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剣も魔法も適性ゼロの史上最弱のギルドマスターは平和な日々を過ごしたい~なおそれ以外のステータスはカンスト&過保護な仲間たちに溺愛されているものとする  作者: UMA未確認党
第10章 邪教団編

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第96話 老獪な男

 帝都の貴族領域にある教会で商人が走っている。


「旦那大変ですぜ。大変ですぜ!」


 扉を勢いよく蹴り開けて商人は中に入る。


 そこにはある男が座っていた。見た目は礼服を着用しており司祭の中でも社会的なステータスが高いことがうかがえる。




「何だ騒がしいな」


 喧騒を意図していないのか優雅に葉巻を楽しんでいる。


「ウーラ商会が一斉検挙を受けて取り押さえられました」


「何と!ブツは……」


「全て差し押さえられたとのことです」


「フン。帝国政府もこういう時ばかりは動きが早い。だから反対したのだ。帝都の中でも特に神聖な領域であんなものを売ることを」


 男はため息をつく。


「それで?どこが関わっている」


「公式には発表されていませんが、噂によればケルベロスの手口とのことです」


「ケルベロスか……確かウォレン卿を破った少年マスターの率いる所だったか」

 葉巻の2本目を吸いながら思案にふける。


「新参貴族とはいえいくつかの貴族と関係があって、ヴァルグレイ家の令嬢が特にお気に入りと聞いたが……」


 政治にどのくらい興味があるのだろうか。


 少なくとも若手を中心に帝都に新たな勢力を築きつつあることは事実だ。社交界にいる信者から得ている情報からして最低限パーティーには出ているが、特に政権を取ろうとは考えていないようだ。


「まぁまだ勢力としては弱いからな。そこまで気をかける必要はないだろう」


「しかしまだ探りを入れてくる可能性はあります。何ともあのマーリンのいる店に入ったとの情報も」


「気にしなくていい。別にあの勢力とは利害が一致しているから手を組んでいただけでその商売に本教会は一切関わっていないのは事実だからな」

 男は背もたれに寄りかかる。


「もしものことがあったらこっちの宗教性を前面に出せば大人しく引き下がるだろう」


 上を向いた時の顔は司祭とは思えない程に歪んでいた。


 しかしの表情はすぐに戻る。


「いやそうはいかない」


 どこかから別の声が聞こえる。


 どこを見ても誰もいない。それもそのはずここで話しているのは机の上に置いてある石なのだから。


「な、何でございましょうか」


 男は急に畏まった。


「ギルドマスターレン。あやつはきっと厄介な存在となる」


「何故そうお思いに」


 司祭が尋ねると一言だけ……


「何となくだ」


「何となく……」


「この手の時、ワシの勘は外れたことは無い。門での防衛戦線の時に姿を一方的に視認したが……あの姿かたちまさにあの男の面影があった」


「あの男と言いますと、まさか……私はあの時は下級司祭でしたので拝謁したことはありませんが」


「拝謁か……貴様にとってはそうなのかもしれん。だがあの男は種族や勢力を問わず人たらしだった。まるで今の奴のようにな」


 老獪な声はまた響く。


「最近はカナタの辺りも怪しくなってきている。あの二人が手を組めば……」


 そして一言いいきった。


「若き芽は摘まねばなるまいか」


 司祭も商人も無言だった。

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