけじゃないさ、戦いはキライじゃないけどこの戦いはすでに蹂躙だしね」

「なら、止めましょうよ。フェルサ姉様」


ずっと黙っていたアンがフェルサに口を開いた。


「……アン、だから私じゃあの人は止められないの」

「フェルサ姉様だけじゃない!私も…グリースもいる。止められないって決めつけないで一緒に頑張ろうよ!」


今まで見たことがなかったアンの強い言葉にフェルサは驚いた。


「狂ってる…あなたの事をずっとそう思っていたのに、今のあなたを見てると過去の自分を殴り飛ばしたくなってくるわね」

「……フェルサ姉様?」

フェルサは不思議そうに自分の名を呼ぶアンを微笑みながら抱きしめた。


「訂正するわ、あなたは魔王の狂気を受け継いでなんかいない。あなたは…そうね、魔王の『魔王らしくない心』でも受け継いだのかもしれないわね」

「魔王らしくない心?」

「でも、あの人よりもアンが魔王になった方が私としてはイロイロとやりやすいかも」


そういうと、フェルサは主人公の方を見て指を刺す。


「アンタに協力してあげる、勘違いするなよ!私はアンタの下につくんじゃない。アンを魔王にするために協力するんだからな!」

『別にそれで良いぜ、アンが魔王になるのはこっちとしても好都合だからよ』

「……だ、そうだ」


主人公の代わりにアーモンが答える。


「…悪魔ね、魔界に居場所が欲しいってところかしら?」

『…なんだよ、少しは頭も働くのかよ』

「頭が良くないと戦いには勝てないのよ」

「フェルサ姉様、ありがとう」

「勘違いしないでよ、私がそうなった方が都合がいいって思っただけよ」

そう言ったフェルサの顔は少し赤かった。


「…じゃあ、行こうか。お前らの姉は王国で暴れ回ってる…あそこにはまだ勇者がいたはずだが」

「あの勇者…あまり活躍してた噂聞かないのよね。少し昔に一度だけ魔王討伐の旅に出たって聞いたけどすぐに王国に戻っていったし」

フェルサの言葉にアンもうなづいた。

「私も…アミラ姉様が「なんでもっと攻めてこないのよ!」って愚痴ってたくらいしか知らない」

「…その頃からこの計画を立ててたのか」

「…勇者が攻めてきたっていう大義名分さえあればいつでも攻められるようにってかなり昔から」


フェルサの言葉に主人公はため息をついた。


「…王国の勇者、活躍した噂はないが同じくらい悪い噂も聞かない…できれば無事であって欲しいんだがな」

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