89対魔王戦
ロウル 記憶喪失の主人公・交通事故死して狼に転生した(★4テンロウ)
ローゼリア ロウルを助けた貴族令嬢(人間)
ノリク ローゼリアの父親でハキルシア帝国宰相(人間)
シャミア 諜報部隊隊長(闇妖精)
89対魔王戦
翌日、シャミアさんから報告を受ける。
「過去に魔王を倒した方法の記録ですが、大きく分けて大規模な軍隊兵力で倒した場合と、勇者が現れて勇者によって倒された場合の2つになります。
大規模な軍隊兵力とは、巨大国家または協力した複数国家が大軍を率いて魔王と戦っています。いずれも大量の犠牲者を伴っていますが、最終的に魔王を滅ぼす又は封印することに成功しています。
勇者による場合は、勇者が魔王と単独ないしは少数の精鋭で戦い、勝利して封印しています。勇者が敗北した記録もありますが、その後軍隊兵力か第2の勇者の出現により例外なく、過去の全ての魔王が封印又は滅ぼされています。」
「どんなに強力な魔王であっても、最後は例外なく封印又は滅ぼされているわけですよね。
魔王と言う存在は力を振るう量に制限があるのでしょうか?
無限に継続する力を持つのであれば、世界を滅ぼすことに成功する魔王が出てもおかしくないはずですし。」
俺は思ったことをシャミアさんに聞く。
「勇者に勝利した魔王は例外なく力を消耗したようで、自分が倒した勇者よりも弱い第2の勇者に倒された例が複数あります。」
やはりそうか。
魔王と言う存在は、使える破壊のエネルギーの総量に上限があるわけだ。
例え勇者に勝って滅ぼしたとしても、戦いで使った分のエネルギーは戻ってはこずに弱体化する。だとすれば、過去全ての魔王が最終的に敗北しているのも納得できる。
逆に言うと、反乱軍のアジトにいたのが魔王だったとして、今まで殆ど反乱軍のために力を振るってこなかったのも分かる。極力無駄なエネルギーを消耗したくなかったからだ。
俺が魔王なら、自分のエネルギーはどうしても必要なときにしか使わない。あとは、手下か仲間にやらせる。そう考えると、魔王級の存在が反乱軍と手を組むのも説明がつく。
「だとすると、俺が魔王なら、余分なエネルギーを使わないよう身を潜め、同じ目的を持つ協力者と行動します。
そうするのが合理的な考えだと思うのですが、過去にそのような魔王はいなかったのでしょうか?」
「歴史的にそのような魔王は存在しません。
過去のどの魔王も無差別の破壊活動を起こし、世界と敵対しています。」
シャミアさんが答える。
「しかし、魔王レオニエルはジーランドを滅ぼした後に身を潜めましたよね。」
「魔王レオニエルは、魔王としては例外的な存在です。
他の魔王を調べた限りでは、勇者に支配された魔王ベリエルを除き、そのような行動は見られません。」
「勇者に支配されたのでしたら、行動は勇者に準じるでしょうから魔王の行動としては参考になりませんね。基本魔王の行動方針としては、一部の例外を除き無差別の破壊活動を起こするという事ですね。
では、逆に破壊活動をした勇者はいますか?」
「勇者アーシェスは、魔王ニエルを滅ぼした後世界を支配しようとしましたが、
世界中を敵に回し、最終的に滅ぼされています。」
「シャミアさん、歴史上の魔王と勇者の出現時期、力について一覧に纏めることはできませんか。
そこから何かしら関連性が見えてくるかもしれませんので。」
「分かりました。時期と強さのレベルくらいでしたら、すぐに分かるでしょうから調べてきます。
しばらくお待ちください。」
シャミアさんはそう言って出ていった。
2時間後、シャミアさんが帰ってくる。
過去の魔王と勇者の出現時期と一覧だ。関連する書物も持ってきてくれた。
早速見せてもらう。
