第69話 貴族たちとの懇談(後編)
改めて周囲に目を向けるとリンの言った通り自然が恋しくなった人もいたようでポツポツ貴族の姿もある。その中にワイルズ公爵の姿もあった。
「ご招待ありがとうございます公爵」
「うむ。新参の貴様に喜んでもらえて余は満足であるぞ」
ワイルズは酒が入っているのか豪快かつ扇で口を隠す繊細さを合わせた反応をした。
「貴様はヒスイの方の出身と聞くがあの辺りは良い地域か?」
「は、はい空気もきれいで自然もたくさんあります。自然が多すぎて初心者の植物魔法が暴走してえらい目に遭いましたけどね」
僕は苦笑する。
「ふぅむ。それはさぞ苦労したであろうがカナタの注目していた男にここで会えて光栄に思う」
ワイルズ公爵は歓迎してくれたようだ。
しかし他の貴族の反応はそうではない。ある令嬢が話しかけてくる。
「でもワイルズ様こんな田舎者は血統もない成り上がり者ここにいるだけで場違いですわ」
「そうだぜ。なんせ元々あの辺境伯の出入り商人の息子らしいからな。不気味な奴だから近づかない方が良いかと」
僕を田舎者だとバカにしてくる。確かにヒスイ村のある辺境伯領は帝都よりも文化は遅れているし、辺境伯は辺境での業務が多忙で中々帝都に来る機会もないけれどそんな言いぐさは流石に無いのではないか。
ルナが怒りをあらわにしかける。
「それは撤回してくださいな。ヒスイ村は帝都に多大な富を送っていますわ。その儲けはとてつもない額……」
「待て待てそんなに慌てちゃダメだよ」
ルナの感情がはちきれそうだったので僕が慌てて抑える。しかしその言葉を大げさにとらえる者はいるらしく。
「ほら見なさいな。辺境伯の令嬢は亜人種の田舎者ですからすぐに怒るのですわ」
「仕方ないさ。元々吸血鬼なんて人を食ってたとかいう噂のある一族なんだから」
余計馬鹿にされる始末だ。流石の僕も怒り心頭で去ろうとした時公爵の声が響く。
「止めよ。帝国の上位層が集まる場でそのような下劣な喧嘩などふさわしくない」
一同の話し声がぴたりと止まる。
「この帝国は貴様ら人間だけで成り立っているのではない。エルフもいれば吸血鬼もいる大鬼だっているし希少な種族も大勢いる。それを受け入れぬとは貴族の恥を晒すに等しいのだぞ」
冷淡なしかし意志のこもった声だった。
「そ、それではごきげんよう」
完全に意表を突かれた令嬢と貴族は顔を赤くして怒りながら去っていく。しかし去り際に一言。
「いつまでそんな悠長な口が利けるんでしょうね」
「天下を取っていられるのも今の内だぞ。家柄だけのボンボンめ」
と呟いたのが耳に入った。僕の中の嫌な予感が更に加速する。




