第89話 顔役からの依頼
ルドルフが近づいて来た。
「あのマスター……俺外れたんすけど。少し分けてもらっていいすか?」
「えぇ……そんなの無理だよ。ねぇネコマール」
「確かにこれは主殿が予想したもの。いくら金を出したのがルドルフ殿でもねぇ」
「でも手持ちに600金貨あるんだから折半にしてこれで馬車を買えばいいじゃないですか。ね?」
それもそうだ。今手持ちにあるんだからそれで買うというのも……
そして600金を出したところでもって……上から指が下りて来て掴み取った。
「貸しは返してもらうよ」
店主が借りた分をぶんどって僕に余りだけを返してきた。
「ど、どうも……」
「え?俺の分はナシっすか?」
「この分だとナシだね。他に稼げる依頼があれば別だけど」
「あちゃ~」
ルドルフは頭を抱える。
「じゃあもう少し稼ぐか」
「依頼でね!ギャンブルはしばらく禁止!」
僕は両手で大きくバツを作る。
「「え~」」
ルドルフとなぜかネコマールも渋面を作る。
店主はそれに気づくと
「何だい依頼を探してるのかい」
「うん」
「なら良いのがあるよ。やるかい?」
「ちょっと待ってください」
店主の提案をすぐに止める。
「それって合法な奴ですか?」
「何さ。アタシだって帝都公認のギルドマスター様に堂々と汚れ仕事は押し付けないさ」
「一応汚れ仕事はしているって言う自覚はあるんですね」
「フン。どうかね」
店主は僕らを離れた所に案内した。扉をいくつか通ると誰もいない空間が現れた。
「ここは案内図にかかれていない隙間でね。密会にも使える場所なのさ」
「この前帝都に魔物が襲来しただろう?」
「良く知ってますね」
「アタシは帝都の闇を仕切る顔役の一人のマーリンだ。帝都周辺の情報でアタシが知らないことは無いと思ってもらっていいよ。アンタに都合が良いことも悪いこともね」
マーリンはそう見下ろした。
「そ、それでその魔物が何なんです?」
「魔物の様子はどうだった」
「興奮状態でした。おかげでそっちのルドルフやネコマールと一緒に倒すのに苦労しましたよ」
「何もしないで魔物が暴れると思うかい」
「そ、それはつまり何か魔術らしきものをグラントがしたということでござろうか……」
ネコマールが口を挟む。
「いやあのカーム湖のアントニーの話からして恐らく何か拳大の薬物を入れたのでは?と言うことは」
その薬物を探せということか。
「考えている通りだよ。グラントは今獄にぶち込まれていて話を聞くのは骨だが薬物についてのアテは付いてる」
マーリンは僕に紙を渡してきた。
「あれは魔物だけでは無くて人間にも有効な毒でね。これが帝都に入っているという情報がある。これを突き止めてくれないか?」
「でも法務局が動いているのでは?」
「あそこは足が遅いよ。街の裏側のこっちから突き出してやった方が話は早い」
マーリンはそう苦笑した。
「報酬は?」
「そこにいる悪魔の借金をチャラにしてやる。これで文句はないかい」
「は、はい!」
こうして帝都に入った薬物事件の捜査を始めることになった。




