ある日の████ 18
サフラン色の栄光のおまけ集、その3。
ある日の████です。
これは魔族側のおまけ回です。
魔族はただ、悪の側にいただけなのか?
その答えがわかるかもしれません。
夢を見た。
遠い昔の夢だ。
自分が生きるために、沢山の人を殺した。
自分が生きるために、毎夜主人の求める姿を演じた。
自分が生きるために、どんな酷いものでも口にして、時折降っては地面に溜まる雨水を飲んでいた。
全部、自分が生きるためだった。
でもいつしか、それは間違いなんじゃないかと思い始めたんだよな。
自分が間違っているのではなく、この世界の在り方が間違っているんじゃないかって。
魔族も人間も、同じように生きているのに。
どうして魔族は人間を下に見て、どうして人間はそれに従うしかないんだろうか?
変えたかった。
変えたくて変えたくて変えたくて、毎日夜空の星に祈った。
どうか世界を変える力をくださいって。
それに伴う犠牲は全て私が負う。
命だって捧げられる。
だから、この世界を変えられるほどの力を。
大きな力をくださいと願った。
ある日の夜も、同じように願っていた。
そしたら突然、人間か魔族かもわからない変な男が現れた。
男は言う。
「君が望むものを与えよう。地の底から天を目指せば、君の願いは叶うだろう。その果てに踏み締めた荊棘が絡み付き、苛み、終にはその命すら呑み込むだろうけれど。全ての苦痛を受け入れるのなら、君の望みは必ず叶う」
意味の分かるような、分からないような言葉を並べた男は、大きな大きな剣を取り出した。
それが鞘に納まると、あんなに大きかった剣は私の体にぴったりと合うような大きさに変わった。
「さあ、その剣を持って天を目指しなさい。今は亡骸と思い出を語らう座に至りなさい」
男の言葉の意味は相変わらず分からない。
しかし、随分前に魔王が死んでから玉座が空席になっていると聞いたことがある。
亡骸と思い出を語らう座が玉座なら。
点を目指すという言葉が上層の魔王城を目指すということなら。
私が魔王になれということだ。
幸い、剣に自信はある。
しかし問題が一つ。
イレディア「私だけ逃げるわけにはいかない。地下牢に捕えられた人間を逃がす方法は?」
男はにこりと微笑んで、僕が逃がしておいてあげようと言った。
なら、あとは牢屋に居ないあの主人のお気に入りだけだ。
イレディア「分かった。私は一仕事片付けてから、お前の言う通り天を目指そう」
男の身分は分からないが、割と警備の厳重なこの館に難なく忍び込んでいて騒ぎにもなっていないあたり、相当な腕の持ち主か種族だ。
それに、正直正体なんてどうでも良かった。
私の願いが叶うなら。
私の望みが叶うなら。
そのためならどんな責苦も苦痛も受け入れると思っていたから。
どんな最期を迎えても構わないと、思っていたから。
ゆっくりと目を開き、ベッドから体を起こした。
そう、なんだってしてやると思っていたんだ。
大切な仲間も、自分さえも、全てを生贄にしてでも。
この世界を、変えたい。
イレディア「……サーシャ、朝の茶を淹れてくれ」
この一杯が、最期の晩餐だ。
決戦前夜(朝)の夢ですね。
この時現れていた謎の男は流石にアドニスではありません。
世界には光と影、陰と陽のバランスを保つ機構が備わっています。
人間界という陽の側が弱まることは、世界にとってバランス崩壊を招くこと。
バランスの崩壊は滅び、つまり死です。
よって世界を管理する機構が、何でもいいからバランスを保てるようにしてこい、と使者を出したわけです。
その使者がこの謎の男。
悪名高い(?)マーリンとかいう預言者です。
このクソッタレ預言者ことマーリンが託した剣の名はジ・エンド。
使用者とその周囲に破滅をもたらす代わりに使用者の1番の願いを叶える魔剣です。
世界の機構云々については続編で語る予定ですので今は置いといて…。
こんな魔剣を手渡したマーリンに中指を立てておきましょうね。
この剣が普通の剣ならイレディア達は死ぬことなく、下手したらサフラニアも滅んでませんから()




