ある日の████ 12
サフラン色の栄光のおまけ集、その3。
ある日の████です。
これは魔族側のおまけ回です。
魔族はただ、悪の側にいただけなのか?
その答えがわかるかもしれません。
魔界上層と中層を隔てている山岳は、龍族の棲家になっていた。
私は特に高貴な身分でもなかったが、それ故か特異な体で生まれた私は両親に利用された。
龍族の鱗は大変に貴重な素材となる。
魔界でも人間界でも、重宝される代物だ。
そして私の鱗は、他の龍族とは違い一枚一枚が七色の輝きを放つ特殊なものだった。
そして再生能力も他の者達とは別次元に高かった。
だから両親は私の鱗を剥いでは売り、剥いでは売り、魔界でも名の知れた商人になっていた。
私はただの商売道具を製造する機械でしかなく、そのために生かされているだけ。
でも、両親の喜ぶ様を見て、それでいいと思っていた。
それはある種の諦めとも知らずに。
ある日、数匹の魔物を連れた人間がやってきた。中層から上層に行くらしく、宿を求めていたらしい。
金さえ払えばたとえ人間だろうが泊めてやると、両親は彼女らを迎え入れた。
その晩、私のいる部屋の扉が開いた。
また鱗を剥がれるのかと思えば…私の閉じ込められていた檻が開かれる。
「中層の闇市でお前の親の悪事は聞いている。大事な我が子の苦痛を無視して搾取し、利用し、成り上がる下衆を見捨ててはおけない。悪いが、今晩中にお前の親には死んでもらった」
殺す、ではなく死んでもらった。
過去形であることについ笑ってしまった。
もう終わっているじゃないか、と。
「なら私の生きる意味はもうなくなったかな」
その為だけに生かされてきたんだ。
当然、それがなくなれば死ぬしかない。
「そう思い込ませられただけだ。お前はもう自由だ。どこにだって飛んでいける」
私の目の前で話す人間の目は、今まで見てきたどんな魔族のものよりも優さで満ちていた。
「もしお前が良ければ、だが……魔王城の上空を飛んでみないか。それがお前の生きる理由になれるなら」
ああ、この人は。
私は一瞬でその優しさに心を奪われた。
あくまで私の意思を尊重してくれるその優しさに。
初めて、自分に欲というものが生まれた。
行きたい、行ってみたい、違う世界を見てみたい、そんな思いで胸が満たされると、人間の手を頭で考えるより先に体が動いて掴んでいた。
「決まりだな」
まだ幼さの残る手を掴み、ふふ、と笑う人間。
「私はセレシュバーン・プルウィウス・アルクス。あなたは?」
「私か?私はイレディアだ」
はい。シルヴェーラが言っていた龍はセレシュバーンのことでした。
親に虐げられ、親のために生きることが当たり前だと思い込まされていたセレシュバーンは、目の前の親を殺した存在に怒るでも、親の死を悲しむでもなく、ただ自分の生きる理由が無くなったのだと言った。
凄まじく歪められてますね、認知が。
この檻からセレシュバーンを連れ出してくれたイレディアにありがとうと言いたいですね。




