46海上の襲撃
登場人物
ウル(主人公)狼に転生した元人間。(★3シルバーウルフ)
パワー ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)
ロウガ ウルの体の元の持ち主。
ケルティク ロウガの友人でメキロ伯爵配下(★4ヘルハウンド)
レオニエル モンスターの待遇向上を訴える魔王(★6魔王)
スレイル レオニエル三兄弟の長男(★5キリン)
アウルス レオニエル三兄弟の次男(★5ナイトメア)
ローラン レオニエル三兄弟の三男(★5ペガサス)
ティア メキロ伯爵の乗用竜(★5ティアマット)
オーウェル メキロ伯爵の跡取り(人間)
46海上の襲撃
ドンロンの港に着くまでに半月ほどかかるようだ。
時間があるので、やることは技の習得だよな。
次の日の朝、俺とパワーは甲板に出て海を見ながら技の練習をすることにした。
強大な敵を相手に戦うことになった以上、有用な技はできるだけ習得しておきたい。まずは、パワーの水中技を教えてもらおう。
「ウル様、水中技を覚えるのか。海に潜らないと効果を見せるのが難しいぜ。」
さすがに海の中で技の練習をしてたら船に置いて行かれるか。
「ウル殿は、4レベル技のディスペルマジックを習得できているそうだな。
先に、同じ4レベル技のフライトを習得してみないか。
そうすれば、水中で練習してもすぐ船に追い付くことができるぞ。」
いつの間にか、近くで聞いていたナイトメアのアウルスさんが助言をくれた。
ありがたい申し出なので是非ともお願いしたいところだが、ナイトメアの好相性技にフライトはなかったはず。
「アウルスさんってフライトを使えるのですか?」
「勿論だ。我ら兄弟は、お互いの技を教え合っている。其々が違う進化先を選んだのも技の種類を増やすためだ。」
なるほど、兄弟でそこまで考えて進化先を選んだわけか。
なら、兄弟誰かの好相性技は全部覚えているってわけだな。
当然、ペガサスの好相性技のフライトも使えると。
「俺達も仲間内で技を教え合っているのです。フライトを是非教えてください。」
俺は、アウルスさんに頼んでフライトを教えてもらった。これで、空中の移動ができるようになった。
フライトを習得するのに半日ちょっとかかり、午後のいい時間になってきた。
その間にパワーも2レベルのウィークの技を教えてもらったようだ。ついでに俺も覚えさせてもらったが。
それじゃあ、今度は水中技を覚えるかな。
アウルスさんにも聞いてみると、アウルスさんも水中技を覚えたいみたいだ。
俺とアウルスさんはパワーにフィッシュムーブとウォーターブリーズを教えてもらう。
先に船の上で精神力の集め方を見てから、実際に海に入って使ってもらった。
これらは3レベル技なので、4レベルのフライトよりも楽に覚えられた。いくつも技を覚えると似たパターンの技は覚えるのが早くなってきた。
★5のアウルスさんもそこまで苦戦せずに覚えられたみたいだ。
もう夕方だ。
アウルスさんに明日も技を教えてもらう約束をして部屋に戻った。
夜の間にアランさんにもっと話を聞くか。
俺達は食事を済ませた後、アランさんに部屋に来てもらった。
「オーウェルさんの側近というか、重臣について教えてください。」
「旦那様が一番信頼しているのは、エルモンドの留守を預かっているネフェル様ですね。
暗殺された先代からエルモンドの留守を任されていましたし、旦那様の教育についても関わっておいでですので。」
当然、もしもの時には代行もできる全体統括者は当然いるよな。
「軍事的な責任者とかは?」
「以前はガーランド様がみえたのですが、先代を守ってノリクに殺されました。
息子のグレアス様は、武勇に秀でてみえますが、まだ若く部隊の指揮まではまだ厳しいかと。」
「若いっていくつ?」
「旦那様より1つ上です。子供の頃一緒に遊びまわっていたみたいですが。」
こういう人は信用できるからなんとか軍の中核を担ってほしいな。
「他に軍の統率を取れる人はいないの?」
「ガーランド様の下で部隊を指揮していた指揮官の方々が見えますが、私は1人1人について詳しく知りませんので。」
無難だけど、トップには立てないというところだろうか。
ここは、グレアスさんに頑張ってもらうしかないか。
「オーウェルさんが外に出るときの護衛は誰がやってるの?」
「ヘルハウンドのケルティク殿を連れて行きますね。」
確かに五島諸島でもそうだった。
「ケルティク以外の護衛はいないの?」
「ガーランド様の直属の護衛部隊の方がいたはずですが。」
「今船に乗っているの?」
「乗っていないですね。」
こういう時にオーウェルさんの傍にいない時点で直属の護衛じゃないよな。
オーウェルさんはケルティクを信頼しているんだろうけど、もっと護衛をつけなくていいんだろうか?
