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これからの

金髪幼女はいい文明

「周りからは神聖の勇者と呼ばれております」

そう言った彼女はグリースに一礼する。


「あなたのおかげで通り魔の被害を最小限に抑えることができました。この国の国民を代表してお礼を申し上げます」

「いや、目の前にナイフを持ったおかしな奴がいたら誰だってすることだ」


不遜な態度をとっても利益はない、ここは謙虚に振る舞おうとグリースは神聖の勇者のお礼に手を横に振って応じる。

しかし、神聖の勇者はその謙虚な態度にまた素晴らしいとグリースを褒めちぎる。


「いえいえ、その当然を当然のように行うことが素晴らしいのですよ。失礼ですが、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

「…グリースだ。あんたの名前は?」

グリースが神聖の勇者にそう問うと、彼女はそう言えば言っていませんでしたと微笑んで答えた。


「申し遅れました、私はアリア・エイトリック・ジュリア…長いですのでアリアと呼んでください私もグリースさんと呼ばせていただきますので」

「ではアリア、あんたは教会でシスターをしているんだよな?」

「ええ、そうですけれど…もしかしてご入信の方ですか?」

「いいや、その気はない」

グリースは目を輝かせるアリアに首を振って否定すると、アリアはしゅんとうつむいて残念そうな顔をするがグリースに入信する気は全くないのだ。


「そうですか、それでは何用ですか?信者でないとすると…もしかして元罪人ですか?」

「そうだ、正確に言えば違法出国者兼脱獄犯だがな」


そう言うと、アリアは納得したのか真面目な顔でうなづいた。


「そうだったのですね、では早速案内しましょう。安心してくださいね、入信を強いるようなことはありませんから…まあ正直に言えば入信してくれると嬉しいのですけど」

「ああ、早速頼む…と言いたいのだが連れが1人いるから先に合流したい、少し待っていてくれるか?」


しかし、アリアが答える前にグリースに答える声があった。


「その必要は、ない。もう合流してる」


アンリがいつのまにかグリースの左に立っていた。グリースは驚きを堪えてアンリの頭に手をのせる。

「…これが連れだ。アンリ、彼女が神聖の勇者だ。失礼のないように挨拶しろ」

「アンリ…よろしく?」


グリースに促されてアンリがアリアに挨拶をするが、なぜか疑問形である。


「えっと…アリアです。よろしくお願いしますね、アンリさん」

「…うん。よろしく」


ぎこちない挨拶を終え、3人は教会に向かった。




聖国の中心にある教会は、白い漆喰に金の装飾がふんだんに施されたとても豪華なもので、貴族の城だと言われても信じてしまうほどのものだった。


「ここが教会です。あなた方は元罪人ですので、ここで一度何をしてしまったのかを神に申告して頂かなければなりません」

「…神に申告?」

グリースが眉をしかめて言うと、アリアは慌てて捕捉する。


「申告とはいっても私にどんなことをしたのか言っていただくだけで良いんですよ? 別に神を信じろだとか懺悔しろと言うわけじゃないんです」

つまり、どんな犯罪を犯したのかを国の中枢である教会が把握しておくと言うことだろう。グリースとアンリは渋々と自身の罪をアリアに伝える。


「俺は【勇者殺し】、一度は聞いたことがあるんじゃないか?」

「私は…盗み、あと脱獄?」

アンリが疑問形なのは王国の刑務所にアンリの分身がまだいるためアンリの脱獄はまだ王国にバレていないからだろう。


「ああ、あなたがあの勇者殺しさんでしたか。聞いていますよ、神速の勇者を殺したんですよね」

アリアは自身と同じ勇者を殺した相手に臆することなく笑顔で話をしている。グリースを脅威とすら感じていない様子だった。


「なるほど、分かりました。これにて申告を終了します。…ね、簡単でしょう? これだけで良いんです」

「…まあ、そうだな」


グリースがうなづくと、アリアは微笑む。


「では、ここからは個人的なお話をしましょうか」

「…個人的な話、だと?」

アリアは笑顔でうなづき、グリースとアンリは少し警戒してアリアを見る。


しかし、アリアの話は至ってシンプルなものだった。


「あなたの…そして私のこれからについてです」



アリアは語った。自分は魔王を倒すつもりはなく、自身の国を守ることができればそれで良いと。そして、グリースの勇者殺しが復讐によるものだと気づいていたと。


「それで? アンタは俺の復讐をどう思っているんだ?」

「…そうですね。あなたは今、勇者を恨んでいるのですか? それとも…神速の勇者を恨んでいるのですか?」


その質問は、すでにグリースが結論を出していたものだった。


「俺は勇者を恨んではいない。帝国で怪力の勇者に会ってな…勇者も捨てたもんじゃないと考えさせられたよ。」

「怪力の勇者…ですか」

「ああ、それから俺は勇者について興味が湧いた。だからここに来たといっても良い、俺は勇者を見てそいつの正義を知りたいと考えている。そして…その正義が間違っていたら」

