乱入
今回は短めです
シテンの発破もあってか、黄金の勇者ルークはグリースの案に好意的だった。元より良い案だとは思っていたのだろうが、あと一押しをシテンが押したのだろう。
すぐに返事が返って来た。
「とりあえず、その作戦は面白いよ。是非とも協力させてほしい…シテンもうるさいしね」
「…うるせえよ」
その瞬間、会議室に強い風が巻き起こり突然聖国の勇者が客室に現れる。
「…今日は来客が多いな」
とぼやく黄金の勇者。
「客だと思うのならお茶の一つでも欲しいですね」
まけじと返す聖国の勇者。
「お茶はないが不法入国者を放り出す憲兵は余るほどいるぞ?」
「あら怖い、そんな兵士さんが捕まえる犯罪者さんはどこにいるのでしょう?」
そう言って聖国の勇者はどこから取り出したのか封をしてある手紙を黄金の勇者に渡す。
その中には正式な入国許可証…だが印鑑が押されていない。
黄金の勇者はため息をついて引き出しから印鑑を取り出して許可証に印鑑を押す。
「ありがとうございます」
楽しそうにお礼を言う聖国の勇者に黄金の勇者はまた深いため息をついた。
「あんたが来た理由はわかる。そもそもさっきの話もしっかりと聞いていたんだろうしね」
「あらら、バレてました?」
「…それじゃあ、聖国の意見を聞こうか」
「お受けしますよ、そのかわりに…一つお願いがございます」
客室の空気が凍る。
「…聞こうか」
「怪力の勇者シテン様、あなたに1週間だけ私の孤児院の子供達の相手をして欲しいのです」
「……は?」
シテンが気の抜けた返事をした。
「…そのですね、私が建てた孤児院の子供たちはみんなあなたの大ファンでして…」
聖国の勇者が恥ずかしげにそう言って顔を伏せる。
「そんなことなら1週間と言わずいくらでも使ってやってくれ。こいつは常に暇してるからな」
「ルーク!勝手なことを言うんじゃねぇよ!」
黄金の勇者の言葉に心外だと怪力の勇者が叫ぶが、聖国の勇者は怪力の勇者の言葉を無視して怪力の勇者の腕を自分の腕に絡ませる。
「お、おい!何してんだよ!」
「それでは、同盟は成立ということで」
「ああ、こいつのことは自由に使ってくれ」
「おいルーク!てめぇ帰ったら覚えてろよ!」
怪力の勇者の言葉が響いた時には、既に彼の姿は聖国の勇者と共に光に包まれて消えていた。
「……シテンの奴、何がそんなに嫌なんだか」
ルークの呟きがシテンに届くことはなかった。
それから詳しく話し合い、王国には帝国側の使者が行くことになり、魔国にグリースが聖国の使者として向かうことになった。
主人公はアンリを聖国の勇者と怪力の勇者への情報伝達のために聖国へ向かわせ、今回の旅について来ないように言った。
「…どうして?」
その時のアンリの表情は半ば絶望を体現していた。
「アンと戦った時、俺はお前を守れなかった」
「でも…あれは分身」
「だとしてもだ! それに今回行くところは人族じゃなく魔族のたまり場…いわば敵地の真っ只中。今回のようなVIP待遇は望めない…そんなところに大事なお前を向わせることはできない」
「だ…大事なっ!?」
アンリは顔を真っ赤にして驚いた顔を両手で隠す。
「そうだ、お前は俺の大事な仲間だ。お前がいないとこれから先…俺とお前の復讐は果たせない。だから今回は裏方に回って俺を助けてくれ」
「…でも、分身すら向かわせないなんて」
「少しでも味方の情報をあっちに流さないためだ、血の魔王アミラは伝説の魔王の知力を受け継いでいる。警戒しておくに越したことはない」
「…わかった」
不承不承ながらと言った様子でアンリはうなづいた。
「すまないな」
グリースはアンリの頭を軽く撫でて魔国に向かうためアンと帝国を出た。
残されたアンリも聖国に向かうため帝国を出るが、門を出てすぐに人の目を避けるように森の中に入る。
アンリは森に入ってすぐに5人の分身を生み出す。
「…作戦は?」
「わかってる」
「帝国に2人、聖国に2人、王国に2人」
「既に魔国を以外には…アンリが数人いる」
「でも足りない、情報不足」
アンリが口々に現状を報告していく、その様子は軽いホラーだった。
「人数を増やす」
「2人ずつ」
「足りないなら各自増員」
「魔国にも入れる?」
「グリースは…反対する」
「ならダメ…嫌われる」
「それはダメ」
「絶対ダメ」
「魔国には入れない」
「嫌われたくない」
アンリ達は各々の役割を確認していく。
そして、すぐに自分の持ち場に動き出す。
『アンリ』の目的はただ一つ。
「たくさんの情報…グリースは、褒めてくれるかな?」




