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魔王軍四天王襲来

女性もので身を固めた翼とマドリーがTS漫画ファンであるミーシャのお家を訪問した。

 ミーシャちゃんは宿屋の前で洗濯物を干していた。


「え? ホント? ホントにマドリーたんなのぉーーー!? あーっ、目が金色、ホントにマドリーたんだーーー!」


 十代半ばに見えるミーシャちゃんの声はやたらデカかった。


「むほほ、驚いたなり? 実はそれがし……」


 TSした経緯を話すマドリーを微笑ましく見てたら碧が小声で話しかけて来た。


『で~、マドリーちゃんはどんな約束して仲間になるのよ~?』

「それはね……」


 そこへミーシャちゃんが挨拶してきた。


「初めましてーーー! この宿の看板娘、ミーシャでーーーっす!」

「こちらこそ初めまして、翼です。よろしくね」

『あたしは碧っていうの~、よろしくね~』


 碧と一緒に挨拶する。


「お嬢様、私は片付けがありますので」

「わかったわ、よろしくね」


 一緒に洗濯物を干していた男の子が宿へ歩きだした。

 あの年で働いてるんだ、ってミーシャちゃんがじーっとTSガン見てんだけど。


「そのガンでマドリーたんをTSしたの?」

「え? うん、そうだよ」

「翼様、あの……」


 思い詰めた目でこっち見るけど何?

 こんなのシナリオにないんだけど。


「TSガンで――」 


 そこへ何かが崩れるような凄い音がした。


『びっくりした~! 何今の音!』


 そんな碧と一緒に音の方へ顔を向けると数人の村人が必死の形相で走ってきた。


「逃げろ! 逃げろ!」

「バケモノが来たぞー!」


 連れ違いざまそう叫ぶ。


『バケモノ~!? わたしたちも逃げなきゃ~!』

「待ってよ、これもマドリーが仲間になるイベントなんだけど」


 ドンッ! という打ち上げ花火のような音。


『ね、ね~翼~、この音って~……』

「ザルゥスの足音だな」


 音が鳴るたび、足の裏に響く振動が大きくなる。


『ザル……え、何?』

「ザルゥス」

『そのザル何とかって強いの~?』

「強いも何も魔王軍四天王のひとり」

『四天王~!? 何でそんなのがこのド田舎村に来るのよ~!』

「それは――」


 民家の倍以上ある教会の裏で足音が止まった。

 そして排水口のゴボゴボ、恐竜のグルル、が混じった唸り声をあげて教会の陰からぬっとザルゥスが現れた。


『ヒィ~ッ! 何あのグロいの~!』

「あれがドラゴンゾンビのザルゥスだ」

「ぎゃああーーっ、マドリーたーーん!」


 怯えるミーシャちゃんを守るようマドリーが両手を広げてザルゥスに向き合う。

 かっこいいよ、マドリー! とか思ってる場合じゃない。

 あいつのポイズンブレス食らったら即死。

 という訳で俺もマドリーの後ろにそそくさと隠れる。


「俺様は魔王軍四天王の一角、ザルゥス」

『ひぃ~、ゾンビなのに喋ったわよ~!』

「喋ってるのは魔王配下のゴースト系モンスター、あの死骸の中から操ってんだよ」


 しかしくっさ! カラスに漁られたゴミ捨て場の10倍くっさ!

 こんなの部屋に入ってきて魔王平気なの? 鼻の穴詰まってんじゃないの。


「四天王がひとりの俺様を見て逃げないとは、お前らなかなか見どころあるな。というか……」


 え、なに?


「俺様、臭くないよな?」


 一応気にしてんだ、っていうか何俺の作ったセリフと違うこと言ってんの?

 これも俺と碧をこの世界に送り込んだヤツの仕業?


「むほ? くんくんなり……それ程臭くないなりよ」


 えー! 大丈夫かマドリー、鼻の穴詰まってんじゃないの!?

 って、ドラゴン族同士の争いで凄惨な臭いに慣れてるからそんなこと言えるのかな。


「ふむ、人間のガキにしては見所があるじゃないか。どれ褒美だ、俺様の肉体美を見るがいい」


 角と尻尾生えてんのに人間と間違えてる、まあゾンビだから視力悪いのかな。

 って色んなマッスルポーズ決め出した。

 ちょっ、動くたびに腐った肉汁飛んできて腐敗臭凄いんだけど!

 ヴええっ、吐きそうになってきた。

 ってミーシャちゃんも吐きそうになってる、頼むから止めて!


「ちょ、ちょっといいなり? ま、魔王軍がこの村に何の用なり?」


 さすがマドリー、シナリオ通りのセリフを言ってくれた! 自由すぎるザルゥスとは大違いだ。


「おっと、すっかり忘れていた」


 忘れるなよ! 


「くっくっく、見どころのあるお前らだから特別に教えてやろう。その前にひとつ聞く」

「な、何なり?」

「俺様、臭くないよな?」


 それもういいから。

 

「大して臭くないなりよ」

「おほっ、そうか! そうかそうか、くっくっく!」

 

 喜ぶほど気にしてたのね。


「よし、教えてやろう。俺様がこんなド田舎にやって来た理由はな……」


 村に現れる金色のドラゴンを仲間にせよ、歯向かうなら始末せよ、という魔王様の命令でこの村に来た。

 って言うはずなんだけど、こいつさっきから自由過ぎるからな。


「この村はTSとかいう文化が盛んらしいな、魔王様はそれに大層お怒りだ。そこでこの村を消滅させるよう俺様に命令されたのだ」


 魔王がTSに怒ってるとか、またも全然違うセリフ!

 これも俺と碧をこの世界に放り込んだヤツ仕業だな。

 めっちゃ腹立つ! 人のゲーム勝手に変えちゃって!


「こ、この村を消滅? そ、そんなの許さないんだからーーーー!」


 ザルゥスのせいで若干セリフが変わってしまったが、シナリオ通りミーシャちゃんが叫んでくれたぞ。


「許さないだと? ほう、ならこの俺様を止めてみろ。TSとかいうのと一緒に消滅されたくなかったらこの俺様を止めて見ろ!」

「あなたーーーー! その口ぶりだとTSのこと知らないでしょー?」


 ちょっ、ミーシャちゃん!? 


「人間のガキがっ! そんなもの知るか!」

「消滅させるのならTSを知ってからにしてよーー! この世で最も尊いんだからーー!」


 何この製作者置き去り展開!


「マドリーたーーーん!」

「は、はいなり」

「TS漫画をあの人に見せてギャフンといわせてーー!」

「わかったなり」


 マドリーが両手を広げるとそこに原稿が現れた。


「予備のコピー原稿なりよ」


 指先で弾くと、コピー原稿が畳位の大きさになってザルゥスの前に飛んで行った。


「ふん、まあいい。魔王様への報告も兼ねて付き合ってやる」


 二本の鉤爪がグチュっと原稿を掴む。


「ほう、この絵、なかなか上手いではないか」


 ドラゴンゾンビが漫画の編集みたいなこと言ったよ。 

バクマン展開でこのまま週刊マオウジャンプにデビュー、次回「週刊連載は血を吐く」に続く。

ではなく、次回「ゾンビにTSビームは効くのか」に続く。

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