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第67話 暗き謀議

 ウォレン男爵は扉から廊下に出ようとすると使用人の一人に声をかけられる。


「男爵様どちらに?」


「どちらにって便所だよ」


「お手洗いはあちらです。先に使っていらっしゃる方がいます」


「おうよ」


 ウォレンは使用人が指し示す方向に向かう。




 ウォレンは廊下を歩き始める。やがてトイレが見えて来た。しかし彼はそれを素通りする。


 近くの扉をコンコンと叩く。招待客の彼はこの部屋に用事はないはずだ。


「俺だ」


「炎」


 中から声が聞こえる。


「雷」


 扉がひとりでに空いた。中は空洞だ。




「おいおい何ですあなた方は、こんなライゲート公の屋敷でも会議するんか?」


 ウォレンは闇の中に声をかける。


「うるさいウォレン。今まで使ってたアンタの屋敷は今法務局の輩が付け狙ってるでしょ」


「どれだけあくどい商売してんだテメェは」


 返ってきたのは不満だった。中にいるのは若い女一人とがっしりした体格の男一人。一応彼らもトイレに行くなどと理由を付けて抜け出した口だ。


 彼らは表向き付き合いが薄いことになっているしこんな大人数の会合で数人が偶然抜け出しても不審に思うものはいない。




「まぁこの屋敷には誰も居ないわよ。なんせあのお坊ちゃんは皇帝の懐刀だから」


「まさかあの人も思わなねぇだろうな。ここがルーンの爺が血眼になって探している悪の組織の支部の一つだなんて」


 そう彼らは決して帝政に味方するものではない。逆に帝国への裏切り者達だ。




「レンとかいうギルドマスター兼男爵に声をかけて来たよ。帝都を縄張りとする者同士親睦を深めるのが表向きの目的だ」


「それでどうだったのよ」


 女が仕方なさそうな口調で尋ねる。


「ありゃダメだな。血統が良くて魔力の強い傾向にある貴族の中で魔力がまるで感じられない。カナタははおろかあのアランの爺さんとさえ天地の差だ。お前でも一ひねりで殺せる雑魚だよ」


「ふ~ん。楽しみ」


 女は手を見て笑みを浮かべて言う。


「だがアイツに引っ付いてるルナとかいう女伯爵には注意だぜ。俺が『お前は田舎者だな』と軽くジョークを飛ばしたらそれだけで殺意を帯びた視線を見せて来た。後別に護衛もつれてきているらしい。そっちは誰だか分からないが他のメンツも同じくらいなら荒くれ物のタイガの野郎を倒せただけのことはあるさ」


「タイガってアランの所のギルドメンバーだったっけ」


 女がうなずく一方で、がっしりした男が動揺する。


「テメェはそういつも余計なことをするんだよ。そんなのウォレンがその男爵と帝政に害意を持つその裏切り者ですって看板引っ付けるようなもんだぞ」


「それが何か問題あるか?」


 ウォレンは開き直って言う。


「別に構わないじゃないか。俺ら三人が親睦会にもぐりこんだ裏切り者だとバレたって」


 ウォレンは顔を俯けながら告げる。






「どうせライゲート公以下皆地獄みたいな目にあって死ぬんだからよ」


 一同の暗い企みはまだ続く。

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