目立たないようにしたかったのかもしれないけど。
「内政の責任者は誰なの?」
「ネフェル様が責任者になってます。
配下に多くの文官が見えますが。」
これ、ネフェルさんに何かあったら、メキロ伯爵家の体制ボロボロになるのでは。
「俺様思ったんだけどよ、ノリクがそのネフェルって奴を殺したらかなりまずいんじゃねえのか?」
「パワーもそう思うよな。先代と軍事責任者が暗殺されてバタバタとは言え、これはかなりまずいと思う。」
「以前は先代が的確に指示を出してくださってましたので、問題はなかったのですが。」
そう言う問題じゃなくて、誰か1人・2人欠けただけで組織として成り立たなくなるのがまずいんだって。
アランさんにいう話じゃないけど。
「モンスターの重臣はいないの?」
「ケルティク殿が諜報部隊のNO2として指揮をしています。」
ケルティク、お前は働きすぎだ。
「諜報部隊の責任者は誰?」
「イザベル様です。今もルーベンブルグで部隊の指揮を執っているはずです。
ケルティク殿がエルモンド近辺の指揮をしています。」
そりゃ諜報部隊は外にいるものだろうけど、責任者もなのか。
まあ、エルモンドにも責任者がいるのはいいのだが。
何と言うか、人材が少なすぎでは?
先代当主が相当優秀だったのかもしれないが、後進を育ててこなかった付けが来ている気がする。
ノリクと戦う以前に、組織体制を立て直すのが大変かも。
「オーウェルさんって、今忙しいの?」
「聞いてきましょうか?」
「お願いします。」
今時間があるなら、オーウェルさんに言っておこう。
しばらくしてオーウェルさんが部屋に来た。
1匹のモンスターに呼ばれてすぐ来る貴族の当主というのもどうかとも思うが。
「ウル殿、どうかされましたか?」
しかも、1モンスターの俺に敬語使ってるし。
全然貴族の当主っぽくない。気さくなのはいいのだけど。
「オーウェルさん、急に呼び出してすいません。
実は、アランさんにエルモンドの体制について聞いたのですけど、色々と思うことがありまして。」
「父が亡くなって、急に私が当主になりましたから至らぬ点は多々あるかと思いますが。」
「多分、御父上の問題ですよ。きっと、御父上は何でもできて優秀すぎたのでしょう。自分で何でもやりすぎて跡を継ぐ人材が育っていないです。
それを改善するのはオーウェルさんの仕事になるのでしょうが。
アランさんに話を聞いていると、ノリクにピンポイントで1人・2人暗殺されるだけで、メキロ家の中が機能しなくなりそうです。
エルモンドにいるから安全じゃなくて、責任者をすべて2人体制にするとかして、暗殺対策をすべきだと思います。」
「責任者を2人にすると、2人で意見が合わないときにどうするのですか?」
「2人を主務者・助務者として基本最終判断は主務者が決断することにして、主務者に何かあれば助務者が即代行できるようにします。できれば2人の責任者は仲の悪くない人にすべきでしょうが。」
現代の会社では普通だけど、この時代はこういう考えはなかったのかな?
