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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
はじめての冒険
12/122

12パワーとの闘い(5)

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    モンスター仲間。(★2イーグル)

ガルガン   モンスター仲間。(★1ヤングタイガー)


 準備ができた後、俺達はパワーの追跡を始めた。

 パワーは深い森の中を進んでいる。


 今度は俺達が風上である。

 不意打ちされる可能性も十分考え、俺は左右も警戒しながら追跡を続けた。


 ガルガンも、不意打ちを食らわないよう、後ろを用心深く警戒している。


 とは言え、結構時間が経ってしまっている。

 パワーの方も小細工をする時間は十分にあっただろう。

 俺は、先ほどの合流など足跡に異変がないかも気を付けながら追跡した。


 しかし、それでも甘かった。


 突然、後ろで「ドン」という音がする。


 振り向くと、ご主人様が倒れている。

 倒れたご主人様を前にして、パワーが悠然と立っていた。


(キャア)

 リーザが慌てて木の上の枝に飛び去る。

 

(化け物だぁ・・・)

 ガルガンが、パワーを恐れて逃げていく。


 まずい。ご主人様がやられて2匹ともパニックになっている。


 しまった、上か。

 パワーは木の上で俺達が真下を通るのを待っていたのだ。

 しかし、足跡も匂いもまだ奥に続いていた。


 どうやって?

 この森は木が狭い間隔で生えている。

 一度大きく回り込み近くの木に登ってから、地上に足跡を付けず、自分が歩いた足跡の真上まで木の上を伝って来たのだろう。



 パワーとしても、このまままともに戦っても、ご主人様のスリープの隙に俺にホールドされて勝ち目はないと分かっていたはずだ。

 だからパワーは、どうしてもご主人様の魔法を封じる必要があった。

 ご主人様を攻撃しようにも、俺とガルガンに前後を守られている。

 遠距離技を持たないパワーがどこから近づこうが、俺かガルガンに先に発見され、ご主人様への攻撃は防がれる可能性が高い。


 しかも、足跡での小細工は一度奇襲を防がれている以上、見破られる可能性が高い。

 作為的な足跡を見つけたら、俺は今度は全方向を警戒するからな。

 前回の奇襲でガルガンを倒せなかったのは、パワーにとって相当痛かったはず。

 パワーは追い詰められていたはずだ。


 だからこそ、パワーは必死になって考えたんだ。

 ご主人様を不意打ちして倒す方法を。


 そして、木の上から不意打ちすれば、前後を守られているご主人様を攻撃できると考えた。

 だが、俺達がそのまま足跡と匂いを追跡する可能性は高いとは言え確実ではなかったはず。

 さらに言えば、パワーにとって木の上は逃げ場がない。もし、俺達が上を警戒していたら、発見されて袋の鼠になっていたはずだ。

 パワーは、それすら承知の上で、これが一番勝算が高いと判断して、木の上からの奇襲に勝負を賭けたのだ。


 そして、賭けに勝った。

 ご主人様を倒して一番厄介な魔法を封じ、リーザとガルガンは戦意喪失。

 俺のホールドは正面からではパワーには通用しない。リーザとガルガンが戦意喪失した以上、ホールドに対し隙を作ることもない。

 俺のサンダーも痛いだろうが致命傷にはならない。

 肉弾戦の殴り合いは熊であるパワーの得意とするところだ。


 完敗だな。パワー、お前の勝ちだ。


 もう、俺にはパワーに勝ちに行く手がない。

 村に戻って、村長に救援要請するか。

 いや、フルゴ村は冒険者が滅多に来ない。町まで救援を求めたとしても、時間がかかりすぎる。

 何より、俺は村長と意思疎通ができない。

 それよりも、そんな手段を選んだ時点でご主人様が助からないことが確定する。



 俺の何がいけなかった?

 確かに俺は、最初パワーのことを侮っていた。★2モンスターでそこまで手強くないと。

 だが、パワーの賢さを知ってからは油断していないはずだ。

 ここで仕留めようと単独で突出したこともある。だが、ご主人様に指摘されてからは各個撃破されないよう一緒に行動していたはずだ。


 パワーの足跡による策を見抜けなかったから?

 あれは無理だ。パワーの方が1枚も2枚も上手を行っていた。パワーは、俺が感づいていないか確認するほど念入だった。

 木の上からの奇襲もそうだ。俺の警戒の想定外から攻撃してきた。

 俺が、パワーとの読みあいに負けたからなのか?


 そうか。俺はやはり、たかが熊の知恵だとパワーを侮っていたんだ。

 元人間の俺が、知恵比べで熊ごときに負けるはずがないと驕っていたんだ。


 俺は、完全なる敗北感と絶望感で敵を目の前にして、うつ向いてしまった。



(勝負はついただろ。諦めておとなしく帰りな。今なら、お前らだけなら見逃してやってもいいんだぜ?)

 闘いの最中、決して口を開かなかったパワーが初めて口を開いた。


 俺は顔を上げてパワーの顔を見る。

 勝利を確信した余裕の表情がそこにあった。



 お前達だけは見逃してもいいということは、ご主人様はその中に入っていない。

 パワーはご主人様の魔法を一番警戒していた。

 ご主人様だけを仕留めれば、後はどうでもいいということなのだろう。


 だめだ。

 俺はご主人様の役に立つと誓ったんだ。

 パワーに勝てなくとも、せめてご主人様だけでも助けなければ。


(ご主人様も連れて帰らせてくれ。)

 俺はパワーに頼んでみた。


(勝利を諦めた奴が、今更、何を言ってやがる。)

 パワーが答える。


 俺ははっとした。


 そうだったのだ。

 パワーは、どんなに不利な状況になっても最後まで逆転する手がないか必死に考えていた。

 そして、勝算のある方法を考えて、リスクも承知の上で躊躇せず実行したからこそ、勝利をもぎ取ることができたのだ。


 それに対して、俺は、諦めていた。

 この差だ。

 勝負を分けたのは、この差なんだ。


 まだだ。

 すぐにご主人様にとどめを刺し、そのまま俺も倒せばよかったものを、パワーはそれをしなかった。

 パワーは、今勝利を確信して驕っている。

 まだ勝負はついていない。驕りの隙を付けば何か手はあるはず。

 考えるんだ。

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