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第63話 ワイルズ公爵登場

 煌びやかなシャンデリアに汚れ一つない壁と床。中には山のように料理と酒が所狭しと並んでいる。それはこの国の財政状況を如実に表しているようだった。


 カナタに連れられ中に入れば庶民育ちの自分はついそう感じてしまった。


 しかしこのホールを埋め尽くしているのはそれだけではない。あちらもこちらもどれを見ても高級そうな服に身を包んだ若い貴族の男女が数人詰めていた。特に女性陣の服はどれも非常に綺麗で僕は目が回ってしまいそうになった。


「では男爵殿。拙者はそちらの壁に張り付いておりますので」


 ネコマールは緊張しているのかロボットのような歩みで壁に向かっていった。壁には屈強そうな人間たちが腕を組んで佇んでいた。恐らく護衛はここにいる決まりなのだろうか。




 しかし改めて見てみるとその集まりには渦があり中心地があることが分かる。扉から一番遠い位置いわゆる上座に椅子があり、そこにある若者が座っている。若者は色白で豪華な宝石を身に纏い扇で口元を覆っていた。


「おーい!ライゲート公」


 カナタは腕を上げて呼ぶ。


「カナタ。お主余を呼んでおきながら余に構わず外に出ていくとは何事か」


 扇で口元を隠しながら小言を言ってくるらしい。その姿は軽薄にも感じるがどことなく掴みどころのない不気味さも醸し出している。


「隣にいるのは何者か。まさか不審者ではあるまいな」


 それを聞いてルナが殺気立つもカナタはそれを片手で制して続ける。


「ハハハ。そうじゃないよ彼はこの宴の主役さ」


「ヒスイ村出身。帝都ギルド『ケルベロス』マスター。レン・エルドラです!」


 僕はぺこりと頭を下げた。


「ふぅむ……貴殿が魔獣狩りか?噂よりも弱そうなやつよの」


 その若者がそう告げると周囲に笑いがこみ上げる。


「確かに公爵様の言う通りだ。こいつ庶民のガキじゃねぇか」


「本当にギルドマスターできてるのかしらね。あれも嘘だったんじゃない」


 再びルナに殺気が宿ったがそれを視線だけで退ける。


「まぁそちらの令嬢も新顔であるか?」


「ヴァルグレイ領の伯爵令嬢ルナ・ヴァルグレイですわ!」


「ヴァルグレイ?吸血鬼一族の辺境伯であったか。しかし余の経験上あそこの家の者は中々帝都に顔を出さないとのことだったが」


「私は冒険者としてレンちゃんの仲間になりましたの。これからは帝都に詰めますので参上いたしますわ」


 ルナはそう膝まづいた。辺りからは困惑の声が広がる。


「え?伯爵令嬢が男爵の身内に?」


「てかレンちゃんて……確かにこの男爵可愛らしいけどこれはただのショタコン……」


 ルナが三度目の殺気を放つが今度は公爵が抑えた。


「落ち着け。余はライゲート家当主ワイルズ・ライゲート公爵。帝国の未来の宰相である」


 は?何言ってるのこの人宰相ってそんな若い人が簡単になれるものだったんだっけ?何か周囲の人も突っ込まないし。


「ハハハ。この方は帝国の若公爵様さ。まだ実務の中枢にはいないが将来帝国にその名を轟かせる存在だよ」


「うむ。カナタもたまには役に立ってくれるな」


「でも一つだけ大きな間違いがある」


「大きな間違いって何ですか?」


 僕はカナタに尋ねる。


「彼が壮年になった時宰相になるのはこの僕だからさ!」


 カナタはハハハ!と高笑いする。


 ダメだこの人も宰相にしたらダメなタイプ。


「何を言ってますのよ」


 ルナが止めて来た。あっ彼女も伯爵家の令嬢何とかしてくれ……


「このレンちゃんが宰相になるに決まってるじゃないですの!いやただの宰相ではなくド宰相ですわ!」


 ダメだこの人たち……後ろを見てみるとネコマールは笑いをこらえていた。

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