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サフラン色の栄光【おまけ】  作者: 天月 兎
ある日の████
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ある日の████ 16

サフラン色の栄光のおまけ集、その3。

ある日の████です。

これは魔族側のおまけ回です。

魔族はただ、悪の側にいただけなのか?

その答えがわかるかもしれません。

魔界下層、西部のとある館から悲鳴が響いた。

真夜中の誰もが眠りに就いているような時間帯であったため、絶叫にも似た声を聴いた者は殆ど居なかっただろう。

ただ、ある日突然、噂だけが溢れ出した。

生ける屍が夜毎血を求め街を彷徨っている、と。


僕が居たのはその館さ。

古くから死霊魔術について研究をしている、西部では少し大きい家柄だった。

目的は、完全な蘇生術を完成させること。

僕はその館の奴隷だったのさ。

家畜の方が多分マシな生活を送っていられただろうね。

僕の他にも奴隷はたくさん居た。

女の人間より男の人間の方が体力があって扱いやすいからってことで、沢山の少年達が拉致監禁されていたんだよね。

中には好きものも居たらしいけど、僕がその対象になることはなかったよ。

毎日毎日冷たい地下牢に詰め込まれて、出されたかと思えば誰かが殺されるのを見せられる。

そうして中途半端な術の実験台にされては、廃棄処分…食糧にされていたわけだ。物理的にね。

最初はすごく怖かった。

家族と引き離されて、その家族がどうなったかも分からなくて、いつ自分が死ぬかも分からなくて。

そして僕は考えた。

どうしたら皆を助けられるのか。

どうしたら皆で逃げ出せるのか。

ずっと色んな計画を立てていたけど、誰も賛同なんかしてくれなかった。

僕がそういうことを企んでると密告した子が居たけど、僕は言ってやったんだ。

それは主様の目をこちらに向けて、その隙に逃げようとしているだけですよって。

そうしたらその子が連れて行かれて実験台にされた。

そんな風に生き延びているうちに、なんか僕だけ長生きしちゃって、主様に気に入られたのか、死霊術のあれこれをよく聞かされるようになった。

まあ年老いていたし、話し相手が欲しかったのかもね。

何せ、家人すら実験台にするような人だったし。

そうして知識をつけていくうちに、僕は考えた。

あれ?自分の意思で操ることが出来るなら、別に蘇生なんてしなくたっていいじゃないかって。

僕は主様の書斎に忍び込んで沢山の知識を一度に頭に叩き込んだ。

そうしてまた、自分が生き延びるために誰かを犠牲にしようとして、間違って主様を殺しちゃったんだよね。

正確には、書斎に忍び込んだことに腹を立てた主様が、酒瓶で僕の頭を殴ろうとしたところに居合わせた女の子が刺し殺しちゃったんだけど。

彼女はこの館唯一の女の子の奴隷だった。

なんでも、気まぐれで拾ってきた人間の女が産んだ子供らしくてさ。

まあ滅多に顔を合わせることは無かったんだけど。

あ、その子の名前はイレディアっていうんだ。

イレディア「お前、特別此奴に気に入られていたようだな」

まあ、うん、と頷く。

イレディア「死霊術の知識はどれくらいある?」

一応、主様だった魔物が持ってる知識は全てと答えた。

イレディア「なら、死霊術で生活しているように見せかけることも出来るな?数日でいい」

それくらいなら出来るが、あれらは血肉を求めて彷徨うゾンビみたいなものなんだけど…。

イレディア「使用人含めこの館に住んでいた奴らは全員殺してある。お前が死霊術を行使したら、さっさと館を出るぞ」

まさか、こんな風にここを出ることになるとは予想だにしなかったよ。

適当な地図を握って、蘇った死体達から逃げ回りながら、なんとか館を出た。

残されていた子供達のことなんて、考えてる余裕は無かった。

イレディア「やっと、出られた、な。危なかった」

「君が、皆殺しに、して、いなければ、こうも、苦労することは、なかったよ」

ぜえはあと上がった息を整える。

「で、これからどこに行くのさ」

イレディア「魔王城だ。私は玉座を目指す」

は??人間の分際で出来ると思ってるの?

と、思ったんだけど…

イレディア「館内の子供達は全員人間界に送り返しておいた。あの館は死霊…いや、食屍鬼が彷徨うだけの廃墟になっていくだろうな。そんな館の近くで暮らしたくはないだろう?」

なんか一人でも行く気満々だし、僕が忘れていた子供達をちゃっかり人間界に戻してやってるし。

同じ奴隷同士、なんだかんだ気が合いそうだったから、飽きるまではついていくことにしたんだよね。

でも旅の目的の理由くらいは聞かなくちゃと思ってさ。そしたら、なんて言ったと思う?

私はこの魔界の在り方そのものを変える。

だって、僕思った。

絶対飽きないだろうなって。

そして彼女の目指す未来には、きっと僕たちみたいな奴隷なんて存在しない平穏な魔界があるんだと思うと、胸が躍った。

他にもついていく理由は沢山あったんだけど、これが一番だったかな。

イレディア「そういえば、名前は?」

そうか、僕は知ってても彼女は無数にいた男の子のうちの一人でしかないから知らないんだ。

ノクス「僕はノクス。宜しくね、イレディア」

そうして、適当に掴んだ地図と睨めっこしながら、上層を目指す旅が始まったんだよなぁ…。

あ、一部は逃避行そのものだったけどね。

最後の仲間、ノクスの回想です。

元人間どころかイレディアと同郷でした。

生き残るために何でもした、を見事に体現してますね。

逃げるために必死になりながら、生き残るために同じ境遇の奴隷を売って。

ちなみに書斎に忍び込んだのは単にノクスが好奇心で死霊術についてもう少し詳しく知りたいと思ったからです。

そうしたら、偶然館の主人が起きて、偶然脱出を企てたイレディアが主人を殺害し、何故か一緒に脱出することになり…。

そしてまた、好奇心からイレディアについて行くことを決める。

ほかの仲間とはちょっとズレた理由でイレディアについて行ってるんですね。

で、適当に持ち出した地図が周辺地図じゃなくて、迷いに迷った末レイヴと遭遇した、というわけです。

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