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サフラン色の栄光【おまけ】  作者: 天月 兎
ある日の████
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ある日の████ 15

サフラン色の栄光のおまけ集、その3。

ある日の████です。

これは魔族側のおまけ回です。

魔族はただ、悪の側にいただけなのか?

その答えがわかるかもしれません。

荒れ果てた魔界の中で最も荒んでいると言われている魔界の下層。

その最下層から、二人の人間が歩いてきた。

「あー、あー…この地図はどう見れば…」

男の方がいいながら紙切れをくるくる回している隣で、女が首を横に振っている。

「あのなぁ、地図くらい見れるようになってから旅に出ることを決めろよ……ほら貸せ。いいか、この印が北を指してて、私たちが今いるのはここ、元いた場所がここだから………ん?なんか変だな」

二人揃ってまともに地図も読めないらしい。

そういえば、昔はよく道に迷った人間を導いていたっけか。

困ってる奴が居るなら、助けてやらねぇとだよな。話しかけよう。

「よぉ、地図読めねぇのか?」

顔をあげるとそこには、真っ黒な肌に真っ黒な翼、ボロい布切れを被った、よくわからん人型の何かが立っていた。

「いや地図は読めるが、地図と現在地が合わない」

「地図くらい読めるし!僕を馬鹿にするなよな!」

女の方は素直だな…男の方は……なんでこいつ食ってかかってくるんだよ…

半分呆れながら、自分も地図を見ていいかと聞いてみる。

女は快く地図を見せてくれた、が。

「おいこれ、この周辺地図じゃねえぞ。しかも、大分古い…南方の地図だよなこれ」

俺が助言すると二人とも顔を見合わせて、通りでよく分からないわけだと笑っていた。

「お前、詳しいのか?」

女の方が尋ねてきた。

「まあ、ざっと300年はこの付近にいるし、魔界のあちこち行ってたから詳しいっちゃ詳し…」

「あちこち!?」

紫色の瞳をキラキラさせて食いついてくる女にたじろいでしまう。

「まぁ、あちこち、だな?」

「よし、決めた。お前、私たちの案内人になれ」

答えるや否や女が上から目線でものを言ってくる。

なんなら自己紹介までしてきた。

いや確定事項かよ!?

しかも拒否権ねぇのかよ!?

イレディア「私はイレディア、こっちは友達のノクスだ」

案内人になるつもりはなかったが、どこを目指してるのかは気になった。

見た限り二人は人間で、魔界で人間といえば奴隷だ。

その奴隷が自由にほっつき歩いているということは、抜け出してきたに違いない。

「案内人になるかどうかはさておき、行き先はどこなんだよ」

イレディア「空席の玉座だ」

耳を疑った。

堕天して300年余り魔界に居たが、確かに数十年前から魔王の玉座は空席となっている。

「おいおい、お前ら人間だろ!?あの付近は他の奴らも玉座を狙ってとんでもねえ戦い繰り広げてんだぞ!?」

イレディア「関係ないな、私はそこに行かなければいけないんだ。私がそう決めて、私がそうしなくてはならないと判断したからな」

既に魔王気取りじゃねぇか……仕方ない。

か弱い人間を"じゃあ頑張ってね"なんて言って見捨てておくなんて俺には出来ない。

それに、堕天使になってしまった自分でも、また迷える人々を救いたいという神の意を遂行できるなら、これ以上嬉しいことはない。

レイヴ「いいぜ、案内人になってやるよ。俺はレイヴ…」

イレディア「なってやるもなにも、もう案内人だろう」

ノクス「イレディアはこういう奴なんだよ…諦めてね」

そういえば確定事項だった…。

イレディア「で?レイヴ、お前種族なんだ?吸血鬼ってわけじゃないだろ?」

何百年も前の出来事なのに、それを聞かれるといつも胸が痛む。

レイヴ「…堕天使。何も悪いことしてねえのに、なんか堕天させられたただの堕天使だよ」

そう答えると、二人の表情が凍りついた。

イレディア「お前も、迫害を受けたのか」

ノクス「傷つけられた側、なんだな」

まるで自分ごとのように傷ついたような顔をする二人を不思議に思った。

イレディア「レイヴ、私もノクスも人間だ。長くここに生きたお前なら、人間がどういう扱いを受けるのか知っているだろう」

私は、私たちは、そんな魔界を変えたくて玉座を目指しているんだ。

その言葉に心を打たれた。

そうか、少しでも悲しみが減るように。

少しでも争いが無くなるように。

この場所を変えんとして動いているのか。

なんて立派なんだろう。

そんな風に考えていると、俺の心の中には二人を導きたいという気持ちが自然と芽生えていた。

イレディア「なあレイヴ、堕天する前はなんて名前だったんだ?」

レイヴ「え?あ……ラビリエル。迷宮の導き手って意味だ」

そうしたら、イレディアがノクスと顔を見合わせて一つ約束をしてくれた。

玉座まで導いてくれたら、一緒に人間界へ行って、青空の下をあてもなく歩こうと。

イレディア「道がわからなくなっても、ラビリエル、お前がいれば帰れるだろう?」


俺は嬉し涙を堪えて、ただ頷くのが精一杯だった。

レイヴの回想です。

まさかのノクスも元人間だったという、ね。

そして叶わなかったレイヴとの約束……。

実はルーヴェリア達と戦う前、ミュイールのいない所でお前たちには死んでもらうことになるとイレディアは告げていました。

誰1人反対の声をあげなかったんです。

レイヴでさえ、話が違うじゃないかとすら言わなかったんです。

それだけイレディアが仲間を大切にし、仲間から大切にされてきたからこそですね。

理想の世界のために、命まで捧げる覚悟でいたんですね、彼ら魔族は。

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