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帝国へ

なぜか異様に眠いです

帝国が王国と魔国に宣戦布告、これは第三勢力として両国と敵対したことを意味する。


「…なぜ今、宣戦布告なんだ?」

ここで宣戦布告することに何か意味があるのか、グリースはわからなかった。


グリースが頭を抱えたその時だった。


「分からないなら、帝国の王様に会ってみてはいかがでしょう?彼がなぜ王国と同盟を組まず第三勢力として戦争に参加したのか、気になりませんか?」


アリアがグリースの疑問を見透かしたようにそう言い、懐から一枚の封筒を取り出してグリースに渡した。

白い手紙を入れるための封筒だが、見たことのない模様のシーリングワックスが施されていた。


「それを門番さんに渡してくれれば、後はどうにかなるでしょう。」

「…なぜ俺に協力するんだ?」


グリースは不信感を隠さずに言うが、アンリは笑顔を崩さずに答えた。


「アンちゃんが可愛いからですよ」

「ふぇっ!?」


アンの顔が自身の髪よりも赤くなった。


「…真面目に答える気はないのか」

「はい、ちっともありません!」


笑顔でそう言ったアリアにグリースはため息をついて教会を出た。


「礼は言っておく。ありがとう、俺の身分じゃ帝国王になんて会えないからな」

「…良いんですよ、どんな下心があろうと努力する者は尊いのです」


アリアは笑う、グリースはアリアに背を向けて歩いた。グリースの後を追うアンとアンリはアリアに一礼して走って行った。


「どんな者にでも、救済は平等に在るべきである。それがどんなに難しいことか…神はいともたやすくこの世界を作りながら、その管理はしてくれないのですね」


去っていくグリースノー背を見ながらアリアは呟く。


「…光あれ、その一言から天地を生み出した神はこの世界の現状を見て何と言うのでしょうか」




グリース達は帝国に向かうと、門番がグリース達を見て駆け寄ってくる。


「そこで止まれ! 入国審査だ」

「俺達は用があってここに来た、急いでくれ」


グリースが門番にアリアからもらった封筒を渡す。それを受け取った門番は封筒に施されたシーリングワックスを見て驚愕した。


「なっ!?…これは」


それだけ言うと門番は少し待っていてくれと大急ぎで帝国の中に入っていった。


「…やっぱり、あの勇者は只者じゃないな」

「教主様…偉大」

アンリがそう言って微笑んだ。

取り残されたアンは2人がニヤニヤ笑っているのを不思議そうに見ていた。


数分もしないうちに帝国の憲兵3人がグリース達の元へやって来て、恭しく敬礼をする。

「グリース様、帝国王の元まで案内させていただきます」

「あ…ああ」


あまりにも丁寧な対応に戸惑いを隠し切れないグリースを他所に憲兵達は彼らの護衛をして帝国内を案内する。


まるで王様のような待遇だ。


周りの視線を浴びながら帝国内を案内され、到着したのは帝国の王宮である。

玄関前では門番と執事が並んでグリース達のお出迎えをしている。


「…これは、すごいな」

「VIP待遇」

「そうなの? 別に普通じゃない?」


戦慄するグリースとアンリ、日常のように慣れた様子のアン。そう言えばこいつはこんななりだが王様だったとアンを見て失礼なことを考えるグリース。


「お待ちしておりましたグリース様、既に中で帝国王がお待ちです」


執事の1人がグリースに部屋を案内すると言って先導した先には重厚な観音開きの扉、執事曰く会議室だそうだがこの無駄な威圧感は話し合いの場に必要なのだろうかとグリースは真剣に考えた。


執事が扉を両手で開けてグリース達を中に入れる。


「…それでは、ごゆっくりどうぞ」

「ああ、ありがとう」

「もったいなきお言葉でございます」


必死に捻り出した言葉はあっさりと返されて扉が閉まった。


グリース達3人は中にいた1人を見やる。


肩まで伸びた赤い髪、黄金に輝く瞳。程よく鍛えられた肉体と最低限の装飾が施された赤を基調にしたシャツとズボン。その全てが美しく調和した芸術作品のような若い男が黒い革のソファに腰掛けていた。


唯一浮いている点は腰に差してある宝剣だろうが、それもあまり気にならない。


「ようこそ、【勇者殺し】と【炎の魔王】。もう1人は仲間かな…まあ、ゆっくりしていってくれ。話し合いはじっくりと時間をかけるのが望ましい」

「残念だが…そんな時間は無い」


グリースはそう言って帝国王に詰め寄る。


「教えてくれ! なぜ宣戦布告をした!」

「…そんなことか、答えは簡単だよ」


帝国王はそう言って堂々と語り出した。


「王国にも魔国にも足りないんだよ、信念が。戦うための理由も、戦った後のビジョンも感じられない。戦ってどうしたいのか?戦いに負けたらどうするのか?逆に勝ったらどうしたいのか?」


グリース達は帝国王の話しを黙って聞く。


「その全てがどちらにも感じられないのさ、彼らにはね。国民の生活を豊かにしたいだとか、国土を広げて世界征服をしたいだとか、そんな夢すら見えてこない国と一緒に戦えるかい?」


そんな帝国王に主人公は聞いた。

「あんたは…何のために戦う?」


帝国王は真っ直ぐ主人公を見て言う。


「生き残るためだよ、帝国が。そして国民が、もっと言えば自分自身が生き残るため。生きて明日を幸せに迎えることができるようにするため。そのための政策、そのための戦いなんだよ、これは」



王国と魔国が争い合ってある程度疲弊しているこの時に第三勢力として王国と魔国に敵対したのも帝国が確実に生き残るためだと、帝国王はグリースに言った。



それを聞いてなおグリースは言った。


「…それなら、もっといい策がある。」


主人公はそう言って黄金の勇者に策を告げる。


「国民が疲れる戦争なんてそもそも無い方がいいだろ?」



主人公が告げた策は聖国で話したものと同じ『聖国と同盟を結び、それから魔国と王国の両国に停戦協定を結ばせる』というものだ。


グリースは帝国が第三勢力として宣戦布告した今でもまだ遅くないと判断していた。


むしろ王国と魔国に焦りが生じているであろう今がチャンスだとすら考えた。



帝国王は真剣に悩んだ表情で沈黙する。



その時だった。

バタンと扉が勢いよく開け放たれ、1人の男が乱入してきた。


「おいおい、何悩んでやがる!」

「…シテン。ドアを開けるときはノックをしろと何度言ったらわかるんだ」


乱入者は怪力の勇者シテンだった。


「お前がうだうだ悩んでる間にも怪我人や死者が出ていることを忘れるな! それでも【勇者】かお前は!!」


その言葉にグリース達は驚いた。



「…勇者だと?」


帝国王は驚いた表情をするグリース達を見て諦めた様子でため息をついた。


「ああ、今は帝国王だがな。仕方がない…自己紹介もまともにしていなかったから丁度いいか。私は帝国王のルーク、昔は【黄金の勇者】と呼ばれていたよ」


帝国王…いや、黄金の勇者ルークはそう言って微笑んだ。

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