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戦争

拾い物 手に取りすぐに 胃の中へ


腹を下して 遅い後悔

魔国の宣戦布告から3日、王国軍と魔族の集団が互いの血を流し合っていたが、グリースはそれがまだ小競り合いに過ぎないことに気づいていた。


聖国の宿の中、日が落ちて月が空に上っているにも関わらずグリースはアンリからの報告を頼りに戦争を終わらせる作戦を練っていた。能力で複数人のアンリからの情報を集めていたアンリは疲れて眠っている。


「この状況なら…意外とすぐに終わらせられるんじゃないか?」

『ほう? 一体どんな神算なのか聞かせてもらおうか』


グリースの作戦、それは王国と魔国の戦争に聖国と帝国を介入させると言うものだったが、この作戦には一つ準備が必要だった。


「現状では戦争とは名ばかりの王国と魔国の小競り合い…ここに大国2国が一度に『同盟国』として介入したらどうなる?」

「同盟国? 聖国と帝国が同盟を結ぶってこと?」

グリースの話にアンが聞き返した。


「そうだ、聖国と帝国が同盟を結んで戦争に介入し…『中立の立場で戦争を止めさせる』のが一番手っ取り早い方法だ。どちらか一国が介入するよりも安全で影響力も高い、王国も魔国も無視できないだろう」

『だが…あの2国が同盟を結ぶのか?』


アーモンの疑問にグリースは首を横に振った。


「普通は結ばないだろうな、だが結ばせる。そのための『コイツ』だ」

「え? 私!?」


グリースはアンを指差した。アンは自分に指を刺されて驚いた顔をする。


「当然だ、聖国と帝国に魔族の代表であるお前が同盟を結ばせるんだ。つまり2国間同盟に見せかけた3国間同盟なんだよ、これは」

それを聞いたアーモンが悪い顔をする。


『おいおい、故郷を売ってまで戦争を終わらせるのか?』

「誰が故郷を売るなんて言ったんだ?」

『…お前まさか』


不敵な笑みを見せるグリースにアーモンは呆れた顔をした。


『王国と魔国両方に三国間同盟を結ぶんじゃないだろうな? 争い合ってる両国に同時に既に二国間同盟を結んでる聖国と帝国が同盟を結びに行く…それに乗っかった国に戦争を止めろとお願いをするってか?』

「お前…実は頭いいだろ」

「…え? どう言うことなの?」


一瞬でグリースの策を見抜いたアーモンに驚きを隠しきれないグリースといまいち理解し切れていないアン。


「つまり、聖国と帝国の戦力を欲しがった両国に同盟を結ばせた後に戦争を止めるように半ば強制的に『お願い』するってことだ。しかも結びに来た同盟を拒否したらもう片方の国に同盟を結びに行くって脅すこともできる。抵抗しようにも1国と2国だ、対抗するには敵対してる魔国と同盟を結ばない限り不可能だ」

「でも…対抗しようとして王国が魔国と同盟を結んだらどうするの?」

『そりゃねえよ、王国の貴族は潔癖だぜ? 魔族と手を組むなんて王が言った途端に反乱を起こすだろうぜ』

「…そうなんだ」

アンの疑問にアーモンが答えた。

グリースは軽く身支度をすると宿の扉を開ける。


「善は急げだ、早速教会に行くぞ」

『そうだな…アンリはどうする?』

「頑張ってたし、寝かせてあげても…」


その時、ガバッとアンリが起き上がった。

「…起きた、私も行く」

「聞いてたのか、疲れはとれたか?」

「問題ない」


それだけ聞くと、グリースはうなづいた。


「じゃあ、行くぞ」




教会には神聖の勇者アリアが以前と同様に像の前で祈りを捧げていたが、グリース達の足音を聞いて振り返った。


「…あなた達でしたか、どうしたのですか? もしかして入信希望ですか?」

「アンタに戦争を止めてもらいに来た、神聖の勇者…アンタただのシスターじゃあないだろ?」


アリアの言葉を無視していきなりグリースは本題に入った。


「…戦争を、ですか。それはなかなか難しいことを要求してきますね。この聖国にそこまでの力はありませんよ? それに私はただの一人魔教の教徒ですし」


その言葉にアンリが反応した。


「…いま、嘘ついた」

「え…?」

アリアが驚いた顔でアンリを見た。


「私、ずっとあなたを見てた。あなた…偉そうな人から、『教主様』って呼ばれてた。…教主様って…偉くないの?」

「…見てた? そんな気配感じなかったのに」

アリアの驚きにアンリが自慢気に笑う。


「気配なんて…簡単に隠せる」

「はあ、聖国の警備…見直させた方がいいのかしらね」

「それで教主様? アンタの地位なら聖国の政治に介入できるんだろ?」


諦めた様子のアリアにグリースは勝ち誇ったように話しかける。


「…まあ、ある程度はね。政治そのものには関われないけど…口出しくらいはできるわ」

「十分だ、それでアンタにお願いがある」



グリースは作戦の概要を伝える。全てを伝え切った時には既に夜が明けていた。

グリースの考えを聞いたアリアは感心した様子でうなづいた。


「なるほどね、確かにそれなら王国も魔国も同盟を破棄しない限り戦争は起こせなくなるわね。でも…それをして聖国にメリットはあるの?」

「分かりきったことを聞くな、今でも少なからず来てるんだろ?」


アリアはその言葉にむぅっと拗ねたような顔をする。


「…気づいてたのね」

「魔族なんて統率のとれてない荒くれ集団だ、聖国にもちょっかいをかける奴がいるくらい簡単にわかる。それに、アンタの服が少し擦り切れて汚れてる。アンタが戦闘をした証拠だよ」


アリアはため息をつき、教会に入ってきた新聞を売りにきた少女に金を払ってお礼を言い見送る。

ちらりと新聞を見ながらアリアはアンを見る。


「ねえ、魔王の少女さん。なんで戦争を止めてほしいのかしら? あなたのお姉さんが始める戦争なんでしょ? それなら普通は応援するものでしょ」

その言葉にアンは首を傾げた。



「どうして? 喧嘩をしたら仲直りさせるのが普通じゃないの?」


その言葉にアリアは少し驚いた顔をして、すぐに笑顔になった。


「そうですね〜。喧嘩はよくないですものね」


アリアはそう言って新聞をグリースに差し出した。


「でも、少し遅かったですね」


グリースは新聞を一目見て歯軋りした。

「…クソッ!」



そこに書かれていたのは、今までの作戦を全て水泡に帰すものだった。



『帝国、王国と魔国に宣戦布告』



戦況は刻一刻と変化していく。

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