俺は組織論の歴史は勉強していないけど。
「誰かが暗殺されても、仕事が問題なく回るようにということですね?」
「はい、そう言うことです。」
「これは、ウル殿の前世での知識ですか?」
「確かにそうですが、組織を回すための当たり前のことかと思ってました。」
「いえ、すごく画期的で参考になります。」
この世界では画期的なんだ。
確かに、転生系の物語では大体主人公が現代知識をフル活用して無双していたけど、俺にはそんな専門知識はないからな。
それでも、前世の会社で叩き込まれたことが、今少しでも役に立てるのなら言った甲斐はあった。
「まだ船旅は長いですし、その間に具体的にどうするかを考えてもらえればと思います。」
「はい。考えてみます。
とても参考になりますので、また、思いついたことがあればいつでも呼んでください。」
俺の齧ったような知識でも、役に立つのかもしれない。
また、思ったことがあったら言おう。
オーウェルさんは気さくで話しやすいから、何かあったら気軽に話せるし。
エルモンドについて、状況が分かったらまた色々思いつくかも。
「ウル様、俺様達はガイア手に入れに迷宮に行くんだろ?」
オーウェルさんが部屋を出て行ってからパワーが聞いてくる。
「そうだけど、どうかしたのか?」
「ウル様、エルモンドに行ったら色々したくなるんじゃねえのか?」
「多分な。」
「フライトを使うとエルモンドまですぐつけるのか?」
パワーの言いたいことが分かった。
確かに、パワーの言う通り、船旅に時間を使わずに迷宮攻略と組織改革に時間を使った方がいいよな。
「多分な。
アウルスさんに一通り技を教えてもらったら、フライトで飛ぶか。」
「俺様もそれがいいと思うぜ。」
「よし、技を覚えたらオーウェルさんに提案してそうしよう。」
ノリクがいつ何をしてくるか分からないわけだし、こういうことは少しでも早めに手を打った方がいいよな。
明日からも技を覚えるが、それが終わったらエルモンドに飛ぶことにして、今夜は眠りについた。
次の日、またアウルスさんに技を教えてもらう。
パワーは今日は3レベル技に挑戦する。そして、俺は引き続き4レベル技を教えてもらう。
俺は次の2日で、エレメンタルガード・フリーアクション・アナライズマジック・デストラクションを覚えた。エレメンタルガードが3レベル技、残りは全部4レベル技だ。
アナライズマジックは、対象にかかっている技が分かる技。
デストラクションは、対象の精神集中を妨害する技だ。これはコンセントレイトをかけた相手にも通用する可能性があることから重要だ。
パワーは、2日でヒーリング・リジェネレーション・エレメンタルガード・スタミナを覚えた。ヒーリング以外は全部3レベル技だ。パワーも好相性技でない技を覚えるのがだんだん早くなってきた。
★5の3種族のどれかの好相性技となると範囲が広く、有用な技も多い。センターで教えてもらうと多額の費用が掛かるが、アウルスさんは善意で教えてもらえるので申し訳なく思ってしまう。
俺もせめてものお返しにと、虎の子のホールドを教えた。これは幅広く使えると思う。
この調子ならあと数日で、教えてもらえる4レベル技は全部覚えられそうだな。
翌日、そんなことを想いながらまた、次の技の習得をしていると、空中を巡回していたペガサスのローランさんが慌てて戻ってきた。
話を聞くと、かなりのスピードで船が近づいてくるという。
キリンのスレイルさんが再度偵察に出て、空中からディテクトエネミーで確認すると、明らかに敵らしい。
結構な人数の武装をした人間が乗っているようだ。
船の周りに★4シードラゴンが2匹と★3サーペントが8匹ほどいるようだ。
来るまでに1時間もかからないらしい。
早速作戦会議に入る。
敵は、見えただけで船上の武装した人間二十数人。
「ケルティクとティア「ティアマット」がいない今、配下のモンスターの戦力はほぼいません。
船員が弓が使える程度です。」
オーウェルさんが言う。
「だとすると、敵にサーペントが多いので、近づかれると厳しいですね。」
俺が言うと、
「ならば、迎撃に向かおう。
我々が飛んでいって船上の人間に向かってフォッサマグナを連発するのがいい。」
スレイルさんが言う。
「3発同時に放って、回復の暇を与えずに殲滅させるか。」
アウルスさんが言う。フォッサマグナ3連発か。アウルスさん本気モードだ。
確かに、フォッサマグナで敵を黙らせてしまうのが一番手っ取り早いと思う。
「これでシードラゴンたちと戦わずに済むといいのですが。」
ローランさんが言う。
「シードラゴンの攻撃技は電撃でしたっけ?」
俺は確認を取る。
「ライトニングとチェインライトニングですね。エレメンタルガード「サンダー」をしておくべきでしょう。」
オーウェルさんが教えてくれた。
「低レベル技に一応別属性の攻撃技もあるのと、4レベル技はフリーアクション・ディスペルマジック・ウォーターウォールだな。」
魔王がシードラゴンの好相性技について補足してくれる。
「ウォーターウォールって壁を作るだけですよね?」
「そうだが。熟練すると壁を移動させて攻撃まがいのこともできるらしいので注意はした方がいい。」
