第99話 悪魔族の矜持
僕はセラフィナと別れ、都の警備員に思いっきり頭を下げた後で、僕らは連れ立って帰って行った。
「だからね……あまり喧嘩しない方が良いと思うの」
「しかし……主殿を侮辱されては侍の矜持に関わる故」
「以下同文だ。レンは私にとって非常に大切な存在だ」
ネコマールとマリアにそう忠誠を誓われると何というか嫌な感じはしないけどさ。
でも僕はただ平和に仲良く暮らしたいだけなんだよ。
先ほど出会った聖女セラフィナ。見た目は良く聞いた話でも孤児救済を嘆願したり、孤児院を運営していたり活動していて良い人だと思うんだけど、その腹の中に何か隠しているようで恐ろしくてたまらない。大体彼女を批判したところでこちらが狂信者たちに逆に攻撃されかねない。
そう思いながら僕は進んでいく。他のメンバーも反応する。
「まっウチもシルフィもレンちゃんも人間だけどさ。今の帝都であの手の差別は無理があると思うな」
「同意。いくら何でも時代錯誤が過ぎる」
「そうよ。大体貴族層をとっても半数くらいは異種族じゃない。公爵にだっている訳だし」
貴重な人間側であるサラとシルフィとフィオナはそう言って頷く。
「まぁ仮にマスターがやられればこの悪魔の羽が開き、連中を恐怖に陥れるでしょうが」
「そもそもルドルフってそもそも悪魔族だったんだ。話の成り行きで初めて知った」
「言ってませんでしたっけ。俺は崇高な悪魔族の一員ですよ」
ルドルフはそう宣言すると背中から黒い羽根を出した。やはり悪魔と言う感じがする。
「あの、手荒な真似はダメだからね!」
一応礼儀は弁えていそうだが念のためルドルフに釘を刺しておく。
「無論です。悪魔は主君の言いつけは守りますから」
そのまま宙返りしようとすると、突然アーロンが掴んで抑える。
「いたっ何をする!」
「落ち着け。今向こうを見ろ悪魔野郎」
そこに視線を送ると路地から槍が見えている。
当然街に詰めている衛兵やギルドのメンバーの持ち物ではない。
「調子に乗って飛んでみろ。あれでグサリだよ」
「ふっ調子に乗って忘れていましたよ。セレーネ教では悪魔は族滅対象でしたか」
ルドルフは恨めしそうにそこに視線を送る。
僕はため息をつく。
種族排斥色の強いセレーネ教ではあるが、特に悪魔族への当たりは強いらしい。
狡猾で人間を堕落させるもの。神の庇護の器から追放されたもの。
そのように教えられているらしく悪魔への族滅思想が強いのだ。
そのせいで教徒による襲撃が行われており、悪魔族はひっそりと暮らしているとか。本来こんな事違法でしかなく規制対象になってしかるべきなのだが、何とも大貴族がバックについているらしく中々追いつかないのが現状だという。
まさかルドルフが隠していたとは。
「そうなんですよ。だから身分と種族を隠してたんです」
「そ、そんな境遇だから闇街でお金を借りるしか無かったんだね。ごめん気づけなくて」
「あ、そっちはただツケが度を越し過ぎて出禁なだけです」
「心配して損した!」
ルドルフも楽しそうでよかったぁ。僕たちは笑って帰って行った。
そうその時僕は知らなかった。あの時のルドルフの様子を見られていてそれが後に帝都を揺るがす大事件に発展することを……そしてそれは僕に大きな影を落とすことになった。




