11パワーとの闘い(4)
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★2ウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ モンスター仲間。(★2イーグル)
ガルガン モンスター仲間。(★1ヤングタイガー)
俺は、パワーの声がした方向へゆっくり進んでいく。
単独で突出しないためだ。
真ん中にご主人様と荷物にとまったリーザ、後ろをガルガンが進んでいく。
パワーの声がした辺りに着くと、パワーの足跡がはっきりと残っていた。
足跡にパワーの匂いはしっかり残っているが、時間が経ってパワーとの距離が開いたからなのか、もう風上からパワーの匂いはしない。
まあいい。
ゆっくりと着実に追い詰めてやる。
俺は、パワーの匂いと足跡を追跡し始めた。
ある程度進むと、パワーの足跡が2つ合流している。
ここを2回通ったのか。
ご主人様の足に合わせてゆっくり追跡したから時間も経っているだろうし。
「ご主人様、ここで足跡が合流しています。」
俺は、発見したことを報告する。
「どちらも奥へ続いているようね。
追跡を続けて、行き先が分かれたところで考えましょう。」
確かに、足跡は2回とも奥に向かっている。
風上は奥だが、パワーの匂いは流れてこない。
接近に気づくよう、前の風の匂いも意識しつつ、追跡を続けよう。
俺は、2回分が重なった足跡の追跡をはじめた。
その十数秒後、突然後ろから「ギャン」という悲鳴が聞こえる。
ガルガンの悲鳴だ。
後ろを振り向くと、ガルガンが血を流して倒れており、その前にパワーが立っている。
パワーが後ろからガルガンを不意打ちしたらしい。
俺は、慌ててガルガンの方へ走るが間に合わない。
パワーは動かないガルガンにとどめの一撃を加える。
「スリープ」
そうはさせまいと、ご主人様が準備していた魔法を開放する。
パワーの意識が一瞬でも飛んだらしく、パワーの一撃はガルガンの奥の地面に当たる。
その隙に俺は風呂敷を外してホールドの精神集中に入る。
パワーはよろよろと起き、俺とご主人様の姿を確認すると、一目散に逃げていく。
俺は逃がさないよう、ホールドを放つが一瞬間に合わず、パワーを逃がしてしまった。
「リーザ、ガルガンにヒーリング。」
ご主人様はリーザに指示を出すと、自分もガルガンにリジェネレーションをかける。
「ガルガン、お願い。助かって。」
ご主人様の悲壮な声が聞こえてきた。
どうして、パワーが後ろから?
足跡は、2回とも前に続いていたはず。
俺は、パワーの2回分重なった足跡を追いかけてみた。
が、さらに10メートルも歩くだけで理由がはっきりと分かった。
足跡は、10メートル先で2回とも切れている。
パワーは普通に10メートル先まで歩いた後、前を向いたまま後ろに歩いて、来た時とはは違う方向へ戻っていったのだ。
これで、俺達には2つの足跡が合流したように見える。
そして、パワーは足跡が合流した後ろで俺たちが来るのを待っていた。
何も知らない俺たちは、2回分の足跡が両方とも風上である前に向かっているため、パワーは前にいると判断して、前に進もうとした。
その結果、俺達はパワーの目の前で後ろを見せることになったのだ。
でも、今回の方法は俺達が1か所に固まっていないと、仕掛ける前にばれてしまうはず。
いや、俺達がバラバラに離れているなら各個撃破するよな。
俺達が1か所に固まって移動してきたからこそ、パワーはこの仕掛けができるようになったんだ。
そう言えば、足跡の合流は前にも一度あった。
パワーの足跡を追いかけて斜面を進んでいた時だ。
あの時、パワーの意図が分からず、俺は言いようのない気持ち悪さを感じた。
だが、今になって思えば、あの時のパワーの行動は、全て今回の奇襲ためだったんだ。
あの時パワーが上から見ていたのも、自分の策略に気づいているかどうか、俺達を試していたんだ。
そして、あの時の俺達の動きから、策略に気づいてないと判断して、今回勝負をかけた。
なんて奴だ。
パワーはとんでもなく狡猾な狩人だった。
俺達全員を相手にしながら、1匹ずつ始末していく算段があったんだ。
ご主人様の魔法が間に合わなければ、ガルガンは確実に殺されていた。
今回はパワーの策に嵌って俺達は後ろを見せたが、同じ手は二度と通用しないぜ。
いや、これからは怪しいし仕掛があれば、全方向警戒してやる。
そうすれば、パワーであっても打つ手がなくなるはずだ。
俺が今回の襲撃について一通りの結論をまとめて、ご主人様のところへ戻ると、ガルガンは意識を取り戻していた。
「ガルガン、大丈夫?」
俺が聞くと、
「何とかね。」
と答えが返ってきた。
よかった。
しかし、背中に一本の大きな傷跡がついてしまっている。
この傷跡はもう消えないだろうな。
俺は、ご主人様にパワーの奇襲の方法について報告した。
「完全にやられましたね。
ごめんなさい。私が追跡を続けようと言わなければこんなことにはならなかったのに。」
ご主人様が自分の判断に責任を感じているようだ。
これはまずい展開だ。フォローしないと。
「ご主人様のせいじゃないです。俺も気づきませんでした。
パワーの方が1枚も2枚も上手だったんですよ。今度は油断しないようにしましょう。
それに、パワーとしてもここでガルガンを倒してこちらの数を減らしている計画だったでしょう。パワーの計算も狂っているはずです。
ご主人様のおかげですよ。」
「ウル、ありがとう。済んだことを言っていても仕方ないわね。
これからのことを考えないと。」
良かった。とりあえず、落ち着いてくれたようだ。
「それにしても、ご主人様。あの時かけたのは眠らせる魔法ですか?」
俺は、ご主人様の魔法についても聞いてみた。
「そうよ。準備に時間がかかるから、1回分だけ発動準備を済ませておいたの。
本当は、パワーに効かずともある程度動きを遅らせられれば、その隙にウルにホールドを決めてもらうつもりだったのだけど。」
「とりあえず、あの魔法でガルガンが助かってよかったです。」
「これからもう一度発動準備をするわ。パワーが相手ですもの。万全の態勢で臨まないと。」
「そうですね。あとで俺のロープもお願いします。こちらも万全にしておきたいですので。」
俺はご主人様のスリープの準備を待ち、万全の態勢でパワーの追跡を始めた。
先ほどのご主人様のスリープの効きであれば、俺のホールドはかなりの確率で決まりそうだ。
しかし、パワーもそれは感じているはず。きっと、何かを仕掛けてくるはずだ。




