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魔術師団所属、5歳。超有能な家庭教師が退場させてくれない。  作者: 氷雨そら


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2/5

誕生会とダンス


 ――さて、どうしたのもか。


 私は困惑を隠せずにいた。


「お手をどうぞ」

「……」


 なぜかアランが、私の誕生会に参加することになった。

 やり直し前、彼はずっと私のそばにいたけれど、誕生会やパーティーに参加することはなかったはずだ。

 彼はいつもどこからか現れて、私の授業が終わると消えていた。


 ましてや、今日この日、私と彼はまだ出会っていないはずだ。

 それなのに、ドレスアップした私の前に、正装したアランがいる。


「どうしてあなたが?」

「――閣下に頼まれましたので」

「閣下?」

「失礼、大佐殿に」


 閣下という敬称は、大佐につくものではないだろう。

 亡くなる直前にはお父さまは中将まで昇進していたが……。


「私……」


 これからどう生きていくか、まだ迷っている。


「五歳の誕生日に、そんな顔は似合いません」

「あなたって、そんなことを言うタイプなのね」

「……」


 引き寄せられた。アランと私は、現状では身長差があるから、兄に引率されているようにしか見えないだろう。

 第二王子殿下の婚約者ではあったけれど、こんなふうにエスコートしてもらったことはない。


(年下の幼児の世話を頼まれただけ――)


 けれど私は、今のアランよりも精神年齢は年上なのだ。

 それに彼が王国一とも言える美貌を隠していることをもう知っている。


「少しかがんでくれる?」

「……?」


 アランが私に顔を近づけた。

 私はおもむろにアランの前髪を掻き上げた。


「……っ!」


 その瞳は、やはり見たことがない紫色をしていた。

 やはり、やり直し前、最期に見たときと同じで麗しい。

 けれど私はすぐに後悔した。彼は頬を赤くして、すぐに耳まで真っ赤になってしまったのだ。


「ごめんなさい。見せたくなかった?」

「見せたくないと言うよりも――気味が悪いでしょう?」

「え? どうして……?」


 こんなにきれいなのに。と私は首をかしげた。


「紫色の瞳を持つ人間なんて、俺のほかにはいません」

「そうね、稀少よね」

「……あなたは」


 アランがため息をついた。

 そして、すぐに意地悪げに笑った。


「実は、大佐殿に頼まれているんです」

「子守を?」

「違いますよ。この機会にダンスの訓練をしてほしいと」

「私……ダンスは」


 ダンスの練習など、これ以上必要ない。

 第二王子の婚約者として、やり直し前に散々訓練したのだから。

 やり直し前と同じ出来事が起こるなら、もうすぐ私は第二王子の婚約者候補に選ばれる。


 ――でも今回は、婚約したくない。


 手を引かれたまま誕生会の会場に参加する。

 使用人たちはあらかじめ聞いていたのだろう。誰も驚いた表情を浮かべてはいなかった。


 お母様は幼い頃に亡くなったし、私にはきょうだいはいない。

 お父さまが参加できなければ、家族すら参加しない誕生会のはずだった。


「今夜はご一緒させてください」

「――そうね、今夜だけ」

「可愛いですね」

「五歳だもの」


 ロマンチックな展開を予想していたのに――。

 予想外に、彼のダンスの指導は厳しかった。


「どうしてこんなに踊るのっ!?」

「――あなたと踊りたかったから」

「……え? 今なんて……」


 ターンの最中にアランが何か言ったけれど聞き取れなかった。


「なんでもありません」

「きゃ……リフト!?」


 5歳の身体は、まだ思うように動かない。

 私はハイスピードなダンスを三曲連続で踊る羽目になるのだった。


 

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