第93話 取引
「アンタ何言ってんだ。コイツの鎖を解くことなんてできる訳無いだろ」
イーロンが思い切って止めるが僕は進んでいった。
「何か考えでもあるのか?」
マリアがそう尋ね、僕は首を小さく縦に振る。
「おいおい何だお前解いてくれんのか?ありがてぇ話だな」
グラントはそう高笑いする。
「遂にアンタも落ちたのか」
そう言われながら僕は錠前に手だけ触れる。
「解く前に聞きたいことがある」
「何だ?」
「例の薬を手に入れた方法を教えてくれ」
グラントは大笑いする。
「ハハハ!それはこの鎖を外してからだ。今のままじゃ鎖を触っただけですぐ離されちまう可能性もあるからな」
流石用心深い。
「でも外されないと苦しいんだろ?」
「当たり前だな……」
僕はそれを聞いて鎖の錠を解いた。
「ちょアンタ!」
後ろで止める声も聞かずに巻き付いている鎖をゆっくり解く。
「それで?教えてよ」
グラントは僕の行動をここまで予測できなかったらしい。
「あ、アンタホントに外してくれるのか?」
「うんとりあえずこれだけ外すよ」
「バカだなぁ!アンタはとんでもないバカだ。とっとと脱走しちまうか」
そう物騒なことを言い出す、後ろの看守の目線が痛い。
「脱走する前に一つ。約束のことを教えてよ」
「は?まぁいい。俺は久々に気分が良いからな!ここまで機嫌が良いのは捕まる前以来だぜ!」
グラントは口を開いて説明を始めた。
「俺は帝都の外の出なんだ。まぁ思想に関しちゃ言うまでもないわな。アンタらの世界を破壊することを目的としている。俺としては楽しかったぜ?」
「それよりも教えて欲しいんだけど」
「あぁあれか。あれはな俺に売りつけてきやがった商人がいるんだよ」
商人?まさかこんな劇物を堂々と扱える商人がいる訳無いから闇商人かな?
「それでその名前を教えろ」
イーロンが近づいてまたしゃがみ込む。
「名前?俺は知らないな。場所については知ってるぜ」
「じゃあ場所についてだけでもいいから!」
「それにはもう一度鎖を解いてもらわないと」
グラントは傲慢にもそう言う。
「図々しい男だ。斬るか?」
「いやいいよ」
マリアの殺気を止めて僕は仕方なくもう一周分の鎖を解いた。
「場所についてだけどな。どうせ裏路地で埃だらけの所だと思ってんだろ?実際は意外なところなんだぜぇ」
グラントが告げた場所は意外な場所だった。
「そ、そこに闇市場が?」
「少なくとも俺が世話になってる所はここだったよ。移動してても知らねぇ。俺はそれ以上の情報は知らねぇよ」
こればかりは本当の様だ。グラントは末端、流石にこれだけで親をたどるのは難しそうだ。
「それじゃとりあえずこれで良いかな?」
僕は席を立つとグラントが大声で止める。
「おいおいレンの旦那。そりゃないぜ」
グラントはまだ残っている鎖を揺らす。
「これも全部解いてくれないと。脱走できないだろ?」
僕は振り返って言う。
「僕は鎖を少し解いただけだよ。大分マシになったでしょ?」
「マシなわけあるか!」
「嘘をつかないで、実際鎖が強すぎて一層吸われちゃって衰弱してるからこんな痩せてるんでしょ?」
グラントを縛る鎖は少し強すぎた。本体の戦闘力がないだけにその威力は過剰だったから衰弱している。これは魔力の少ない僕だからこそ分かることだし、少しは優しくしたつもりだ。
「ちっ!上手くやりやがるぜアンタもアイツも!」
グラントはそう吐き捨てた。