「まず、この表を見て思ったのは、勇者は魔王が出現したときにしか出現していませんね。
あと、前の魔王の出現から、短くて30年後、長くても200年後には、新たな魔王が出現しています。
1回だけ魔王が300年近く出現していない時期がありますが、それは別に考えましょう。
さらに言うと、前の魔王の出現から時間が経っている魔王ほど力のレベルが高い傾向が強いですね。
この点から分かる1つ目の仮説として、世界では時間が経つ度に魔王の力が溜まっていき、その力がある程度溜まる度に魔王が生まれるというものですが、シャミアさんはどう思いますか?」
「確かに言われてみれば、その通りですね。
ですが、最後の魔王であるレオニエルは、160年経った割には魔王レベルが低い気がしますが。」
シャミアさんが言う。
確かにそうだな。前の魔王であるアリエルの出現から160年経っているなら大体上の中レベルのはずだ。中の中と言うことはない。
出現場所が関係するかもと思ったが、五島諸島以外で出現した魔王も俺の仮説を外れていない。
「魔王レオニエルは身を潜めたりとか、他の魔王と違う異質な行動が目立ちますので、一旦別に考えましょうか。
次に勇者ですが、魔王レベルの高いときの方が出現率が高いですね。魔王レベルが上位の場合は確実に出現していますし、逆に最低レベルの場合は全く出現していません。
このことから、勇者は魔王の力に対抗するように現れているような気がします。
現在存命中の勇者はいませんか?可能性があるのは勇者ジャンヌしかいませんが。」
「勇者ジャンヌは20年ほど前に祖国のストラリアで天寿を全うしたそうです。」
シャミアさんが教えてくれる。
それじゃあ、勇者に聞いて真相を調べることもできないか。
「勇者にジャンヌに付き従った★5キリンについては?」
「五島諸島の魔王レオニエルの封印を守っているらしいですが、存命かどうかは分かりません。」
「それなら、魔王レオニエルの封印を確認するときに合わせて確認をお願いします。
存命でしたら、一度話を聞きたい旨伝えておいたください。
出来れば、ハキルシアまで話をしに来てくれるといいのですが、無理は言えませんね。」
「了解しました。
急いで五島諸島へ向かった部隊に連絡します。」
シャミアさんに先に、部隊に連絡だけしてもらうことにして、その間に俺は一覧表と資料を見て考える。
「あの後、個別に魔王の被害の資料を見て思ったのですが、勇者が現れた魔王は、破壊活動の被害が大きい魔王ばかりです。
魔王の破壊活動が勇者の出現に何らかの影響を与えている、ありていに言えば、魔王の破壊活動に対抗して勇者が生まれる、というのが俺の2つ目の仮説です。
異質である魔王レオニエルに当てはめても、ジーランドの国をほぼ滅ぼした結果、ジャンヌが勇者になったと考えられます。」
「確かに、勇者となったのは、魔王に対抗しようとしていた人物ばかりですね。
魔王の破壊発動が、そのような人物に力を与えたのかもしれません。」
「だとしたら、魔王に力を与えているものは何でしょうか?」
「勇者に力を与えているのが、魔王に対抗しようとする意志だとすれば、
世界を破壊したいと考える意志、と言うのは流石にないでしょうか。」
シャミアさんが言う。
「いや、有り得ると思いますよ。
魔王を倒そうとする意志によって勇者が生まれるのであれば、何かを破壊したいという意思によって魔王が生まれるという可能性は十分あり得ます。だとすれば、魔王が破壊活動をする事の説明が付きますし、意志を集める期間が長ければ魔王が強力になる事もその説を裏付けられますので。」
「しかし、世界を破壊したいという意思など、どこから集まるのでしょうか?」
「小さな意思が集まってエネルギーとして溜まっていくと考えたらどうでしょうか?
