表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
はじめての冒険
13/122

13パワーとの闘い(6)

登場人物

ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)

レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。

リーザ    モンスター仲間。(★2イーグル)

ガルガン   モンスター仲間。(★1ヤングタイガー)


 俺は、どうやってパワーの隙を付こうか考えた。

 パワーは意外と饒舌そうだ。

 隙を探すにしても、パワーと話すのが一番のはず。

 はったりをかましながら色々探りを入れて、隙がないか探す。

 正面から戦っても勝ち目がないだけに、これが現実的だ。


(やってくれたじゃねえか。)

 俺は、パワーに向かって吠える。

 俺自身諦めないための精一杯の虚勢でもある。


(まだ諦めてなかったのか。意外だぜ。さっきまで死んだ目をしてやがったのによお。)

 パワーは俺のことをよく見ているようだ。

 だが、俺はあの時の俺とは違う。


(お前のお陰で気づけた。感謝してるぜ。)

 これは事実だ。諦めない意志の強さを。そこは敵であっても尊敬してるぜ。


(ふん。それで今更お前に勝ち目でもあるのか?)

 パワーは余裕の表情で聞いてくる。


(そういうお前は、俺達に勝った後、どうするつもりなんだ?

 俺が生きて帰ろうがここでに死のうが関係ないだろうが、ご主人様が帰ってこなければ、次にもっと強い冒険者が、お前を退治しに来るだけだぞ。

 人間ってのはそういうものだ。)

 俺達が全滅したことを知れば、村長はもっと強力な冒険者に依頼するだろう。嘘にはならない。


(ごちゃごちゃうるせえぞ。来るなら来いってんだ。

 だいたい、お前らも俺様に勝てないと思って諦めて引いてくれれば、見逃してやったのによお。

 俺様を本気にさせるから悪いんだ。この人間みたいになあ。)

 パワーから意外な返事が返ってくる。


(何が見逃すだ。猟師を4人も襲っておいて。)

 俺は負けずにパワーに向かって叫ぶ。


(1人で歩いていた人間は、誰も殺してねえだろ。

 俺様は、全員殺すこともできたんだぜ。)

 パワーが返してくる。

 確かに、パワーにその気があれば、襲った漁師を殺すこともできただろう。


(俺と初めて戦ったときの猟師は殺そうとしてただろ。)

 あの時のパワーは執拗だった。


(あいつは、ちっとも荷物をよこさなかったからだ。

 人間は俺様に餌だけ持ってきてくれればいいのによ。

 そいつも、殺すつもりはなかったぜ。)

 パワーはなんでわざわざ人間の荷物を狙うんだ?

 この森は餌が豊富なはずなのに。


(この森には獲物がたくさんいるだろ。)


(生の肉なんて臭くて食えるかってんだ。)

 パワーの奴、意外とグルメなんだ。

 体つきからは想像できなかった。

 そう言えば、猟師の食べていたお弁当を食べたりしていたな。

 これで、獲物が多い森でパワーが猟師を襲った理由が分かった。

 でも、もっといい方法があるだろ。


(そんなに加工した肉が食べたければ、人間の仲間になればいいだろ。)

 うん、俺ならそうする。

 ちょっと気に食わないが、ここでパワーを仲間にしてご主人様を回復させる事が出来れば、と甘いことを考えてしまった。


(そういう台詞は、俺様に参りましたって言わせてから言うんだな。)

 やっぱり、ダメか。

 まあ、どう考えても今は俺が負けているからな。

 やはり、どうにかしてパワーの隙を付かないと。


(それじゃあ、ご主人様の干し肉をやって、ご主人様を連れて帰るからご主人様の回復をさせてくれ。)

 ご主人様が回復すれば、ご主人様にスリープしてもらって多分勝てるはず。


(ダメだな。回復させたら一斉に襲い掛かってくるに決まっている。)

 バレたか。


(じゃあ、ご主人様の干し肉をやるから食べたらここから立ち去ってくれ。それなら襲われる心配はないだろ。

 あと、猟師にお前に会ったら干し肉をやれば襲われないぞと言っておけばいいんだろ?)

 これならどうだ。

 今回のは、純粋にパワーに対する交渉提案である。

 この際、これでもいい。すぐにご主人様の回復ができるなら。そう思った。


 すると、パワーが考え出した。

 パワーはこういうところで、柔軟に考えるだけの知恵がある。

 だからこそ、俺達相手にここまで戦ってこれたのだ。


(お前がそう言っても、この人間がそれを認めるとは限らねえな。)

 そこを疑うか。まあ、分からないでもないけど。


(ご主人様は俺の意見をだいたい聞いてくれるぞ。)


(信じられねえなあ。)

 困った。

 なら、先に餌付けして、油断させよう。

 それにご主人様の様子を近くから確認したい。


(それじゃあ、先に干し肉をやるから、食べている間にもう一度考えてくれ。)


(いいだろう。じゃあ、干し肉を貰おうか。)

 よし、これでご主人様に近づける。


 ご主人様は怪我で気絶しているが、まだ息はある。

 出血もガルガンに比べれば遥かに軽微だ。

 もう少し我慢してください。ご主人様。

 俺が必ず助けます。

 しかし、今はパワーの目の前で変な真似はできない。


 俺は、ご主人様の荷物の袋を開けると、中身をざっと出した。

 干し肉がまだ残っている。

 干し肉が入った袋を前足と口でなんとか開けて、パワーの方へ投げた。


(初めから素直にそうすればいいんだ。)

 パワーは干し肉を食べ始めた。


 その間に俺は、パワーが応じてくれなかったときにどうするか考える。

 ご主人様の荷物の中に何か使えるものはないか?


