ある日の騎士団(談)2
サフラン色の栄光のおまけ集、その2。
ある日の騎士団(談)です。
騎士団やサフラニア全体の些細な(?)出来事が
垣間見えるおまけです。
時系列順にはなっていないので、昔のルーヴェリアのヤラカシなんかも見れたりします(笑)
私が幼かった頃は、両親を殺した魔族への怨みや憎しみで胸がいっぱいになっていました。
妹を守りたくて、村の人々を守りたくて、ただひたすら魔族を殺した。
小さなものばかりでしたがな。
やがて、怪物と呼ばれる女が騎士団に所属しているという噂を聞きました。
貴女が村に来た時、一目で分かった。
羨望の眼差しを向けられる筈の騎士団なのに、誰一人貴女にだけは騎士すらも近寄っておりませんでしたから。
あの頃は私も血気盛んで、騎士団に入れば思う存分魔族を殺せる、強くなれると、軽い考えで貴女に勝負を挑み……意外にも条件を達成してしまったのですな。
それが、後に妹まで巻き込むことになるとは知らずに。
実はずっと、ずっと後悔しておりました。
妹が剣を習いたいと言ったあの日から。
騎士団に入ったことを。
村を守れなかったこと、妹が騎士団に入り命を失ったこと、全て私の責任だと思っておりました。
ですが貴女の背がそれを否定してくれた。
死ぬためではなく、生きるために戦えと仰った貴女の背中が何よりも尊くて。
生きるためには戦う道を選ぶしかなかったのだと自分を許せるようになったのです。
そして私は貴女の背を支えたいと思った。
不老不死の体を持つ貴女は他の誰よりも重たいものを背負わされていたからです。
騎士団のみならず、国の未来まで、全てを背負った。
それと、小さくて大きな約束を交わしましたからな。
停戦の日、慰霊碑の前で貴女を見た。
あの日から、いえ、それよりもっと昔から、私の心は貴女への愛情で溢れておりました。
もしかしたら、正気に戻れと貴女に殴られた時からかもしれませんな。
はっはっは。
これはクレストの独白です。
魔族との戦いが停戦で終わる前から騎士団にいたクレストは、長いことルーヴェリアに付き従ってきた老騎士でした。
ルーヴェリアにこれでもかという程鍛えられたお陰か、60を過ぎても元気にモーニングスターを振り回すとんでもおじいちゃんでした。
彼の独白にある通り、停戦前の戦いでは彼の妹も騎士団に入っています。
が、先立たれてしまったことからずっとそのことを悔いていたんですね。
自分が騎士団に入ったから、妹もついてきて、そのせいで妹が死んだと思っていたんです。
そして停戦が決定したその日の夜、サフラニアの中央広場に設けられた慰霊碑に花を添えているルーヴェリアの姿を見つけた。
彼女は、散っていった仲間たちに守れなかったことを懺悔しながら泣き崩れていたんです。
それはクレストが初めて見たルーヴェリアの弱い姿。
でも停戦まで持っていけたのは間違いなくルーヴェリアが魔族に与えた大打撃のお陰。
傍から見れば、仲間を失ったことを嘆くことはあれど懺悔までする必要は無いんです。
そこでクレストは気がついた。
自分と同じような後悔の傷を抱えても、きっとこの時間が過ぎれば彼女はいつも通りの怪物と呼ばれる騎士に戻る。
その背を支えられるのは、きっと戦いを知っている自分しか居ない。
そう思ったクレストは、生涯彼女を支え続けることを誓ったんですね。
独白にある愛情とは、恋愛ではなく敬愛。
敬い、支え、信じ、サフラニアの命運をルーヴェリアに託したんですよ、彼は…。




