第71話 決戦の火蓋
数人の貴族は怯えているが一部は怯えず残ったままだ。その一人アンドレが問いかける。
「貴殿たちの目的は何だ?」
「混沌だよ。トカゲのオッサン!」
「混沌だと……」
ウォレンは両手を広げて語りだす。
「この帝国は不完全すぎる。特に今の執政府だ。何から何まで甘すぎるんだよ」
ウォレンの目は狡猾になっていた。
「この帝国の貿易は保守的すぎる。売上を上げた方が良いに決まってるだろ?それを何各領地での独占になってるんだ。それじゃ儲からないだろ」
「もうよい」
ワイルズは一言述べた。
「ここから述べることを要約すると、要はケイン陛下が皇帝の座に就き、余が若くして訂正の中枢にいることが気に喰わぬのであろう?貴様らとしては」
「貴殿ら!そんな強引な方法で国を変えようとしてただで済むと思っているのか!」
アンドレが激高する。
「やだねぇこれだからリザードマンは喧嘩っ早くて仕方ない。言っただろ。新時代を作るってその世界に以前のような決まりは存在しない。俺たちがルールなのだからな!」
次は僕の番だ。震える膝に渇を入れて平静を装って問いかける。
「だからと言って急に公爵やその身内が不審な死を遂げれば今は中立に動いている者共も流石に動くだろう。何ならカナタの父親たちだって」
「まぁその通り今俺らがアンタら公爵以下を皆殺しにするのは容易いがそれでは不安定な三日天下になる。た・だ・し・だ!お前らが死んだのが不幸な災害だったら?」
「災害……」
「そう例えば地震が起こるだとか。館が火に包まれるとか……まぁ良いどちらにせよ勝てば官軍。勝者は情報なんていくらでも捏造できる」
僕はハッとする。
「それはすなわち僕らの不正の証拠でも捏造してしまおうって事か」
「ハハッ。それが一番早いかもな。不正を疑われた一味は何故か帝都から姿を消した。これで外務卿から何から失脚させる言い分にもなりうる」
そんな暴挙が許されるはずがない。そんなことになったら今の帝都はめちゃくちゃだ。
フリージア嬢は手をパンと叩いた。
「それでは最期の言葉の時間は終わりです。今から全員血祭りにあげてしまいましょう」
ウオオオオ!
その美しく冷たい声で後ろの騎士たちが叫び出す。中には騎士の格好をしていないのに武装している使用人もいる。
「余が宴の為に雇った人員の中にも内通者がいると見える」
ワイルズはそう呟いた。
キンと刀が触れ合う音がする。
「先から黙って聞いておれば拙者の主殿に何たる不敬。切り裂くでござる」
ネコマールが刀を抜いて騎士の一人に切りかかる。それが張り詰めた場の糸も切り落とした。
「ウオオオオ!」
騎士の叫び声が響き渡る。しかしこちらもただ押されるわけではない。帝都警邏隊の副長のハロルドや近衛騎士のリンなど貴族でありながら帝国の突起戦力に等しい実力者の者も大勢いる。既に前者二人は目の前の騎士を蹴り上げ武器を奪っている。
「慣れない剣ですが、ここはエルフ族の権威をかけて臨みます」
「騎士連中には見知った顔も多い。精神から鍛え直してやるよ!」
二人は騎士に飛び掛かっていく。
「レンちゃん下がっていてくださいな」
「そうでござる。ここは拙者が討ち滅ぼすべきかと」
僕のギルドメンバーも前に立つ。そして……
「貴殿には恩義がある。その恩ここで返さねば末代までの端だ」
アンドレも立ってくれる。
そして最後に
「俺実はギルドマスターなんだけどそのこと理解して臨んでるのかな?」
「知らん。しかし余の宴を邪魔された怒りは大きい」
カナタとワイルズも僕の両脇に立ち上がる。
今こそ決戦の時だ。