「サーペント達は船の中には入ってこれませんよね。
最初にフォッサマグナ連発で甲板の敵を倒してから、船の中を順番に制圧していったらダメですか?」
俺が提案する。
「基本はそれがいいだろうな。戦闘員を黙らせてしまえば、サーペントと戦う必要もなくなるだろう。」
アウルスさんも同意してくれたので基本方針は決まった。
「私は万が一に備えてこの船の守りに着こう」
魔王が言う。
想定外が起こらないとも限らないし、それ以外に船を守れる者はいないと思う。
迎撃に行くのは、俺とパワー、そしてスレイルさん達3兄弟だ。
「一応シードラゴンはディスペルマジックしてくるのですよね。
ディスペルガードって自分以外にもかけることはできますか?」
最悪海に投げ出されて水中に引き込まれることも想定して俺は聞いてみた。
「ディスペルガードは自分にしかかけることができない。攻撃前に支援技は全部かけておくが、ディスペルマジックを喰らわないよう注意してほしい。」
アウルスさんが答える。やはり無理か。
俺達は全員にかける技を確認する。
技を消されないための ディスペルガード「スレイルさん達のみ」
フォッサマグナのダメージを完全無効果する アースイミュニティー
敵の電撃に対する防御 エレメンタルシールド「サンダー」
空中移動のための フライト
行動を制限されないための フリーアクション
弓矢と遠距離攻撃のダメージを減少させる ミサイルガード
高速移動するための スピード
敵にかけられた技を1回だけ跳ね返す リフレクション
すごいな。相当な強化だ。
初めて俺達と戦ったときもこんな感じでガチガチに強化してたんだろうな。
これなら、ちょっとくらい格上の相手でも十分に戦える。
「あと、フライトは精神集中したまま飛べるのでしたっけ?」
俺が聞くと、
「スピードが遅くなるが飛べないことはない。」
ローランさんが答えてくれる。
「でしたら、敵の攻撃が届かない上空で強化技を全部使ってから、フォッサマグナの精神集中を行い、敵の上から降下してフォッサマグナを放つこともできますよね。
前回敵の目の前での精神集中はかなり隙が大きかったですので。
その時敵だった俺が言うのもなんですが。」
「なるほど、ちょっとコントロールが難しくなるが、確かにその方が隙は小さくなるな。それで行こう。」
アウルスさんが同意してくれた。
これで敵からすれば、空からいきなりフル強化した敵が降ってきてフォッサマグナの3連発を食らうわけだ。
あとは、迎撃しようと甲板に上がってくる敵をひたすら叩く。
不用意に海上から見える位置に動かない限り、シードラゴンたちは船の上にいる俺達には手が出せないはず。
これなら、俺達5匹だけでも十分に勝算があるはずだ。
こうして、俺達は襲ってくる船の迎撃に向かうことにした。
技一覧
スタミナ…3レベル。対象のスタミナを上げ、持久力を向上させる。(単体・継続)
ディスペルマジック…4レベル。対象にかかっている強化・防御技を解除する。(単体・一瞬)
ディスペルガード…5レベル。ディスペルマジックの効果を完全に無効化する。(自分・継続)
フライト…4レベル。対象に飛行能力を与える。(単体・継続)
フィッシュムーブ…3レベル。対象を水中で高速水泳ができるようになる。(単体・継続)
ウォーターブリーズ…3レベル。対象を水中呼吸ができるようになる。(単体・継続)
ウィーク…2レベル。対象の筋力を弱くする。(単体・継続)
エレメンタルガード…3レベル。対象に指定した属性(炎とか)のダメージを一定量無効化するバリアを張る。(単体・継続)
フリーアクション…4レベル。対象は行動を制限されなくなる。(単体・継続)
アナライズマジック…4レベル。対象にかかっている又は使用中の技を知る。(単体・一瞬)
デストラクション…4レベル。対象の精神集中を妨害する。(単体・一瞬)
ディテクトエネミー…5レベル。視認した相手に敵意があるかどうかが分かる。キリンしか習得できない。(自分・一瞬)
フォッサマグナ…5レベル。大地系最強攻撃魔法。自分中心の広範囲にダメージを与える。(範囲・一瞬)
ライトニング…対象に強力な電撃をぶつける。(単体・一瞬)
チェインライトニング…4レベル。対象とその近くにいる生物に電撃をぶつける。(範囲・一瞬)
ウォーターウォール…4レベル。近くに水の壁を立てる。(範囲・継続)
ウル
★3シルバーウルフ
マスター:なし
コスト:170(+60)
習得技:ヒーリング・リジェネレーション・クリアランス
サンダー・ダブルスラッシュ・ホールド・ディスペルマジック・ウィーク・デストラクション
ストレングス・スピード・ウォーターブリーズ・フィッシュムーブ・フライト
フリーアクション・アナライズマジック・エレメンタルガード
パワー
★3ポールベア
マスター:ウル
コスト:60
習得技:ヒーリング・リジェネレーション
ベアハッグ・トリプルスラッシュ・ジャンプアタック
インパルス・ホールド・ウィーク
ストレングス・スタミナ・ウォーターブリーズ・フィッシュムーブ
エレメンタルガード




