ある日の████ 10
サフラン色の栄光のおまけ集、その3。
ある日の████です。
これは魔族側のおまけ回です。
魔族はただ、悪の側にいただけなのか?
その答えがわかるかもしれません。
幼い頃から誰も俺に見向きもしなかった。
母に抱きしめられた記憶も、父と遊んだ記憶も無い。
魔界上層の魔獣の頂点に立っていたのは、黒狼族と呼ばれる魔狼の一族で、俺はその長の息子として生まれたはずだった。
漆黒の艶やかな毛並み、だが、身体は狼とは掛け離れた姿をしていた。
獅子のような体に、漆黒の翼を持ち、尾は蛇…まるでお伽話に出てくるキメラのような姿をしていたのだ。
かなり後に知ったことだが、魔力保有量が桁違いであったために起きてしまった障害のようなものだったらしい。
だがそれを知らなかった族の皆は、純血ではないと大騒ぎした末、俺が生まれてすぐ母を抹殺したそうだ。
食事を与えられることもなく、縄張りの片隅で目の前を通り過ぎる虫を食べて生きていた。
成獣になる頃には、黒狼族の長だった父が亡くなったことをきっかけに、魔獣同士の権力争いが始まった。
続々と押し寄せる雑多な魔獣を蹴散らして、仲間とも呼べない族を守るために戦った。
自分が変わり者だったから放棄されただけで一族に非はないと思っていたから。
そしてある時、出会ったんだ。
奴隷だの人魚だの植魔だのを引き連れて歩いている変わった奴らに。
一族の皆は得体の知れない奴らに攻撃的だったが、決して俺の前に出ることはない。
いつものことだ。
「あんな奴らが魔獣の頂点に居るというだけで反吐が出るな」
先頭を歩いていた女が一言呟いた後、俺に顔を向ける。
「あんなもの、お前が盾になってまで守る価値あるのか?」
…そこで、俺の中で何かが切れたんだ。
いつも盾になり傷つくの俺で、あいつらは隠れてるだけで、何もしない。
傷の手当てすらしてくれない。
理由は簡単、長ではないから。
都合の良い時だけ使って、都合の悪い時は突き放す。答えは明白だった。
「ない」
俺が答えると、そいつは他の連中に目配せをした。振り向いた時には奴らは既に死骸となっていた。
「お前、どうせ住むところもないんだろう?」
女の言葉に頷くと、奴は手を差し出してきた。
「私と共に、魔界の頂点に立ってみないか?」
何を言っているのか意味がわからなかったが、
どうせ帰る場所も行くあてもない。
どうしてか、何の疑問も抱かずその手を掴んだ。
奴は満足げに笑っていた。
「私はイレディア。お前は?」
「ザルヴォ」
こうして、俺は奴の仲間の一員になった。
ここから暫く七将の回想が続きます。
イレディアがミュイールと会う前、魔王になる前の物語の一端です。
どうやって仲間になっていったのか、本編で死を迎えた順番に公開していきます。




