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サフラン色の栄光【おまけ】  作者: 天月 兎
ある日の████
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52/58

ある日の████ 14

サフラン色の栄光のおまけ集、その3。

ある日の████です。

これは魔族側のおまけ回です。

魔族はただ、悪の側にいただけなのか?

その答えがわかるかもしれません。

魔界中層の半分を占める海の中に栄えた種族が居た。

魚の頭に人間の胴、人魚の尾を持つ水棲の魔族で、種族名はグランレーン。

太古からあったわけではなく、単純にグランガチとセイレーンの間に生まれた種族だった。

ある日、人間と似た頭を持つ子供が生まれた。

今ならば隔世遺伝と分かるが、当時は誰もその言葉を知らない。

子供の親はかつてこの海を荒廃させたとされる天使セラフィムから名を取り、セラフィナと名付けた。

そして奴隷よりも酷い扱いで彼女を虐げた。

父親が言う。一族の恥晒しと。

母親が言う。あんたなんかいらないと。

出ていけ、出ていけ、今すぐ出ていけ。

毎日そう言われて家の外に追い出された。

勿論助けてくれる者なんかいない。

セラフィナはとうとう棲家を離れ、遠く遠く離れた場所へと泳ぎ去った。

どこまで行っても、闇しかない。

一族の頭に揺れていた灯りを恋しく思いながら、少しでも明るいところへと海上を目指した。

海藻を少しずつ食べながら、ひもじさを抱えて。

しかし幼子が一人彷徨うには世界が広すぎた。

朦朧とする意識の中で見つめた空は、まんまるな赤いお月様がきらきらとしていた。

こんな景色を眺めながら死ねるなら、悪くないとさえ思った。

でもそれは叶わなかった。

「ノクス、舟を止めろ」

誰か、女の人の声がする。

「死にかけじゃないか。拾うの?素材にしていい?」

無邪気そうな男の人の声に、女の人が何か言ってる。

「殺してどうすんだよ、流れ的に助けるだろうが」

気の強そうな、少し怖い男の人の声。

でも助けるって…?

セラフィナの意識はそこで途絶えた。


次に目が覚めた時、私は自分がまだ生きていることに驚いた。

小舟の上に横たわって揺れている。

月の位置的に今は朝だろうが、何があったのだろう。

いつだったか岩肌で切ってしまった腕には包帯が巻かれていた。

「起きたか。よしよし」

人間?の女の人が私を見てうんうんと頷いている。

セラフィナ「あなたは?」

イレディア「私か?イレディアだ。あっちの羽のついた生意気なのがレイヴ、そこでうたた寝してる呑気な奴はノクスだ」

自己紹介なんてされたのは初めてだ。

戸惑いながら自分も名乗る。

セラフィナ「あ、と…。グランレーンのセラフィナ…です」

イレディアは首を傾げた。

グランレーンの住処はここよりもっともっと遠い。セラフィナを拾った場所なんて更に遥か彼方だ。

イレディア「妙だな…何かに襲われて逃げてきたのか?」

セラフィナは声を震わせながらことの経緯を話し始めた。

聞き終える頃にはイレディア達の顔はグールのような形相になっていた。

イレディア「ノクス、まずはここからやろう」

ノクス「大賛成だね。海魔の屍人化してみたかったし、いい材料になりそうだ」

レイヴ「ま、弱きを救うは神の意志だしな」

困惑する私を他所に、3人は魔術を使って舟を走らせた。

住処が近づくごとに浴びせられた罵声が頭の中を木霊する。

そんな私を、イレディアは抱きしめてくれた。

イレディア「大丈夫。お前を虐げる奴は誰一人として居なくなる。私達がお前を守ってやるから、何も心配することはない」

優しく落ち着いた声に、心が温かくなって、嬉しくて、涙が滲んだ。

それからものの数十分だ。

海上をビチビチと跳ね回る同族達の姿を見たのは。

どんな魔術か知らないが、海中に逃げることができないようにされたうえ、火で炙られてる。

見知った顔もいくつかあるが、親の姿はどこにもなかった。

イレディア「大丈夫か?見ているのが辛いなら…」

セラフィナ「大丈夫です…」

言いながらも本当は心苦しかった。

でもきっと誰かは生き残っていて、都ではないどこかで暮らしているだろうから。

私の居場所はそこにはないのなら。

セラフィナ「あの…私……ついていっても、いいですか」

イレディアは不思議そうな顔をする。

イレディア「元よりそのつもりだが?」

そっか。良かった。

私はほっとして空を見上げた。

まんまるなお月様がきらきらとしている。

こんな綺麗な景色を眺めながら、幸せに生きていけるなら、それはとても嬉しい。

本編で記憶を改竄された挙句バラバラ殺人事件の如く切り裂かれるという拷問を受けた末にお亡くなりになったセラフィナさんです。

この世界の親はどいつもこいつもカスですね。

我が子を愛するというごく当たり前のことが出来ないようです。

セラフィナの棲家だった都のグランレーンは絶滅しました。

そしてセラフィナの思わく通りにはいかず、全てのゲランレーンがこの時死に絶えています。

自業自得ですね。


ちなみにこの時はまだイレディア、ノクス、レイヴの3人で行動していました。

無邪気なのがノクス、もう片方の男がレイヴです。

随分遡ってきましたね。

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