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第64話 皇帝派への挨拶(前編)

 ワイルズ公爵は扇を閉じて一同に高らかに告げた。


「皆の衆よ。今宵は新たな客人を紹介しようではないか」


 若公爵とは言え爵位に威厳はあるようで一応振り返った。そして僕を興味深そうに見つめる。


「帝都ギルドマスターを務めるレン・エルドラ男爵です。まぁ成り上がりの新参者ですがよろしくお願いします!」


 僕は前に出て頭を下げる。下げたたま周囲の顔色はうかがえないが声が少し近づけて来た。


「レンってあのドラゴン狩りか」


「馬鹿め。この前帝都東部の魔獣災害を鎮圧した名将とのうわさだぞ」


「このガキが名将?何か裏があるだろ」


「てかこの子このパーティの真の目的を理解してるのかな?」


 僕の功績を評価する者、疑う者、何かを企む者など様々な反応があった。顔を上げるとやはり多種族国家だけあって色々な種族の顔が見える。ともかく一筋縄ではいかなそうだ。




 挨拶が終わった後で貴族同士の懇談に入ったが自然といくつかのグループに分かれていた。僕はまずカナタに誘われたところに入っていった。


「と言う訳で僕の同僚。レンだよよろしく」


 カナタはそう軽快に紹介する。そこには見知った顔がいくつか存在した。


「ふぅん。お前が帝都防衛をねぇ」


 最初に口を開いたのは黒髪の軽薄そうな男だった。


「俺はハロルド・アンドレア。子爵で帝都警邏隊の副長だ。お前の噂はかねがね」


「は、はぁ……」


 警邏隊とは帝都の治安を守る警察組織のようなものであり、そこの副長ともなると相当な強者だとうかがえる。


「どんな噂か知りたいか?まぁ帝都を襲撃したドラゴンを撃退しただとか、フィン商会の仕入れを手伝いに行ったとか。大鬼族の女と路上でドンパチしたとかな」


「うっ……それは」


「はぁ全く……俺の部下にみっちり取り調べられたと聞いたぜ」


 そう苦笑するハロルドに僕は何も言えない。


「まぁそれはそこのカナタに全ての原因がある訳で……」


「はぁ?やっぱお前のせいじゃねぇかカナタァ!何街中で問題起こしてんだよ!」


「そ、それはどうだったかなぁ?」


 しらばっくれるカナタに両者で呆れつつ話を続ける。


「まぁどっちでも良いさ。とにかくお前良くドラゴンを倒してくれたなぁ?」


「え?別にドラゴンを倒したのは良いことじゃ……」


 その疑問はすぐに払しょくされた。


「おかげで俺らのメンツが立たんでしょうが!あの後上司に何て言われたと思う?『ギルドはちゃんと活躍するのに帝都の税金で賄っている警邏隊は役に立たないですねぇ』だぞ?馬鹿にされてんじゃねぇか!」


 ハロルドは今にも頭に血が上りそうだったが、それを諫めた女性がいた。




「落ち着けハロルド。それは今はどうでもいいだろう」


「リン……」


 諫めた女性はこの前会ったリンと言う近衛隊長だ。オレンジ色の髪を後ろにまとめ耳もピンとしている。


「申し訳ないレン殿。この男は昔からこんなんで。なんせ産まれた時から帝都のガキ連れてイタズラしまわる阿呆で何度しかったか」


「うるせぇお前に言われたくないわリンのババア!何でこのパーティに潜入してんだ」


「何ってエルフの結婚適齢期では私はまだまだ現役だからですが?肌もピチピチでしょう?」


 あぁリンってエルフだったのね。耳が髪で隠れてたから気づかなかった。マリアとも話が合いそう。


「改めて紹介させてもらいます。私はコートバーグ公爵家の分家リン・コートバーグ。爵位は伯爵で帝都の近衛隊長。エルフの里の出身です」


 彼女はそう言って頭を下げて来た。




 次に居たのはリザードマンの男だった。


「レン殿。俺は貴殿にそれほど感謝すればよいか……」


 彼は突然僕の両手を掴んで上下に振って来た。


「俺は帝都の男爵でリザードマン族の族長補佐でもあるアンドレ・カームだ」


 そう紹介されるあれカームって……


「もしかして帝都東のカーム湖に関係ある人?」


「そうだ。リザードマンにはいくつかの生息地があるが私はあのカーム湖周辺の集落を管理している一族だ」


 随分帝都に近い所が領地なんだなぁ。


「あの村は俺の故郷でもある。帝都勤務が忙しく中々帰れていなかったがあそこが襲撃されたと聞いたときは気が気ではなかった。それを貴殿に救ってもらい……すぐにも礼に向かいたかったがこんな遅いときになってしまった」


「い、いえ僕は困っている人たちを見過ごせなくて」


「後で俺の実家にも訪れると良い。俺の親父、現男爵も会いたがっているから」


「は、はい!」


 流石皇帝派……曲者ぞろいだ。

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