第73話 女の闘い開幕
「へっ。どうやら俺たちはとんでもない相手に狙われたみたいだな」
苦笑するハロルドにリンが声をかける。
「ハロルド!殺しては無いですよね」
「安心しろ。コイツはこの程度で死ぬタマじゃねぇよ。それよりもリンこの結界はどう分析する。魔法はお前の専門だろうが」
「高魔力の生物が数人組で組んでいる魔術ですから外のどこかの地点に儀式場があるのかと」
リンは剣を構えながらそう答える。
「エルフとはいえこの手の結界を内側から単独で解くのは難しいですよ」
僕はリンに声をかける。
「って事は外の拠点を叩けば壊れやすくはなるの?」
「まぁそうですね。ただここから外にいるものに声をかけるのは難しいです。この結界の近くにいる生き物はほぼいなくなると思っていいでしょう」
リンは結界に手を触れた。それだけで圧を感じてしまう。
「私はこれを何とか解いてみます。あなたがたはそれより中にいる騎士を片付けて下さい」
「分かった。二人とも協力して」
僕はルナとネコマールに声をかける。
「御意」
「謹んでお受けいたしますわ。マスター」
二人は目の前の敵に斬りかかる。
「我も忘れるでない!」
アンドレも斬りかかるがすぐに動きが止まってしまった。
「これは……冷気」
一定の温度に保たれているはずの結界の中を謎の冷気が支配する。その冷気の主はフリージアだった。
「あらリザードマンにはこの冷気は辛かったかしら」
「フリージア嬢……我の弱点を突くとは貴殿に騎士道精神はないでござるか」
「ある訳ないわよ。私は騎士ではないし」
フリージアは伯爵令嬢でありながら宮廷魔法院に勤める氷属性の魔術師でもある。
「もともと気に入らなかったのよ。リザードマンであるあなたが神聖な帝都のすぐ近くに陣取っていたことが。だから壊させたのに」
「そ、それは我らの街を魔獣に襲わせたことと関係あるのか」
フリージアは青ざめるアンドレに優しく諭す。
「そうよ。城を中心として帝都にはいくつか入り口があるけれど魔獣災害を起こすとき進軍で狙うところは私がグラントに指示したんですの。ついでに滅ぼそうかと思いまして」
そんな……あのグラントが引き起こした魔獣災害にはそんな目的も隠されていたなんて……許せない。しかしもっと怒っていたのはアンドレだった。
「全て貴殿の差し金だったのかァ!」
アンドレは怒り狂うが冷気のせいで動けない。
「ハハハ。フリージア何であそこから入ったのかと思ったが、お前中々の鬼畜だなぁ」
「それも全てあの田舎者のおチビが全部防いでしまったので白紙になりましたけれど」
フリージアはウォレンに答えた後で僕に冷たい目線を送る。それだけで凍え死んでしまいそうだ。
「まぁどっちもさようならですわ」
右手に青い剣が出現する。その剣は彼女が操る氷で作られた冷気の剣。それを突きつけようとしてくる。
「遺言は?」
「それを尋ねるのはこちらでは無くて?」
フリージアの影にある女性が……ルナだ。
「あなたは辺境伯の令嬢」
「レンちゃんを傷つけようとしたこと万死に値しますわ」
二人の間に恐ろしい空気が流れる。
「ならまずは貴方から」
こうして女の戦いが幕を開けるのだった。