 あった。これだ。


 俺は、それを咥えてご主人様の近くから離れる。

 上手く決まるよう、ちょっと紐を緩めておこう。


(リーザ、ちょっと来て。)

 俺は、パワーから離れたところでリーザを呼んだ。

 リーザが俺の近くに降りてくる。


(リーザ、もし俺とパワーが戦うことになったら、これを使って、パワーの顔に岩石落とししてくれないか。)

 俺はパワーに聞こえないよう小声で話す。


(あいつ怒らせたらどうなるか。)

 リーザが聞いてくる。


(もし俺が負けたら、もう勝てないから、逃げてくれ。)

 俺もこれを最後の勝負にするつもりだ。


(ウルがそこまで言うなら、やってみるわ。)

 リーザはそう言ってくれた。


 次はガルガンだ。


(ガルガーン、こっちへ来てくれ。)

 ガルガンは木の陰に隠れて遠くから様子を見ていたが、パワーに近付かないよう大回りして来てくれた。


(ウル、どうするの?)


(リーザの岩石落としが決まったら、当たったところにファイアーをぶつけてくれ。)


(あいつ怒るよ。皆殺しにされない?)


(その時は俺が防ぐから、もし俺がやられたら逃げてくれ。)


(分かったよ。)

 よし、ガルガンも準備できた。

 あとは、パワーの出方次第だ。


 パワーが干し肉を食べ終わった。


(先に干し肉やっただろ。考え直してくれたか?)


(ダメだな。この人間は危険だ。お前達だけなら見逃してやるぞ。)


(交渉決裂だな。リーザ、岩石落とし。)


 リーザは、木の枝から木の枝に飛び移るが、途中ちょうどパワーの真上に来るように計算していた。

 パワーの顔にあれが落ち、パワーの顔にどばっと液体がかかった。


(てめえ、甘い顔しりゃいい気になりやがって。)

 パワーが襲い掛かってくる。


(ファイアー)

 ガルガンのファイアーがパワーの顔面に命中する。

 すると、パワーの顔から頭まで燃え上がる。


(あちちちち)

 パワーは顔についた火を消そうとするが、油の付いた毛皮の火は簡単には消えない。


 俺は、ガルガンのファイアーの発動に合わせて風呂敷を外し、パワーにホールドをかける。

 パワーは前脚というか腕で火を消そうと必死で、後ろ脚はがら空きである。

 よし、パワーの後ろ脚をロープで絡めとったぞ。

 引き抜かれないよう、ロープの反対側を近くの木に巻く。


 俺はすぐに2回目のホールドの精神集中に入る。


(馬鹿にしやがって。)

 パワーはいつもと同じように後脚のホールドを引きちぎろうとする。

 しかし、今回はいつものツタとは違い、ご主人様が用意したロープである。簡単には切れないし千切れない。

 しかも、顔の炎のせいで集中もできていない。


 俺はパワーがロープを切れず苦戦しているところに容赦なく2回目のホールドをかけてパワーの前脚も封じる。

 もう、パワーは火を消すこともできない。

 これでどうだ。


(リーザ、これでパワーは動けない。ご主人様にヒーリングしてくれ。)

 リーザはすぐにご主人様にヒーリングをかけに行ってくれた。


 パワーはなんとかホールドを振りほどこうとするが、四肢を全部絡めとられてはそれもできない。

 それどころか、燃えている顔の火すら消せない。


(ちくしょう。お前ら、騙しやがったな。)

 パワーが吠えるが、もはや負け犬の遠吠えだ。


(お前が最後の提案を蹴るから悪いんだ。こっちは、ぎりぎりまで譲ったのに。)

 俺はパワーに言い放つ。


 パワーは何とかしてホールドから逃れようともがくが、既に動けないように俺が封じている。


(分かった。俺様が悪かった。お願いだ。火を消してくれえ。)

 そして、逃れられないと悟ったのか、ついに、パワーから許しを求める台詞が出てきた。


(炎さえ消せば逃れる目途がついたのか?)

 いや、炎さえ消せば逃れる算段が付いて言ってきたということもパワーの場合は考えておかないと。


(手も足も動かせない俺様が逃げられるわけないじゃねえか。

 お願いだ。そんな事言わずに火を消してくれ。)

 パワーの声がだんだん切実になってくる。

 これは、本当に降参したとみていいかな。


(それじゃあ、ご主人様の僕になると誓え。

 回復技をかけているが、もし、ご主人様にもしものことがあれば、どうなるか分かっているだろうな?)


(誓う。誓うから、火を消して。お願い。)

 ついに、パワーの泣きが入った。


 ちょっと用心しすぎて苛めてしまったか。さすがに可哀そうなので、火は消してやろう。ホールドは解かないけどな。


(じゃあ、火を消してやるから頭を地面につけろ。) 

 パワーはおとなしく言われたとおりにした。

 俺は、ご主人様の荷物から防水用のマントを咥えると、パワーの顔に被せる。

 燃えるための酸素がなくなり、パワーの顔の火が消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