ある日の騎士団 15
サフラン色の栄光のおまけ集、その2。
ある日の騎士団(談)です。
騎士団やサフラニア全体の些細な(?)出来事が
垣間見えるおまけです。
時系列順にはなっていないので、昔のルーヴェリアのヤラカシなんかも見れたりします(笑)
今から約40年ほど前。サフラニアの北方、帝国側にて張られていた中央防衛線が突破された。
死にかけたような途切れ途切れの声だけが魔術を通して本国に伝えられる。
敵は中型の魔獣が500、屍人が6000、ワイバーン300。
防衛線を抜けてこちら側へ進軍中とのことだった。
正しく死の嵐と呼ぶべきその大群の前に立ちはだかったのは、年端も行かぬ少女がたった一人だけ。
魔族は訝しげに足を止めたが、小馬鹿にした様子で蹂躙してやろうと足を進めてくる。
ルーヴェリアは剣を抜いた。炎を纏った剣は、その炎を焔へと変化させ、色味も赤から青へと転じていく。
ああ、屍人の数が多いと思えば、あれは防衛線で戦っていた我が国の兵士か。
死者の冒涜、彼らがどんな思いで散っていったことだろう。
ああ許せない。許さない。許せるものか。
これは奴らへの報復であり、彼らへの手向だ。死して尚、かつての仲間を屠る必要などない。
情けも、容赦も、遠慮も、何も必要ない。
ただ、殺す。消し去る。
蹂躙には蹂躙を、哀れな屍人には安息を。
彼女の一振りは千、二千の単位で敵を葬っていく。
魔獣の悲鳴なぞ耳にも入らないが、視界の邪魔ではあるので首を落として死骸の上に立つ。
ワイバーンによる火球の一斉放射が為されたが、彼女が張り巡らせた防壁がそれらを全てかき消して行く。
違和感を覚えたのか撤退を始める魔族は、上空から降り注ぐ幾万もの光の矢に貫かれ息絶えて行く。
これだけであらかた片付いてしまうほど、彼女は強くなってしまった。
残る屍人が、サフラニアの鎧を錆びつかせて彼女の元へ走ってくる。
まるで、殺してくれと懇願するように。
ルーヴェリアは屍人の剣で貫かれながら、彼をそっと抱きしめた。
──お辛い思いをされましたね、どうかもうお休みください。
自分ごと彼を燃やす。
不死の自分には何の効果もない。
腹部を刺し貫かれても痛みは感じない。
が、屍人は苦しみに喘ぎ暴れ出す。
──大丈夫、それももうすぐ終わります。
やがてだらりと屍人の腕は垂れ下がり、その体は塵となって影に流されていく。
この地に残すものはもう何もない。
彼女は食料調達のため魔獣の死骸をいくつか回収し、後は全て燃やし尽くした。
こうやって、各戦線を押し返し魔族や元兵士達を葬っていったのだった。
停戦になる前の戦いですね。
ノクスが死霊術を使って、魔物に殺された兵士達を従え、他の軍に合流させて数で押そうとした時です。
ルーヴェリアは、かつての仲間を他の人間に殺させることを特に嫌ってたんですよ。
だって嫌じゃないですか、昨日死んだ仲間が襲ってきて、それをまた殺さないといけないなんて。
兵士の人数も多くはなく、皆顔馴染みなわけですし。
だから、その役目をできる限り自分が負うことにしてたんです。
これよりもっと前から、ルーヴェリアは死神だの怪物だの化け物だの言われてたわけですが、なにぶん口数の少ない不器用な女の子ですから。
あなた達の心も守りたい、と言えればまだ違ったのでしょうが……
悪い噂は留まるところを知らず、どんどん広がっていき、兵士ただでさえ救われているはずなのに彼女の存在を忌み嫌ってましたね。




