第66話 失礼な奴
「まぁこの五人が今の帝都で俺と良く付き合いがある人達だ」
「家の事情で姻戚のお前に付き合わされているだけだけどな」
カナタの一言にハロルドが渋面を作る。
「姻戚ったってただ叔父叔母同士が結婚してるだけじゃないか」
「それは十分近いだろ。全く家がデカくて一族の多い所はお気楽でいいな。俺なんて代々武人家系で戦死した奴は数知れず……」
「はいはいアンドレア家は大変だねぇ」
「ちっお前は昔から……」
どうやらハロルドはカナタのことを気に入っていないらしい。貴族同士だし互いに想うところがあるんだろう。そしてそれは僕も対象になりうる。
「おやおやそこの若侯爵とその一味はそこの田舎者にご執心ですか」
その声に一同の視線が送られる。それは体中に宝飾品を纏った男だった。
「これはこれはウォレン男爵殿。経営していらっしゃる商会は順調で?」
「えぇおかげさまで順調です。今度も新たな商売を始める予定でしてねぇ」
ウォレン男爵はそう笑う。若いというのに腹も出ていてだらしがないが周囲に宝石が多い。一応商人もしているとはいえそんなに儲かるものなのだろうか。しかもそれで新たな収入を得ようとしている。
気味が悪いから関わらないでおこうと思った。
しかし相手はそうでもないようである。
「そちらのギルドマスターは田舎の出と聞きましたが」
「えぇ辺境伯領のヒスイ村の出です」
「ハハハ吸血鬼伯領か。きっと住民は皆顔色が悪いんでしょうな」
は?何を言ってるんだこの人は。いくら吸血鬼の支配する地とはいえ僕の地元の人の顔色が悪いなんてそれは唯の偏見ではないか。
「お言葉ですがヒスイ村が吸血鬼の領地だからと言って毎日のように血を吸われるわけではないですよ。あの辺りの吸血鬼は普通に他のものも食べますし血液はし好品ですよ。その分税金も安いですし、商人ならお知りかと思っていましたが」
「あぁそうか。俺も今まであの辺に行ったことは無くてね。まぁあそこは俺らの商会の商品も届くか分からないけどね。ウォレン商会なんて聞いたことも無いだろ?」
「ウォレン男爵の商会ってウォレン商会ですか?僕フィン商会にしか伝手が無くてですね」
「フン。あの軽薄そうな野郎の率いる商会か。ウチの商会とは月とスッポンだね」
失礼なことを並べたので後ろにいたルナがキレそうになったところでワイルズ公爵の声が入る。
「これ。そこ我の宴で揉めるな」
「はいよ。って訳で俺とお前では格が違うから帝都歩くときに気を付けろよ」
ウォルト男爵は捨て台詞を放って数人の取り巻きの男女と去っていく。その際に僕らが丁度邪魔になるような位置を通ってぶつかりかけながら。
「何ですかあの人失礼な」
「あれは……ウォルト商会だ。最近帝国で新事業を起こして成り上がったと聞くが」
ハロルドはそう答えた。
「そんなに儲かってるの」
「いいや。少なくとも帝国に報告されている年商ではあそこまで豪勢な生活はできないだろなんせ伯爵の俺の家より豪勢なものを纏っている。よっぽど羽振りが良いように虚勢を張る性格なのか。それともあくどいことに手を染めているか。どっちも噂だが」
僕はその伯爵の失礼な態度を頭の中で思い返していた。




