第75話 ウォレン最後の手段
通信器具はネコマールの他にドルフとフィオナも持っている。ルドルフにネコマールから電話がかかって来た。
「誰かと思ったらネコマールか。何か用事でも?俺は今忙しいんですよ」
「忙しいって何が?」
ネコマールがそう聞くと電話の奥から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「おいルドルフ何端でこそこそやってんだ。てめぇの酒先に飲んじまうぞ!」
「その声はアーロン殿?一緒なんでござるか」
「あぁそうだよネコマールに渡してる分だよ。それじゃ代わるからよ」
ネコマールの通信器具はアーロンの手に渡った。
「おう。俺だ何か用か?俺は今忙しいんだが」
「あのアーロン殿至急助けが必要なのでござるが……どこにいるのでござるか」
「今はルドルフたちと酒飲んでるが」
電話の奥では女性の妖艶な声が響いている。これは唯の酒場ではない。
「まさかアーロン殿たち。妖精のキャバクラにいるのでは?それは納得いかないでござる拙者一人だけ除け者にして!」
「仕方ねぇだろ。こんな時でもないとそう言う店行けないだろ?大体てめぇもどうせパーティーのご相伴に預かってんだろう」
「今はそれどころでは。ってあっ」
電話するネコマールから電話をひったくる手が。
「もしもしアーロンですの?随分と楽しそうですわね。こちらは今奇しくも敵襲に遭っているというのにそちらは楽しんでいるんですわね」
「え?敵襲を受けているのかよ!それで俺は何をすれば良いんだ」
「とりあえず外に結界が張ってあるのでそれを張っている魔術師を片付けてくださいまし。お願いしますわね」
「あ、あぁ分かった。今すぐ行ける奴らで向かうからよ!」
「お願いしますわ」
こうしてルナは通信を切った。
僕はカナタと共闘していた。向かいにはウォレン男爵とそれを守る騎士がいた。
「ぐはぁ!」
カナタは扇で騎士の鎧を切り裂く。
「まぁまぁやるようだな。特にフリージアまで縛られるとは思わなかったよ。ただ俺にはまだまだ手札がある」
「何が?僕の見立てではもう君の仲間は皆無力化されたはずだ」
「それはどうかな?」
ウォレンは懐から何かを出した。
「これを食らいやがれ」
ウォレンは小瓶を辺りにまき散らした。
こ、これは前の魔獣災害の時の匂い……
これを食らった騎士は立ち上がっていく。
「まさかこれは魔素の暴走……人間にも使えるのか!」
「そうだ。グラントに渡したのより何倍も強くなる薬だぜ」
「貴様!戦士を愚弄するか!」
アンドレは再び激高する。先ほどまで動けなかった人間とは思えない。
「知るか。コイツらは金で動いた。報酬以下の働きしかしない奴隷は無価値だ」
「貴様ッ!」
アンドレは騎士から奪い取った矛を勢いよく突き出す。
「守れ」
ウォルトのその一言で騎士が肉の盾となる。
「騎士は便利だなぁ。まだこんなに突き刺せる場所が残っている」
その顔には男爵としての誇りも威厳も無かった。
「お前みたいな奴に国は任せられない」
僕は強く睨みつけたのだった。




