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第65話 皇帝派への挨拶(後編)

「まったくこれだから武闘派は騒がしいね」


 コツコツと音を立ててタキシードの美麗な人物が歩いて来た。

 僕の前に立つと洗練された仕草で僕の顎をくいッとやる。


「どう?僕とこんなパーティー何て抜け出して。街にでも遊びに行かない?」


 辺りに緊張が広がり、黄色い悲鳴がこだます。


「キャー!書記官様のイケメンボイスよ~!」


「何よあのチビ羨ましいったらありゃしないわ」


 集まる視線に僕は顔を赤くして見上げてこう告げた。


「申し訳ありませんが僕は異性愛者なのでこの手の誘いに乗れませんよ」と。




 再び場を支配する沈黙。その後辺りは意外な反応に包まれた。


「何言ってんだあのギルドマスター」


「非常識と思われるが。いや初対面なら妥当か?」


 どういうことかと思っているとハロルドが説明する。


「レンよ。アイツは女だぞ?」




「アハハゴメンゴメン。初対面の子をからかいたかっただけだよ」


 彼ではなく彼女は王子と見間違うほどの爽やかさで僕の肩をポンポン叩く。後ろからそれぞれに向けた甚大な殺気を感じるが無視する。


「僕はアリス・ブッシュ帝国法務局の女書記官だよ」


「僕の幼馴染の一人さ。レン」


「それはそれはよく似ていらっしゃるもので。類は友を呼ぶんだね」


 カナタとアリス見た目だけは爽やかな二人の若手貴族が並ぶと互いの魅力が加算され凄く絵になる。ただうざさは乗算になるが。


「法務局の書記官って言うことはルーン子爵の?」


「そうあの人のいる組織だよ。それで帝都で起こった事件を捜査してるんだ」


「って事はあの魔獣襲撃も捜査してるの?」


「まぁそうなるね。でも僕としてはこのパーティーに出たかったから全て子爵に押し付けて来たよ」


「え?子爵に押し付けて大丈夫なの?」


「いいのいいの。僕の家伯爵だから子爵は頭が上がらないし」


 案外クズな人だなぁ。と僕は頭の中で働かされているルーン子爵に少し同情した。




「それで君が全部倒したんだってね」


「全部じゃないですよ。ギルドの皆で分担して倒しましたから。そこのルナ嬢もね」


 頭をポンポン撫でられて僕は恥ずかしい気持ち半分後ろの殺気を押さえてくれという気持ち半分でそう答えた。


「でも止めのドラゴンに攻撃して一番おいしい所を持っていったのは君な訳だ。どこかの誰かさんとは違ってね。ね?ハロルド」


「うっせぇ!俺が出撃しようとしたらお前らケルベロスが抜け駆けして倒してたんだろうがよ」


「それで良く帝都の警邏隊長は黙っていられましたね。あんな出来事が起こってたら武人の血が騒ぐでしょうに」


「俺もあの人も帝都で興奮する民衆の避難誘導の指揮ばっかだったよ。大体おかしいだろ帝都防衛戦が帝都全域に配信されんの!ほぼエンタメ扱いだぞあれ」


 ハロルドは疲労の色を露わにする。リンも口を開く。


「剣と魔法の戦いなんて整備された闘技場以外じゃ中々見れるものじゃないですからね」


「だからってもっと近くで観戦させろって城壁に上りかける奴まで出始めんだぞ?大体アリスはどうせ王城の近くの執政府に詰めてブルブル震えてたんだろ?お気楽なもんだ」


「僕をあんな老害と一緒にしないで欲しいね。ちゃんと仕事してたよ」


「どちらでも良いけどよ。まぁ十英傑のあの人が帝都留守にしたらバランス崩れるしお前らが先に倒しておいてくれて良かったよ。不機嫌なのをなだめるのには参るが」


 十英傑……神話にしかいないはずの人々の名前だ……


「あの十英傑って本当にいるの?神話にしかいないとばかり」


「レンお前どんな田舎から出て来たんだよ。十英傑って言うのはだな」


「田舎とは何ですのよ。レンちゃん十英傑って言うのはこの帝国を支える十人の強者のことですわ。今は誰でしたっけ?」


 ルナは首をかしげる。


「一人は獣王レオ・ドレイク辺境伯でござるよ。拙者の師匠でござる」


 壁に背中を付けていたネコマールが口を開く。


「あぁあの帝国の獣騎士部隊のレベルを二段階あげたって言う男か。おかげで帝都の警邏にも獣人が増えて来たよ。この猫野郎も一門だったか」


 ハロルドは上機嫌で反応する。そりゃ初めに会った時からネコマールが強いわけだ。帝国で十本の指に入る強者の薫陶を受けているんだから。

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