第70話 危機到来
会話をしていると使用人が現れてこう伝える。
「パーティーのメインイベントの時間ですので部屋の中にお戻りくださいませ」
「は、はい」
僕とルナ、リンは呼ばれて歩いて行った。
貴族たちが皆部屋に入ったところで、ギギギと庭に繋がる扉が閉ざされる音がする。あれ?そんなに厳重に閉じる必要なんてあるのか?よほど大きなイベントなのだろう。
すぐ近くにハロルドとカナタがいた。
「何だよ。公爵様俺たちを楽しませるイベントでもするのかい?」
「いや余はそんなイベント聞いて居ないが……」
カナタの一言にワイルズは首をかしげる。
途端舞台が暗転する。一同にざわめきが広がっていく。
「おや電源が落ちましたね」
「おいおい大がかりな宴だな。ワイルズ公爵主催のでかめのイベントか?」
「いやハロルド。余はそんなもの聞いていないが」
「じゃあ公爵のバースデーパーティーじゃないか?」
確かにそれならワイルズに秘密なのも納得いく。しかし……
「いやそれならば祝ってくれる精神には感謝をしたいが余の生誕祭はずっと先であるし、それ以外の事柄でも余は特に祝われるような覚えはない」
ワイルズは疑問を持つ。すると舞台が明転する。
驚きを隠せない貴族たちの前に立っていたのはウォレン男爵であった。脇には先の令嬢もいる。
「これはこれは見事な間抜け面が複数。サプライズは大成功と言うことで」
「何を考えているのかな?ウォレン男爵」
アリスの声が冷淡に変わる。
「それはだな……」
「「「「伏せろ!」」」」
「なにっ!」
考えるより先に声が出た。それはリン、カナタ、ハロルドも同様だったようだ。
アリスはたまらず地面に横たわる。冷たい風が通り過ぎ後ろに巨大な跡を作る。
「これは風の刃……」
どこから撃たれたのかは分からない。しかし確実に人命を刈り取る一撃。それは均衡を崩すには十分だった。
一部を除き貴族たちが叫び声をあげる。
「敵襲だァ!」
「何とウォレン殿裏切られたのか!」
しかしウォレンはクツクツ笑うだけ。
「流石ギルドマスターを名乗るだけあってこの程度の攻撃は読めるか。そこは評価を改めようか。さぁここからが祭りの時間だ。ただしメインディッシュは貴様らの血祭だがなァ!」
途端に周囲に強い魔力を感じる。
結界?!なんでこんな所に……しかしこれで先ほどの一撃に対応し中に踏み込んだ護衛たち以外は手が出せなくなった。なおネコマールはギリギリ滑り込むことができたようだ。
「主殿!大丈夫でござるか」
「数人護衛は紛れ込みましたがこれで大幅な戦力減少ですわね」
「フリージア嬢。貴殿まで」
「悪く思わないでくださいな公爵様。これは新時代への幕開けなのですから」
「何をふざけたことを……」
ワイルズの顔に激高の色が浮かぶが動くことは無い。それが無駄だということは分かっているからだ。
「なるほどこれで俺らの護衛は使えねぇし、この異常を感知してそこのレンやカナタのギルドメンバーやらの援軍が来ても干渉はできねぇと。ただ一つミスしたなァ」
ハロルドは怒り心頭に達しているが冷静に弱点を告げる。
「お前らは三人だろ?大してこちらは数十人。援軍は来ない上に個々の貴族に力は無くとも多勢に無勢も良い所。俺やリンやギルドマスターもいる。自分で自分の首を絞めたなぁ」
ハロルドは煽って来る。しかし顔は変わらない。
「相変わらずお前は力だけのバカだなぁ~」
「まさか……固定転移陣ですか?!」
顔を青くしたリンが反応する。
「流石ただ歳を重ねただけじゃねぇか。ご名答だよもう遅いが」
周囲に魔法陣が作られそこに大量の騎士が召喚される。
「固定転移陣……一般の転移陣と異なり固定された場所で大掛かりな儀式を通してしか行えない代わりにどんな分厚い結界内でも自由に転移できる大魔方陣……どこから情報を得たんです?大方察せますが」
「これ以上ババアの遺言に付き合う義理はねぇな。とりあえず血祭りの時間だ最後の晩餐を楽しめよ」
ウォレンとフリージアは邪悪な笑みを浮かべた。




