第85話 馬車紹介
「コイツが馬車の担当や。見て貰うと良いで」
フィンがある男を紹介する。その男の身長は低くどこかドワーフを思わせた。
「どうも。担当のマルキンです。ドワーフです」
本当にドワーフだった。確かに背は低く顔は髭だらけだが決して弱そうということは無く体のあちこちに傷と硬そうな筋肉がついていた。
マルキンは揉み手をすると近づいて来た。
「それでどんな馬車がお好みなんで?100人乗れる馬車ですか?」
「そんなに大きいのはいらないよ。民間で使う奴だから」
「ふぅむ。だとすると中規模の4~6人乗りですかね。荷台はどのくらい」
「荷馬車じゃないから普通で良いよ」
「だとすれば基本的なものはこのくらいの大きさですかね」
マルキンは僕を案内していった先には大きな屋根付き四輪馬車があった。高さは僕の身長の2倍はあり、かつ横の大きさが数メートルはある乗合にも匹敵する立派なものだった。
「これが普通ですかね。もちろんこれは素体でいくらでも改造の余地はありますよ?」
扉を開けると中はベンチが二つ付いていて間に机が置いてある。
「どちらのベンチも下は収納棚になってますぜ。後上に物を置けるので見た目以上に収納には困りません。もちろんこれも改造次第ですが」
「凄いですねマスター。これだけあれば普通に人住めますよ」
「実際そちらの方が言うようにここに住んで旅をしている人もいますよ」
ルドルフの言うことに頷きながら次は後方の扉を開ける。
「これは荷物棚です。一応帝国標準の木箱を横において6つは入る大きさなので普段使いには十分でしょう」
「これならいろいろな部品の輸送にも使えるわね」
フィオナは既に興奮しているようだ。半分どう改造しようかと言うことでいっぱいなのだろう。
「次は車輪ですが……まぁこれも帝都で一番使われている型なので交換整備も容易です。後で脇にギルドの銘を打ちます。車体にも打てますけどこれは流石に追加料金が必要ですぜ」
「へぇ車の下も丈夫に作ってあるんだな」
「無論様々な種族の方が乗ることを考慮しているので結構な重さは耐えられます。上手く乗って一車両6人乗りでしょうかね。種族差はありますけど前についている御者席も合わせれば8人で移動できますぜ」
マルキンは次々と紹介していく。それに僕を含めた一同は惹かれていたが……ふとウチの受付のことを思い出す。
「ところでマルキンさん。そこまで便利な馬車はやはりお高いんでしょう?」
マルキンはその質問を予測していたのだろう。
「そこは流石に……メジャーな型ですし本体と改造、保障込みで金貨35枚でいかがでしょう」
「さ、さんじゅうご?!」
僕はあっけにとられるその額は決して安いものでは無かったりする。これは経費でもなかなか落ちないだろう。助けを求めてフィオナに目線を送るとフィオナはため息をついて。
「改造と整備はある程度アタシがやっちゃうわ。その分の費用負けてくれない?」
「そうですか~。そう言えばフィン商会本部のお得意様ですものね。その身内価格も込めて金貨30枚で!」
それでも少し多いな……ウチのギルドにそんなお金は無いよ。
「ねぇルドルフそんなお金ないよね?」
「まぁデカい依頼をこなしてその儲けを全部ぶっこめば大体揃うでしょう。一応共用の物買うなら全員で分担できますし。後はあそこから金を下ろすか」
「ルドルフって銀行の当てあるの?」
「まぁありますよ。しかも無限に金が湧いて出る所がね」
ルドルフはニヤリと笑った。この男一体何を考えているか理解できない。




