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第72話 帝都警邏隊副隊長 ハロルド

 騎士がハロルドに斬りかかる。


「その剣技は帝都騎士団仕込みだな?それにしても力任せの攻撃。そんなの誰が教えたっけなァ!」


「何を言うかアンタは丸腰の癖に」


 しかし相手の騎士も引かない。


「その考え方が甘いんだよォ!」


 ハロルドは騎士の足を蹴り払う。重い武器を持った騎士はバランスが崩れることに弱い。


「ぐわぁ!」


「渡しやがれ」


 そのまま強引に剣を奪うと胸ぐらをつかんで兜を外した。出て来たのは見知った顔だった。


「やはりお前か第二警邏分隊長。ウィリアム。いけ好かねぇ奴だったがここまで堕ちるとはな」


「アンタに抹殺命令が出ています」


「それで上官であるこの俺をハメようって事か。誰の指示だ?まさか俺を飛ばしての警邏隊長からの指示じゃねぇだろうな」


「それは言えない」


「それは何だ?隊長よりもっと上からの指示って事か?ふざけんな!警邏隊での絆も俺の恩も忘れやがってよ」


 ハロルドは激高するがその背後には別の騎士が現れていた。槌を振り下ろし頭を割ろうとする。


「死ねやパワハラ隊長!」




「死ぬのは貴方です」


 美しい光魔法が放たれ騎士を吹き飛ばす。


「ありがとうよリン」


「こちらこそ。それより無駄話をしている暇はないでしょう」


「フン。どうやら俺よりもっと上の奴から指示を受けているらしい。俺の実家の名でも怯えねぇって事は公爵侯爵クラスか?」


「いくら積まれたかは知りませんが、私たちを舐めないでもらいたいですね」


「あぁ」


 ハロルドは伯爵家の次男ではあるが決して副隊長の地位に腰掛けとして甘んじている訳では無い。帝都最高戦力の一角である警邏隊長にしばかれながら帝国における武術を中心に修め、副隊長になってからも毎日警邏隊の地獄の鍛錬の数倍の強度の鍛錬を積んでいる生ける怪物の一人だ。


 当然この程度の襲撃をいなすことなど簡単だった。


「その腐った精神鍛え直してやるよォ!」


 手に持った剣でウィリアムに突きを放つ。身体能力強化に集中して割り振ったステータスで放つ突きの速さと威力は弾丸すら超えうる。


「がはぁ」


 ウィリアムが剣を振り下ろす間もなくハロルドは鉄の鎧を紙のように貫きその場に崩れさせる。


「悪いが訓練程抑えてやらないからな?せいぜい命があることを願うんだな」


 ハロルドはそのまま進撃しようとするが、リンが腕を掴んで止める。


「止めてください。あなたが皆殺しにしたら誰も情報を教えてくれないじゃないですか」


「それは失敬。でもお前がそんなお行儀良い訳ないだろ?本心を言えよ」


 ハロルドはそう睨みつける。


「そうですよ!本当は私の分も残しておいてくれと言う意味です」


「お前ってエルフ族の癖に好戦的だよなぁ……良いよ勝手にしろ」


 ハロルドはウィリアムに視線を戻す。


「あ、アンタは相変わらずの怪物だ。だがもうその天下は長くない」


「うるせぇ誰がやったのか教えやがれ」


「私にも間接的にしか命じられていないので真実かは怪しいけれど……」




 ウィリアムは口を開く。


「ッ……」


 告げられた名前はハロルドを恐れさせるには十分だった。

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