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第74話 女の闘い

 フリージアが振り回す氷の剣をルナはナイフで受け止める。


「このこのこのこのこのこの!」


(斬撃自体は速くないけれど、恐ろしいのは断面ですわね……凍らされそうでヒヤリとしますわ。それに……)


 ルナはフリージアを見据える。ナイフと剣では明らかに剣の方に軍配が上がるが厄介なところはそこだけではない。




「レンちゃん前!」


「分かってるよ!」


 僕の方に氷の短剣が飛んでくるので素早く避ける。一気に二方面攻撃するとは中々の使い手だが……


「あなた丸腰のレンちゃんの隙を狙ってますわね。けしからんですわ」


「あらこちらは模擬戦をしているわけではないのだから。何も不満を言われる筋合いはないわよ」


 フリージアはそう呟くと僕の方向により大量の氷の短剣を放ってくる。


「危機回避!」


 僕は飛んでくる短剣を全て回避する。僕は攻撃こそできないが危機回避スキルもS級なのだ。


「ちょこざいな!」


「それはこっちですわ」


「ならまずあなたから片付けましょうか」


 フリージアはルナを一層斬りつける。ルナもまたナイフで応戦するが、あまりの猛攻にルナからも血が出てくる。


「吸血鬼にも血が出るのね。惨めだわ」


「このレイシストがッ!」


 ルナは若干押され気味だ。辺りにルナが撒いた血が溜まっていく。




「ルナ大丈夫?!」


「大丈夫ですわ。この程度私にはなんともありませんわよ」


 ルナはそう僕に振り返って答える。顔色が若干悪くなっている。




「無理そうじゃない。そろそろ止めの時間ね」


 フリージアは後ろに下がって一気に飛び掛かって来る。


「その言葉をそのままお返ししますわ」


 途端地面の血だまりが隆起する。赤黒い帯が現れフリージアの身体を縛る。


「こ、これは……」


「ご存じなかったかしら。吸血鬼は自分の血液ならば体外に出ていても操れますのよ」


「つまりこれは全て私をハメるための作戦……人外の癖に!」


 フリージアの身体はルナの血液で縛られてしまう。


「お言葉ですが淑女が他人をそのような呼び方をしてはいけませんわ」


 ルナはフリージアに圧力を加える。それによって冷気が緩和されアンドレが動けるようになる。


「これで一人は無力化できました。後はこの結界ですわね……」


「何とか外に連絡を取る必要がありますぞ。とはいってもここから連絡が付けられそうな人物はいるのか?」


 アンドレは後ろのワイルズを振り返る。


「いいや。余の知り合いがいるにはいるが本領は遠いし、他の貴族を巻き込むわけにもいかぬ。できれば戦闘職の者が良い」


「それは僕も一緒だね。ギルドメンバーはいるけどこの辺りを歩いている奴はいないかもしれない」


 二人とも望み薄そうだ。こうなったら僕の身内を呼ぶしかないか……全員戦闘職だしいけるでしょ。




「あ!そう言えばルドルフ殿から通信器具の試用品を受け取っていたんでござった」


 ネコマールは懐をまさぐる。


「試用品?」


「確かルドルフ殿とフィオナ殿が共同開発した魔法器具だそうで」


「これで連絡付けられるの?」


「仕様は知らないでござる。もしかしたら結界に邪魔されて通じないかも……」


「それでも一回試してみて」


「御意」




 ネコマールは結界の近くに行って通信用の魔法器具を付けた。


「……あっ繋がったでござる。もしもし」


 外から援軍がくるかどうか。これは世界の運命を左右することになるだろう。

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