第82話 ギルドユニコーン
カナタが指揮するギルドユニコーンの本部は王城のすぐ近くかつ貴族領域にも近い一等地にある。位置関係的に僕のギルドよりずっと奥にありながらずっと設備が整っていてその大きさと発展がうかがえる。
僕はそのカウンター奥の椅子に背中を預けていた。後ろにはマリアも控えている。
「いやぁゴメンゴメン。この前の騒ぎでバタバタしていてさ」
カナタが片手で書類をピラピラさせながら近づいてくる。
「いやいいよ。この前に巻き込まれたのは僕らも一緒だしね。ハロルドが扱かれているのはまぁまぁかわいそうだけど」
僕は机の前に置かれたティーカップを手に取る。
「ごゆっくりどうぞ」
カップを置いて来た人は助手なのだろうか。ギルドの制服らしきものを着ているが相当高級そうだ。
「何だい彼女のことが気になるのかい?」
カナタはニコニコしながら僕を見る。
「いやそういう訳じゃ……」
「まぁ彼女は子爵の娘なんだけどね」
「え?子爵の娘が下働きしてるの?」
僕は衝撃で吹きそうになった。
「まぁユニコーンは元々貴族御用達のエリートギルドだし」
「へ?」
僕はカウンター越しに向かいのロビーを見てみる。そこには何人もの男女がいたがそれらすべてに共通することがあった。それはやけに皆装備が良い!ウチにもルナ伯爵令嬢はいるが、それと同じくらいの装備の良さだ。周囲の紋章を見る限り良い家の出ばかりなのだろうか。あと女性の顔ぶれには
「まさかこのギルドメンバーって全員貴族?」
「まぁ家督相続の有力候補から外れた分家が多いけどね。でも息がつまらなくて快適だよ。結果出せば分家だろうといくらでも重用されるし」
この帝都では有名な話だが魔術は一部の突然変異を除いて血統的な裏付けが強い。その為貴族は支配階層として有力な一族だけで混血していきより強い魔術師を生み出すらしい。僕はその反対の人間だが、そんな魔術適正でトップクラスの方々がまさかこのギルドに集まっていたなんて……
「そんなに畏まらなくていいよ。少なくともここでの立場は一緒なんだから」
「で、でも……」
あちこちからチラチラと視線が刺さる。何を話し込んでいるのだろうか。
「これ僕が確実に部外者だと思われてるんじゃないの?」
「そりゃないよ。僕がちゃんと認めてるんだし。だよね皆」
カナタが尋ねると皆顔を背ける。
やっぱり舐められてるな……まぁ王立会議にいたメンバーじゃないし僕たちの奮戦を見ていたわけじゃないから仕方ないけど。
「あのやっぱり成り上がりがここにいちゃまずいんじゃ……」
「そんなことは無いぞレン。貴様をバカにするような奴は私が始末する」
「それもそれで怖いよ!」
「バカだなぁ。お前はギルドマスターだしライゲート公の後ろ盾もある男爵なんだ。もっと胸を張れよ」
いつの間にか僕にあの公爵の後ろ盾なんてあったんだ。
「でもカナタは貴族令嬢たちに人気じゃん」
「あんなの僕の血統と立場に惹かれてるだけさ」
「血統ってカナタは分家じゃないの?」
僕がそう言った瞬間周囲の視線がまた刺さる。何言ってんだコイツと言った感じだろう。
「何を言ってるんでしょう。カナタ様は立派な侯爵家ですのに」
「ご実家は皇后も出しているんですのよ?先代ですけど」
「え?そうなの!」
僕はカナタの方を見る。
「うんまぁ。僕の父方の伯母なんだけどね」
「へぇ~カナタって皇帝家の姻戚だったんだ」
僕はコーヒーを飲みながら感心するが、マリアは後ろで何か考え込んでいた。
「でも確か侯爵家から出た王妃と言えば……」
「うんそう。僕が生まれる前に亡くなっちゃったから記憶も何もないんだけどね。父上なら覚えてるかもだけど。マリアはエルフだったね何か覚えてるのかい?」
「いや私はあの頃地方を旅していたので直接会ったことは無いので」
カナタはそう話を纏めると奥から別のメンバーが書類を持ってきた。
「って訳でこれが書類だよ。お納めくださいな」
僕は書類を受け取ると馬車に乗って帰って行った。




