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第61話 懇親会の準備

「と言う訳で僕は来週カナタに招待された若手貴族の懇親会に行ってくるよ」


 一同に説明すると皆快く頷いてくれた。その中でマリアが尋ねてくる。


「あの……レンに質問なのだが」


「ん?何マリア」


「レンが参加するのは分かるがなぜその女まで行くんだ?」


 マリアは僕の隣で意気揚々としているルナを見て言った。


「何故って私がレンちゃんの実家の伯爵令嬢だからですわよ」


 彼女は胸を張って言う。


「え?そうだったでござるか?」


 ネコマールは新参者だったので知らないのも当然だが……これ他のメンバーも知らなかったな。情報は共有しておかないといけないな。


「でもマスターは何着てくんだ?正直俺様がみる限り礼服の類は無さそうだが」


「それが無いんだよねぇ……正直貴族用のドレスコードなんて無縁の人生だったし」


「無縁の人生ってまだ十数年でござろうよ……」


 一同は腕を組んで考える。その沈黙を打ち破ったのはルナだった。


「心配ありませんわ。私が全部持ってますもの。とりあえず間に合わせで取りに行かせてますわ」


 彼女はそう言って手を叩く。すると青白い顔をした使用人が来て。


「お嬢様こちらをお持ちいたしました」


 そう言って細い腕でタキシードとドレスを持ってきた。


「もしかしたら使う機会があるかもしれないと持って来ていてよかったですわ」


「あぁそりゃそうだが」


「何ですのアーロン」


「いや貴族のアンタが自分のドレスを用意してるのはまだ分かるんだよ。何でマスターのタキシードまであるんだ?」


 アーロンは謎を問う。


「あらそんなのいつか使うかもしれないということですわ。私と長い付き合いですし」


「あ、あぁ……」


 アーロンを始め僕以外のメンバーは渋面を浮かべる。


「あのなんでみんなそんな反応なのさ」


「レンちゃんは知らない方が良いよ」


 僕の質問にサラはそうはぐらかした。




「それよりルナっちが貴族だったんならあの時わざわざカナタを経由しなくとも直接皇帝陛下に仲介すればよかったんじゃね?」


 サラがもっともな意見を言う。しかしルナはちっちっと指を振る。


「あのですわねぇ……私は辺境伯の娘なんですわよ?帝都から遠く離れていて帝都の情報なんてそんなに入りませんわよ。そんな状況で案内できるとでも?」


「分かるぞ。私もふと放浪に出て帰ってきたらそこの領主が代替わりしていたなんて日常茶飯事だった」


「それは単純に二人が長命種のババ「何か?」」


 アーロンが口をふさがれる。長命種にとって時代って早いんだなぁ。


「私は若いですわ。大体少し前ヨネル2世に会ったこともありますので」


「それは陛下のお父上だ!33年前に亡くなられている!」


「やはりルナは田舎者だな。今の皇帝の名前を言ってみてくれ」


「はぁ?ケイン皇帝ですわよ!」


「ケイン2世はこの前亡くなっただろう?」


 マリアが変なことを言う。ケイン2世って確か大分前の人だよね。今はケイン3世だよ?


「あのマリア……多分その皇帝の名前一世前だよ?」


「へ?」


 ルドルフが付け足す。


「本国では名前の重複を避けるため皇帝一家には100年同じ名前を付けてはならないという決まりがあるから……」


「わ、私は100年前の皇帝の話をしていたのか?!」


「正確には140年前」


 マリアは座り込む。


「ふふっ。こっちの方がまだ早いですわね。というかエルフは長生き過ぎますわ!この前調べたらエルフ伯爵家の当主私が子供のころから変わってないじゃないですのよ」


「ルナ……それ以上私の傷をえぐるな」


 マリアは気落ちしたらしい。


 話は変わって一同に声をかけた。


「それで僕はルナと一緒に行くんだけど。問題が……」


「護衛か?良いだろう」


 アーロンはハルバードを持って近づく。


「いえダメですわ。アーロンには不適格です」

 ルナが冷静に止める。


「あ?何でだ。あぁ!貴族の集まりには武器は持ち込み厳禁なのか?別にいいステゴロでもやってやるよ」


 アーロンは鍛えられた肉体を見せる。あちこちが浮き上がっていて素晴らしい。


「いいえ。この集まりは品格が求められます。当主、食事風景。そして護衛すらも」


 そしてルナはタキシードを出す。


「あなたの身体をどう工夫したらその図体でタキシードを着れるのかしら?」


「うっ……」


 その圧にはアーロンも押されたようだ。


「じゃあルドルフか?」


「いいえこの服はレンちゃん様に作ってあるからルドルフやマリアも入りませんわ。ギリギリ入りそうなのは……」


 ルナは顔を上げる。その視線はある猫の剣士に向いていた。

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