誰でも気に入らないことがあった時に、何かを破壊して気晴らししたいくらいは考えるでしょう。」
「確かに説明は尽きますが、多くの仮定の上に成り立った推論であり、断定するのは危険すぎるのでは?」
まあ、その通りだよな。
俺も、矛盾がないから可能性があると考えを膨らませただけだし。
「まあその通りですね。
この点についてはこれ以上考えても結論は出ませんし、次は異質である魔王レオニエルについて考えましょうか。
レオニエルに滅ぼされたジーランドの国では何か特別なことがありましたか?」
「話では、モンスターに対する扱いが相当酷かったとか。
当時の隣国ストラリアも見かねて改善要求をしたようですが、ジーランドの国王は拒否したという記録があります。」
「これは、魔王レオニエルの行動を説明する上で重要な事実かもしれません。
俺は、魔王レオニエルがジーランドの国を滅ぼした後、隣のストラリアの国を攻撃しようとしなかった行為に違和感を感じていたのです。
ですが、もし魔王レオニエルの行動がモンスターの待遇に対する報復措置だと考えれば、ストラリアを攻撃しなかったことについての説明が付きます。
世界中から魔王討伐の軍が集まり元ジーランドの国に攻め込まれてようやく戦いますが、味方にアースイミュニティーをかけて敵だけにダメージ与える戦法を取ったことからも、魔王レオニエルの考えの根幹ににモンスターは大切な仲間であるというものがあったとすれば、理解不能だった魔王レオニエルの行動に一貫性を見ることができます。」
「しかし、無差別に破壊活動をしないという時点で魔王として異質なことに変わりはありませんが。」
シャミアさんが言う。
「逆に思ったのですけど、こう考えたらどうでしょうか?
勇者は魔王などの何者かの破壊活動に対抗する形で生まれてくる。
魔王レオニエルは、ジーランドの国のモンスター達に対する破壊活動に対抗するために生まれてきた勇者だとしたら、破壊活動をしていたジーランドの国を滅ぼした時点で目的は達成しているわけです。
その後、姿をくらましても何ら不思議はありませんよね。
そして、魔王レオニエルが実は勇者だったとすれば、魔王としての行動の異質さについても、魔王レベルが低いことについても全て説明がつきます。」
「では、反乱軍に協力しているのが魔王レオニエルだとして、魔王の行動に説明はつくのでしょうか?」
「これまでの予想から、魔王レオニエルはモンスターの待遇が悪い勢力に対抗しようとしている方向で考えるべきですね。
協力していると考えられる反乱軍側のモンスターの待遇はどうでしょうか?
外部からスレイル兄弟のようなモンスターの助っ人が積極的に加わっている事。
ウルのようなモンスターのアドバイザーが方針決定に関わっている事。
モンスターを主体とした軍まで備えている事。
調査した範囲でも、モンスターの待遇は良いと考えられます。
敵対者のモンスターの待遇が悪ければ、反乱軍に加担しても違和感はありませんね。
逆に帝国側はどうでしょうか?
