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第68話 貴族たちとの懇談(前編)

 ウォレン男爵には無下に扱われたものの、それだけが交流ではない。僕はルナを連れて帝都の若手たちとグラスを重ね合わせた。これはとある子爵令息との会話である。


「聞きましたよ。帝都に来て数か月で元A級冒険者率いる密猟者集団を破り、かつ帝都の魔獣災害を食い止めたと」


「ハハハ。それもこれも皆頼れる仲間がいたからですよ」


「またまたご謙遜を。フィンに聞きましたよ。あの中で一番年下ながら仲間への指揮は既に一流だと」


「フィンをご存じなんですのね」


 ルナが驚いた顔をして言う。


「ウチとも長い付き合いのある商会だからね。領地で取った特産物を各都市に流してもらってるんだ」


「それは結構互いにズブズブで大事な関係なんですわねぇ」


 しかし彼は顔を暗くする。


「しかしその商売もだんだんきつくなってきてね」


「何でですのよ。私も地方貴族ですから言いますけれど商品を独占できてて凄く儲かってるでしょう」


 ルナが皮肉交じりに言う。


「ウォレン男爵の商会がどこかからか安価な商品を持って来てちょくちょくちょっかいを出してくるんだ。あそこは事業の広げ方に遠慮が無いよ。今に一地方都市くらいなら経済的に掌握しちゃうね」


「それは災難ですね。どう考えてもそれグレーな商品じゃないですか」


「それを言っても良いんだが後ろ盾がデカすぎるし。こっちも税収に直結するうえに民衆からの不満も噴出するかもしれなくて不安だよ。一番苦労してるのはそこの商会長だけど」


 後ろ盾があるのか……貴族社会は看板がものを言うらしい。僕も溶け込めるだろうか。




 グラスを持ちながら歩いていると庭が解放されていた。その中央で両手を上げて台地の気を取り込んでいるものがいる。リン女伯爵だ。


「人込みから外れて何やってるんですのよ?」


「ルナ嬢。人込みから外れるためにやってるんですよ。エルフは人の多い所が苦手でして。自然が好きなんです」


 周囲を見渡すと流石公爵家の屋敷と言うべきか庭にも自然が溢れているのだ。


「こうして自然エネルギーを受けているとエルフは力が出ますので」


 リンは両手を力強く動かす。


「ただこの辺りでも結界があるのが玉に瑕なんですけどね。何か今日は特に変な感じがします」


「結界?」


 疑問を持つ僕にルナが耳打ちする。


「ここは公爵家の帝都の住まいですから、魔物や外敵が入ってこないように本来の帝都への結界と貴族エリアへの結界に加えて別の二重結界を発動させてるんですわよ」


 古くから続く家と言うのは知っていたけれど相変わらず凄いセキュリティだなぁ。これじゃ結界を発動させている間蚊すら入れないと思う。安心だなぁ……




 後で起こることを知っていたら僕はそんな言葉を死んでも言わなかっただろう。

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