グリースはそこで口をつぐんだ。


「…間違っていたら? どうするのですか?」


アリアの質問にグリースは真剣な瞳で答える。


「殺す。俺は俺の正義を貫くと決めたんだ」

「さすが…勇者殺しですね。実績の伴った言葉ほど重たいものはありません」


グリースの言葉をひらりと躱すように受け流すアリアの態度にアンリはムッとするが、グリースは表情を変えずにアリアを見つめていた。


「それで、私の正義はどうですか? あなたの正義のお眼鏡にかなっているのでしょうか?」

アリアはそう言って微笑む。

「宗教国の教会のシスターであり勇者と言う立場の私ですが、これでも自分の信じる正義と言うものはあります。私は孤児院をボランティアで経営していましてね、時間があれば小さい子たちと戯れているんですけど。その子たちが大人になって聖国の国教…人魔教と言うんですけど、そこに入信する子がどれだけいると思いますか?」

「…8割くらいか?」


アリアが首を振って答える。


「いませんよ、誰も入信しないんです」

「…国教なんだろ? そんな状態で大丈夫なのか?」

「ええ、うちは国教だからと言って入信を強制したりはしませんよ。それに入信しないですって人の方が少ないですよ、うちの孤児院の子たちが珍しいんです。」

そう言ってアリアは微笑む。しかし、その微笑みには翳りが見えた。


「…なぜ入信しないのか、原因はわかっているのか?」

「ええ、すぐに分かりましたよ。だからこそどうしようもないことだと諦めもつきました」

「…何だったんだ? その原因は」


グリースは思わずそう尋ね、アリアも笑顔で言い放つ。


「あの子たち、神様を信じてないんですよ」

グリースは思わず閉口し、アリアは自嘲するように笑った。


「おかしいですよね、シスターの経営する孤児院の子が神様を信じないなんて。でも、私はその事実になぜか納得してしまったんです」


アリアは微笑みながら続ける。


「あの子たちは、神様よりも自分自身の力や神様で誤魔化された真実を信じています。神にすがるのではなく、自分の実力に頼っています。…正直な話、あの子たちに宗教は必要ないんですよ」

「…宗教が必要ない?」


グリースの言葉にアリアはうなづく。アンリは興味なさげにあくびをした。


「宗教は絶望しそうな人間、そして希望を抱くことのできない人間が縋るもの。希望を見いだせない未来に無理やりにでも希望を見出そうとする人間に必要なのです。」

「…アンタの孤児院の子は未来に希望を見いだせているってことか?」


アリアは首を横に振る。


「あの子たちは、今も絶望の中にいます。親に捨てられ、同年代の子たちが望む職につけるような立場にいないカーストの底辺にいるのです。他の孤児院の子が人魔教に入信しているのはこの事実に絶望しているからだと私は思っています」


でも、とアリアは続ける。


「あの子たちは宗教に頼りません。いかに絶望の中にいようと自分以外を信じません。それは、私がシスターだからでしょうね。他の孤児院の子たちよりも人魔教に近いところにいたあの子たちは『神に捨てられた』と言う思いが強いのだと思います。私に向かって堂々と神様なんていないよって言う子が何人もいるのです、私はその度に何と返そうか迷ってしまいますよ」

「…それで、アンタは何と返すんだ?」

「そうかもしれませんね、と返しています」


アリアは笑顔でそう言った。


「私は、あの子たちが。そしてこの国の皆が笑顔で神様を信じることができる未来を目指しています。自分しか信じられないような寂しい人が生まれないように、絶望の中にいても輝かしい希望を見出せるような世界を目指しているのです」


それが、私の正義です。とアリアはグリースに言った。


「なるほど、じゃあ…アンタから見て俺の正義はどうだ?」


その問いにアリアは笑い、グリースも笑った。


「そうですね…お互いに、せーので言いましょうか?」

「そうだな、それが一番早い」


2人はお互いを見つめ合う。

そんな2人をアンリは見ていた。


そして、2人が同時にせーのっと言い。



「「理解できない」」と、同時に言った。

携帯充電器は猫です。


よろしくお願いします。

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