タンゴさんに聞いた話では、人間が居住地を拡大するにあたり、そこに住んでいたモンスターを追い出すだけでなく、捕まえて自分達のために戦わせていますよね。
それを魔王レオニエルが知ったとすれば、反乱軍に協力する十分な理由になりえると思えます。」
「ロウル様は、やはり強力な存在の正体は魔王レオニエルだとお考えですか?」
「流石に断定はできませんが、そう仮定して考えると不思議なくらい綺麗に全ての辻褄があうのです。
こういう直感は馬鹿になりません。
多くの推論がすべて正しかった前提の話とは言え、可能性は低くないと思っています。」
もし、この予想が間違っていたとしてもこれはチャンスだ。
ノリク様にお願いして、ハキルシア帝国のモンスターの待遇を改善してもらおう。
魔王と敵対せずに済むメリットは大きい筈だ。
「強力な存在が魔王レオニエルの場合と、そうでない場合に分けて対抗策を考えないといけませんね。」
「そうですね。
まずは、魔王レオニエルの封印が解かれているかの確認が必要ですね。
遠方ですので確認に時間がかかる以上、報告が戻るまでは場合分けして対応策を考えないといけませんが。
まずは、レオニエルではなかったとしても魔王級の相手だとして考えましょうか。
歴史的にみて、軍隊が魔王を倒した場合は、どれくらいの犠牲が出ていますか?」
「魔王のランクによって差がありますが、低ランクの魔王でも1000人以上の戦死者を出しています。
高ランクの魔王だと10万人以上の犠牲を出しても倒せず、最終的に勇者の登場を待つしかなかったようです。」
魔王と直接戦うには犠牲が大きすぎるな。
しかも、今回の魔王は余計なエネルギーを極力使わないように節約もしている。
魔王を倒すためにはエネルギーを使い果たすだけの戦闘を続ければいいとは言え、これと戦うのはかなり大変だな。
「魔王バエルの時に、ダークイミュニティーの使い手が活躍したと言ってましたよね。
それ以外に魔王戦で活躍した人物について分かりますか?」
「これまで調べた限りだと、ダークイミュニティーなど魔王の得意攻撃に完全耐性を持つ者は活躍しています。
あとは、★5シリウスが覚醒した★6アルハドルが使ったサンクチュアリの技で町を丸ごと魔王の攻撃から守る結界を張り、魔王の猛攻を防いだそうです。
この件については特化して調査し直せば他にも有益な情報が見つかるかもしれません。」
「1匹のモンスターが魔王の猛攻を防いだのは凄いですね。魔王側からすれば、かなりエネルギーを消耗させられた訳です。
★6アルハドルを味方にできないですかね?」
「現在世界中で★6のモンスターの生存は確認されていません。
身を潜めていないとは限りませんが。」
「身を潜めていては、進化のための経験が積めませんよね。
それを探すのであれば、俺は★5シリウスの進化前の★4テンロウですので、俺が★5シリウスを経て★6アルハドルを目指す方が現実的ですよね。
モンスターが★6へ覚醒する条件は分かりますか?」
「これについては世界中で調査された事があるみたいで現在分かっていることは広く知られていますね。
必要条件として
・十分な経験値
・種族固有技の習得「複数ある場合は全て」
・人間並みの知恵
があるようですが、他にも条件があるようで完全に解明されてはいないようです。」
「でしたら、これまでの話から調査する内容をいくつかに絞りましょうか。
1つ目、対魔王戦で活躍した人物・種族・技についてもっと詳しく調べてください。今後魔王級の敵と戦うための道標になります。
2つ目、サンクチュアリの技の効果やコストについて調べてください。1匹で完全に魔王の攻撃を防げるものなのかどうか知りたいです。
3つめ、★6への覚醒条件で分かる範囲で調べてください。」
俺は、シャミアさんに頼む。
「あと、サンクチュアリを習得するために俺が★6を目指して、戦闘訓練を積めるようノリク様に頼めませんか?
時間はかかるかもしれませんが、サンクチュアリを習得する事で強力な敵の正体が魔王だった場合に対抗できる準備をしたいですので。
もう一つ、アジトの強力な存在が魔王レオニエルの場合に、交渉して戦闘を回避する方法もあると思います。仮に強力な存在の正体が魔王レオニエルであれば、魔王の戦闘の動機がモンスターの待遇向上にある可能性が高いですので、交渉の余地はあると思います。」
俺は、お嬢様にも頼んだ。
俺の戦闘訓練の件は、アンネ様の従兄弟のライン・ミューゼル侯爵の所に限界突破種の★5シリウスのジークがいて、ジークが目指した方が早いということで、基本ジークに頼む方向になった。
念のため、ノリク様が軍を率いる時に俺が傍について、実践訓練も行うということになった。
20230213
話番号修正・誤字等修正




